会計ソフト 20人以下なら誰が触るかで決まる
従業員が20人前後まで増えた会社で会計ソフトの不満が出るとき、原因は「操作が難しい」ではないことがほとんどです。入力する人、承認する人、月次を締める人が別々になり、そのつなぎ目で紙と確認待ちが溜まる。ソフトを選び直すなら、機能表を見る前に、自社で誰が何を触るのかを書き出すところから始めたほうが早く決まります。
5人のときと20人のときで、何が変わるのか
社長ひとり、あるいは数人の会社では、通帳とカードの明細を取り込んで科目を当てれば帳簿はできあがります。触る人はひとりなので、迷ったら自分で決めればいい。20人になると事情が変わります。現場の従業員が立て替えた交通費の領収書が月末に集まり、経理担当がそれを入力し、社長が内容を見て、税理士が月次で確認する。同じ一枚の領収書に四人が関わるわけです。
仕訳の件数が増えることよりも、この関わる人数が増えることのほうが負荷になります。誰かが承認を忘れると翌月に持ち越しになり、月次が締まらない。経理担当が休むと入力が止まる。ソフトの必須条件は、ここを止めずに回せるかで決まります。
誰が入力して、誰が承認するか
まず決めるのは、経理を担当する従業員にどこまで見せるかです。全社の売上も役員報酬も見える状態でいいのか、それとも給与関係は社長しか開けないようにするのか。ここを決めないままIDを配ると、あとから「この数字を見られたくない」と気づいて設定をやり直すことになります。ソフトによって権限の細かさは違うので、無料期間のうちに担当者用のIDを実際に作って、何が見えるか自分の目で確かめてください。
もうひとつは承認の記録が残るかどうか。誰がいつ承認したかがソフト側に残っていれば、あとで内容を問われたときに口頭の記憶に頼らずに済みます。少人数の会社ほど「社長が見たことにしている」運用になりがちで、これは担当者が辞めた直後に効いてきます。
経費精算と給与を、どこまで同じ場所に置くか
20人規模でいちばん時間を食っているのは、たいてい月末の経費精算です。従業員が紙に貼って提出し、経理が電卓で足して、給与に上乗せする。この流れを変えるなら、従業員がスマホで写真を撮って申請でき、承認された分がそのまま仕訳になる形を選ぶことになります。ただし全員がスマホ申請に移れるとは限りません。現場に出ている従業員が入力に慣れるまでは、紙と併用する期間が要ります。
給与は、自社で計算しているか社労士に出しているかで条件が変わります。自社でやるなら、給与側で計算した結果が仕訳として会計に流れるか、毎月手で振替伝票を起こすのかを確認してください。人数が増えるほど、この手入力は間違いが混ざります。社労士に出しているなら、先方から返ってくるファイルの形式を聞いて、それを取り込めるかを見ます。
税理士とのやり取りはどの形になるか
顧問税理士がいる会社では、税理士がそのソフトを扱えるかが実質的な必須条件です。扱えない場合、こちらで出力したデータを先方が自分のソフトに取り込む形になり、毎月の受け渡しに手間が増えます。替える前に一度聞いておけば済む話で、決めてから伝えると気まずくなります。
聞くべきは、対応しているかどうかだけではありません。税理士側が直接ログインして見るのか、月次ごとにデータを書き出して渡すのか。前者なら閲覧用のIDが追加で要るのか、そのIDは料金にどう影響するのかまで確認します。ここが曖昧なまま契約すると、決算前に「そのプランでは税理士は入れません」と言われます。
電子帳簿保存法まわりで確認すること
取引先からPDFの請求書がメールで届くようになると、保存の場所が人ごとにばらけます。営業担当の受信箱、経理の共有フォルダ、社長のスマホ。20人規模だと、この分散が一年で手に負えなくなります。会計ソフト側に書類を保存でき、取引先名や日付から探し出せるかを見てください。
確認するのは、電子で受け取った書類をそのまま保存できるか、紙をスキャンした場合の扱いはどうなるか、保存した書類と仕訳が紐づくか。要件の細かい部分は記事末尾の公式ページで確認できますが、ソフト選びの段階では「保存する場所を一か所に寄せられるか」を見れば大きく外しません。
料金はどこで増えるのか
人数が増えたときに費用が動く理由は、主に三つの経路があります。使うID(利用者)の数で変わるもの、経費精算や給与といった機能を足すことで変わるもの、サポートの手厚さで段階が分かれるもの。同じ「会計ソフト」でもどこで課金されるかが違うので、単純に基本料だけを並べても比較になりません。
見積もるときは、今の人数ではなく一年後に何人がIDを持つかで計算してください。経費精算を全従業員に開放するなら、従業員全員分のIDが要る製品もあります。具体的な金額と課金単位は改定されるので、記事末尾の公式ページで最新のものを確認してください。
替えるなら、いつ動くか
移行の時期は期首がいちばん楽です。期の途中で替えると、前半と後半で別のソフトに帳簿が分かれ、決算のときに両方を開くことになります。決算を税理士に出している会社なら、申告が終わって落ち着いた月に切り替えるのが現実的です。
引き継げるものは限られます。科目の残高と取引先の一覧までは移せることが多く、過去の仕訳の明細や添付した書類、細かい設定は移らないと考えておいたほうが安全です。旧ソフトは解約直後に見られなくなる場合があるので、必要な期間分を先に書き出してから解約手続きに入ってください。
一次ソース(公式ページ)
制度・料金は改定されます。本記事は執筆時点の情報です。最新情報は必ず上記の公式ページでご確認ください。
よくある質問
経理担当が辞めたら操作が分からなくなる。どう備えておくか
月次で誰が何をどの順にやっているかを、画面名とメニュー名まで含めて一枚の手順書にしておくと引き継ぎが早く済みます。あわせて、管理者権限のIDを社長自身が必ず一つ持っておくこと。担当者のIDしか管理者になっていないと、退職手続きの最中にソフトへ入れない事態が起きます。
部門別や店舗別の集計は、最初から設定しておくべきか
拠点や店舗が二つ以上あるなら最初から設定したほうがいいです。あとから部門を足しても、過去の仕訳には部門が入っていないので前期比較ができません。逆に一拠点だけなら、無理に部門を切ると入力のたびに選択肢が増えて担当者の手が止まります。
20人規模でインストール型のソフトはまだ選択肢になるか
社内の一台で経理担当だけが入力し、税理士とはデータのやり取りで足りているなら成立します。ただし経費精算を従業員が自分で出す運用に変えるとき、拠点が増えるときは同時アクセスで詰まります。バックアップの担当者が社内にいるかどうかも判断材料になります。