介護事業所の電子帳簿保存法 — 会計ソフトに聞くこと
介護事業所で電子帳簿保存法の話が止まるのは、たいてい国保連の支払決定通知書です。紙で届くわけではなく、電子請求受付システムから自分でダウンロードしてくる。これをどこに置けばいいのか決まらないまま、事務担当のパソコンのデスクトップにPDFが溜まっていく。ここを片付けるために、会計ソフトに何を確認すればいいのかを順に見ていきます。
先に決めるのは「どこに置くか」ではなく「誰が探すか」
置き場所の話から入ると、必ず機能の比較になって決まりません。基準にすべきなのは、後で書類を求められたときに探す人が誰かということです。税務調査で聞かれるのは「この取引の請求書を出してください」であって、そのとき事務担当が席にいるとは限りません。管理者しかログインできない場所に置いてあると、その日は出せない。
判断の軸は三つあります。月に発生する電子データの件数、探せる人が何人必要か、そして会計ソフトのIDを事務担当が持っているかどうか。この三つで、自前のフォルダで足りるのか、会計ソフト側の機能に寄せるべきかが決まります。件数が少なく事務が一人なら、わざわざ機能を増やす必要はありません。逆に拠点が分かれていて各所で買い物をしているなら、共有フォルダ運用は半年で崩れます。
介護で電子取引にあたるのはどれか
棚卸しをすると、思っていたより数が多いことに気づきます。国保連関係だけの話ではありません。
- 電子請求受付システムからダウンロードする支払決定通知書、返戻・過誤の通知
- 利用者負担分の口座振替やクレジット決済の結果データ
- おむつ・手袋・消毒液などを通販で買ったときの領収書PDF
- 送迎車の燃料カードや高速道路のWeb明細
- 給食委託、リネン、福祉用具卸からメール添付で届く請求書
見落とされるのは下の二つです。通販は管理者が自分のアカウントで買っていることが多く、領収書は個人のメールボックスに入ったまま。燃料カードのWeb明細は、紙の請求書が郵送されなくなった時点で電子取引に切り替わっているのに、誰も気づいていない。この二つは金額が小さいので後回しにされますが、件数が多いぶん、後から遡って集める作業がいちばん重くなります。
会計ソフトに確認するのはどの三点か
問い合わせるときは、機能の有無ではなく次の三点を具体的に聞きます。ひとつ目は、電子取引データの保存が今契約しているプランに含まれるのか、上位プランや別サービスの追加が必要なのか。同じ製品名でもプランで扱いが変わることがあるので、最新の料金と対応範囲は公式ページで確認してください。
ふたつ目は、探し方です。日付・取引先・金額を組み合わせて絞り込めるのか、それともファイル名に頼る仕組みなのか。ファイル名頼みだと、命名を守れる人が事務担当だけになり、その人が辞めた時点で誰も探せなくなります。三つ目は、外に出せるかどうか。ソフトを乗り換えるとき、保存した書類を一括でダウンロードできないと、次のソフトに移るたびに古いデータだけ前のソフトに人質に取られます。契約を続ける限りは見られる、という説明だけで納得しないほうがいい。
自前のフォルダ運用で足りるのはどんな事業所か
デイサービス一か所、事務は管理者と兼任の一人、仕入先も数えるほど。この規模なら、共有フォルダとファイル名のルール、それに社内の取扱いを書いた事務処理規程で足ります。ソフトの機能を足しても、使うのは同じ一人です。
ただし詰まるところが二つあります。ひとつは、あとから中身を差し替えられない状態をどう作るかという点。もうひとつは権限で、全員が書き込めるフォルダに置くと、整理のつもりで移動されたり上書きされたりします。読み取り専用の共有と、保存する人だけが書き込めるフォルダを分けておく。この二つを詰めないなら、フォルダ運用は「置いてあるだけ」で、探せる状態にはなっていません。
会計ソフトの保存機能に寄せるなら、どこで詰まるか
いちばん多いのは、保存する人と会計ソフトを使う人が別だという問題です。国保連からダウンロードするのは請求担当、通販で買うのは管理者、仕訳を入れるのは税理士。会計ソフトに寄せると、書類を入れる人全員にIDが要ります。ID一つあたりの追加費用は製品によって扱いが違うので、ここは見積もりを取る前に確認しておく。
もうひとつは、介護特有の事情です。国保連の入金は請求月とずれるうえ、返戻や過誤調整が混ざるので、通知書一枚が仕訳一本にきれいに対応しません。証憑を仕訳に紐づける前提の機能だと、紐づけ先が決まらない書類の置き場所がなくなります。仕訳に紐づかない書類だけを置いておける場所があるか、これは必ず聞いてください。
国保連のデータは誰がいつ取りに行くか
ソフトを決めても、ここを決めないと運用は続きません。電子請求受付システムに置かれる通知書は、いつまでも残っているわけではないからです。請求担当が体調を崩して月をまたいだ、というだけで取り損ねます。取りに行く担当と、その人が休んだときの代わりを名前で決めておく。
実務では、月次の請求作業のチェックリストにダウンロードと保存を一行足すのが早いです。請求ソフトでの伝送作業と同じ日にやってしまえば、別作業として忘れることがありません。会計側でまとめてやろうとすると、月次が締まってから思い出すことになり、そのころには請求担当の記憶も薄れています。
切り替えるなら、どの順で動くか
順番を間違えると、ソフトを契約したのに誰も使わない状態になります。先に棚卸し、次に置き場所、それから担当と規程です。棚卸しは、直近の一か月に届いたメールと、通販サイトの購入履歴、燃料カードのマイページを見れば大体そろいます。
置き場所を決めたら、しばらく運用したあとで必ず検索テストをしてください。管理者が「先月の福祉用具の請求書を出して」と言って、事務担当以外の人が数分で出せるかどうか。出せなければ、ルールが頭の中にしかないということです。テストで詰まった点だけを直せば、規程は分厚くしなくていい。
一次ソース(公式ページ)
制度・料金は改定されます。本記事は執筆時点の情報です。最新情報は必ず上記の公式ページでご確認ください。
よくある質問
国保連からダウンロードした支払決定通知書は、印刷して紙で保管すれば足りますか。
電子で受け取ったものは電子のまま残すのが原則で、紙に出したから電子データを消してよいという扱いにはなりません。印刷した控えは請求担当が突き合わせに使う分には便利なので、社内資料として持つのは問題ありません。細かい保存要件は変わることがあるため、記事末尾の公式ページで最新の記載を確認してください。
訪問介護の利用者から現金で受け取った自己負担金の領収書控えは、電子で保存しなければいけませんか。
複写式の手書き領収書を切っているなら紙の書類なので、電子取引の話とは別枠です。一方、タブレットやレジアプリで発行してPDFの控えが残る運用に変えた場合は、その控えが電子データとして扱われます。発行方法を変えるときは、控えの残り方も一緒に決めておくと後から探さずに済みます。
記帳を税理士に任せていますが、保存の責任もそちらにありますか。
保存義務は事業者側にあります。税理士が預かって整理してくれる場合でも、契約の範囲に電子取引データの保管が入っているかは書面で確認しておいたほうがいいです。実務では、どのフォルダにいつまでに置くかという受け渡しのルールを決めておかないと、月次で必ず片方が止まります。