介護の一人社長、請求書ソフトはどこで線を引くか
訪問介護やケアプランの作成を社長ひとりで回していると、請求の作業は月初に固まります。国保連への給付費請求を送り終えて一息ついたところで、利用者ごとの自己負担分と実費の請求書が手つかずで残っている。ここで毎月夜が潰れているなら、請求書ソフトの検討はその残った部分をどう畳むかという話になります。介護保険の請求そのものを楽にする話ではありません。
国保連への請求と、利用者への請求書はどこで分かれるか
介護給付費の請求は、国保連への伝送で完結します。ここを担うのは介護請求ソフト(レセプト)で、請求書ソフトの仕事ではありません。この切り分けをせずに「介護 請求書ソフト」で探し始めると、介護保険請求ができるかどうかを基準に見てしまい、値段も機能もまったく違うものを比べることになります。最初に、自分が困っているのは伝送のほうか、利用者に渡す紙のほうかを決めてください。
請求書ソフトが受け持つのは、利用者本人や家族に出す自己負担分と実費、保険外の自費サービス、そして他の事業所や法人に出す請求です。この範囲が利用者数人ぶんで内訳も固定なら、正直、手書きでも回ります。崩れるのは実費項目が増えたときです。食費、おむつ代、交通費、キャンセル料が人によって違うと、毎月の集計を頭の中でやることになり、その月だけ抜ける請求が出ます。
一人でやると、月初の夜に何が消えるか
流れはだいたい決まっています。サービス提供実績を確定させ、国保連へ送り、それとは別に利用者ごとの負担分と実費を集計し、請求書を作って渡す。事業所に事務員がいれば分担できますが、ひとりなら全部同じ人がやります。訪問から戻った後の時間しか使えないので、実質は夜と休みの日に押し込まれます。
時間を食っているのは、判断ではなく転記です。実績のデータを見ながら、利用者ごとの回数と単価を請求書に打ち直す。この二度打ちがある限り、利用者が増えれば作業時間はそのまま比例して増えます。しかも打ち間違いは翌月の問い合わせになって戻ってくるので、二度手間が三度手間になります。ソフトを見るときは機能表より先に、実績の元データから請求書側へ値を持っていける経路があるかを聞いてください。取り込みが無理でも、前月の請求書を複製して差分だけ直せる作りなら、実務としてはかなり違います。
利用者への請求書に何を分けて書くか
一枚の請求書に、消費税がかからない保険サービスの自己負担分と、課税される自費サービスや物品代が混ざります。総額だけ書いて渡すと、家族から「先月と何が違うのか」と電話が来ます。説明のために元データを引っ張り出す時間は、請求書を丁寧に作る時間より長くつきます。会計側でも売上を区分できず、決算前にまとめて分け直すことになります。
だから見るのは、明細の行ごとに税の扱いを分けられるかどうか、非課税の行をきちんと持てるかどうかです。単価と回数で書けるか、摘要にサービス提供日を並べられるかも実務では効きます。契約前に確認しておきたいのは次の点です。
- 非課税・課税・不課税の行を同じ請求書に混ぜられるか
- 実費項目を自分で登録して、利用者ごとに使い分けられるか
- 毎月ほぼ同じ請求を、前月分から複製して作れるか
- 印刷して手渡す形と、メールで送る形の両方が使えるか
インボイスの登録番号は誰に向けて必要か
指定を受けた介護保険サービスの多くは消費税がかからないので、利用者に出す請求書に登録番号を載せる意味はほとんどありません。相手は消費者で、仕入税額控除に使いません。ここだけを見て「自分には関係ない」と結論を出す人が多いのですが、事業所の請求先は利用者だけではないはずです。
相手が事業者になる請求、たとえば居宅介護支援の委託、送迎や入浴の受託、他法人からの業務委託などがあると話が変わります。相手側は受け取った請求書を経理処理に使うので、様式が整っていないと問い合わせが来ますし、月末に差し替えを頼まれることもあります。ソフト側で見るのは、番号を入れた様式と、非課税だけの様式を別のひな形として持てるかどうかです。自分が登録しているかどうかも含めた制度の中身は、記事末尾の公式ページで確認してください。
電子帳簿保存法まわりで見るのはどこか
メールやPDFで請求書を送ったなら、その控えは電子のまま残す前提になります。送信した控えがソフトの中に残り、後から相手先や日付、金額で探し出せるか。ここを確認しないまま運用を始めると、指摘を受けたときに「送ったはずのメールを探す」作業から始めることになります。ひとりでやっている事業所ほど、探せる状態を作っておく価値が大きいです。
受け取る側も同じです。衛生用品の業者、車のリース、給油、ケア記録のソフト代。PDFで届いたものを印刷して綴じるだけでは終わらなくなりました。請求書ソフトで受領分もまとめるか、会計ソフト側に寄せるか、どちらかに決めてください。まずいのは、メールの添付とクラウドの明細と紙の束が三か所に散って、どこに何があるか本人しか分からない状態です。決算前に自分で探せなくなります。細かい要件は末尾の公式ページを見てください。
入金の確認をどこまで任せるか
入ってくる金の道筋が分かれるのが、この業種の面倒なところです。国保連からの入金は請求した月とずれて着きますし、利用者からは口座振替、振込、現金の手渡しが混ざります。手渡しを受けた分をその日にどこにも書かないと、月末にはもう分からなくなります。
請求書ソフトに求めるのは、発行した請求と入金の対応を持てること、そして未入金の一覧がすぐ出ることです。振替代行を使っているなら、結果のデータを取り込めるかを聞いてください。取り込めないなら手で消していくことになり、利用者数がある程度を超えると続きません。未回収が積もる事業所は、督促をしていないのではなく、誰が払っていないかを把握できていないだけ、という場合が多いです。
費用と続けやすさをどう見るか
金額の差だけで決めると、あとで合わなくなります。見るのは課金の形です。使う人が自分だけでも人数で決まるのか、郵送代行や送付が別建てなのか、請求が少ない月にも同じだけかかるのか。介護請求ソフトと会計ソフトも別に払っている前提で、全部足したときにどうなるかを紙に書き出してください。最新の料金は各社の公式ページで確認してください。
もう一つは、自分が続けられるかどうかです。訪問の合間に車の中で確認できるか、スマホで請求書のPDFを送れるか。操作を覚え直す時間は、そのままサービス提供や営業に使えた時間から削られます。だから機能が多いものより、自分の請求パターンが最短で終わるものを選ぶほうが、ひとりの事業所には合います。乗り換えを考えている場合は、過去の請求データをどこまで持ち出せるかを先に聞いておいてください。持ち出せない前提なら、切り替えは期の区切りに合わせたほうが後の手間が減ります。
一次ソース(公式ページ)
制度・料金は改定されます。本記事は執筆時点の情報です。最新情報は必ず上記の公式ページでご確認ください。
よくある質問
介護請求ソフト(レセプト)に請求書を出す機能が付いていれば、別に請求書ソフトは要らないのでは?
利用者向けの自己負担分と実費だけなら、レセプト側の帳票で足りる事業所もあります。判断は、その帳票に自費サービスの行を足せるか、会計側へ売上データを渡せるかで分かれます。契約前に、自分の事業所で実際に使う内訳を入れた出力見本を作ってもらってください。画面のサンプルではなく、自分の請求パターンで見ないと分かりません。
介護保険サービスは消費税がかからないのに、インボイスの登録番号を気にする必要がありますか。
利用者に出す請求書だけなら、番号の出番はほとんどありません。気にするのは、他の法人や自治体との受託・委託があるときです。自社が登録しているかどうか、登録している場合にどの請求書へ番号を載せるかは自分の状況で変わるので、制度の中身は記事末尾の公式ページで確認してください。
利用者宅で手書きの請求書を渡しています。このやり方を変える必要はありますか。
渡す側の運用だけなら続けられます。問題は控えのほうで、手書きの複写を車に置いたまま月をまたぐと、未入金の把握と保存が同時に崩れます。手渡しを続けるなら、事務所側で先に発行して印刷し、控えはソフトに残る形にしておくのが現実的です。