不動産会社の顧客管理、追客が切れるのはどこか
反響は取れている。広告費も出している。それなのに来店に至らない。不動産仲介でこの相談を受けたとき、原因はほぼ四つのどこかにあります。初動が遅い、担当のところで止まっている、条件の変化を拾えていない、長期客を放置している。どれも「営業力」の話に見えて、実際は台帳に何が入っているかで決まります。
切れ目は、感覚ではなく台帳で見つける
追客がうまくいっていない会社ほど、どこで切れているかを誰も言えません。反響の数と成約の数は分かっても、その間で何人がどこまで進んで消えたかが残っていないからです。まずここを埋めないと、打つ手が「もっと電話しろ」しか出てきません。
最低限、記録しておきたいのは五つです。いつ・どこから問い合わせが来たか、誰が受けたか、最後に接触したのはいつか、提案した物件は何か、断られた理由は何か。この五つが揃うと、切れ目が数字で浮かびます。逆にこれが無いと、優秀な担当の頭の中にしか状況がありません。
初動の遅さは、内容では取り返せない
問い合わせた人は、たいてい複数の会社に同時に送っています。だから最初に返ってきた会社で話が進む。丁寧だが遅い返信は、雑だが速い返信に負けます。ここは好みの問題ではなく順番の問題です。
決めるべきは三つだけです。誰が受けるか、どのくらいの時間で一次返信を出すか、その返信に何を入れるか。担当が営業に出ている時間帯に誰が代わりに受けるのかまで決めておかないと、混んでいる日ほど返信が遅れます。忙しい日に落ちるなら、それは仕組みが無いということです。
一次返信は完璧である必要がありません。受け取ったこと、いつ詳しい連絡をするか、この二つが伝われば、その人はいったんこちらを待ちます。物件の提案を作り込んでから返そうとするほど、返信は遅れます。
担当のところで止まる
反響を担当に割り振ったあと、そこから先が見えなくなる会社は多い。担当が抱えたまま動いていないのか、追っているが返事が無いのか、そもそも見ていないのか。区別がつかないと、上長は何も言えません。
ここを解くのに要るのは管理の強化ではなく、状態を一つ持つことです。反響が来た、一次返信した、来店の約束をした、来店した、提案した、申込。この段階が台帳に入っていれば、どこで滞留しているかが一目で分かります。滞留している顧客だけを見れば済むので、上長の手間もむしろ減ります。
段階は増やさないでください。細かく分けるほど入力されなくなり、入力されない項目は無いのと同じです。
条件は変わる。変わったことが分からないと外れる
賃貸でも売買でも、問い合わせ時点の条件はそのまま続きません。予算が上がる、エリアが広がる、時期が延びる、家族構成が変わる。この変化を拾えていないと、提案は最初の条件のまま外れ続けます。
「反応が無くなった」と言われる顧客の一部は、興味を失ったのではなく条件が変わっただけです。だから接触のたびに、条件を上書きできる形にしておく必要があります。備考欄に会話を書き足していく作り方だと、最新の条件がどれなのか読み取れません。条件は項目として持ち、履歴は別に残す。
長期客は、人が追わない形にする
すぐ決める人と、半年から数年かけて決める人が混ざっているのが不動産です。後者を人が同じ濃さで追い続けるのは無理で、無理をすると全員が薄くなります。
分けるための材料は、いつ問い合わせたか、条件が動いたか、最後の接触はいつか、の三つです。ここが台帳にあれば、動いている人だけを人が触り、それ以外は定期的な情報提供に回せます。分けられないから全員放置になる、というのが実際に起きていることです。
長期客に送る内容は、売り込みでなくて構いません。エリアの相場の動き、出た物件の傾向、制度の変更。動き出した人のほうから返事が来るので、それを拾えば十分です。
ポータル頼みの構造を、台帳側で薄める
反響の多くがポータルサイト経由なら、顧客との関係は媒体の中に閉じがちです。掲載を止めた月に反響がゼロになるのは、名簿が自社に無いからです。ポータルは入口として合理的ですが、入口を台帳の代わりにすると、出稿を止められなくなります。
やることは単純で、ポータル経由で来た人も自社の台帳に落とし、二回目以降は自社の窓口でやり取りする導線を作ることです。物件情報の流通そのものはレインズのような仕組みがあり、宅地建物取引業法に基づく登録の義務も定められています。制度の側と、自社の顧客名簿の話は分けて考えてください。
台帳に入れる項目を決める
この六つのうち、最終接触日と断られた理由の二つが特に効きます。前者は誰を追うかを決める材料で、後者は同じ外し方を繰り返さないための材料です。どちらも入力の手間は数秒ですが、無いと判断が全部勘になります。
顧客情報の扱いを、先に決めておく
問い合わせで取得した情報を何に使うのかは、あらかじめ本人に分かる形にしておく必要があります。メール配信をするのか、他の物件の案内に使うのか、社内の誰まで見られるのか。要件は個人情報保護委員会の案内と法令・ガイドラインで確認できます。
担当者個人の携帯とメールにやり取りが閉じている状態も、ここで整理しておくべきものです。会社として把握できず、退職後も関係が続きます。連絡は会社の窓口に寄せ、顧客情報の取り扱いを就業規則や契約で明文化してください。
なお、この記事では特定の顧客管理システムの比較はしていません。仲介向けを掲げる製品は多くありますが、公式サイトで対象業務と機能名まで確認できたものが限られたため、確認が揃った時点で別途まとめます。導入を検討するときは、自社の反響がどこから来ていて、どの段階で切れているかを先に把握してから見比べてください。切れ目が分かっていない状態で製品を見ると、機能の多さで選ぶことになります。
一次ソース(公式ページ)
制度・料金は改定されます。本記事は執筆時点の情報です。最新情報は必ず上記の公式ページでご確認ください。
よくある質問
反響が来てから何をすればいいか、社内で決まっていません
決めるべきは内容より順番と時間です。誰が受けるか、何分以内に一次返信を出すか、返信に何を入れるか。この三つを決めて紙に書くだけで、担当者ごとのばらつきが消えます。内容を作り込むより、返信が出るまでの時間を短くするほうが先に効きます。問い合わせた人は複数社に同時に送っていることが多く、最初に返ってきた会社で話が進みます。
長期の見込み客を追い続けるのは、人手的に無理があります
全員を人が追う前提だと必ず破綻します。動きのある人と無い人を分けて、動きのある人だけ人が触る形にしてください。分けるには、いつ問い合わせたか・条件が変わったか・最後に接触したのはいつか、が台帳に入っている必要があります。そこが揃っていないと、全員を同じ濃さで追うか、全員を放置するかの二択になります。
担当者が辞めるとき、顧客の引き継ぎで揉めます
やり取りが担当者個人のメールと携帯の中にしかないと、引き継ぎは口頭になり、抜けます。問い合わせの経緯・提案した物件・断られた理由が会社の台帳に残っていれば、担当が代わっても同じ話から続けられます。顧客情報の取り扱いは就業規則や契約で明文化しておいてください。台帳と契約の両方が要ります。