ホーム / 記事一覧 / 会計ソフト
実務

宿泊業の会計ソフト — 予約サイト入金と宿泊税でつまずく

公開 2026-08-17 · 会計ソフト

予約サイトからの振込は、宿泊料から手数料が引かれた額で入ってくる。宿泊税は宿の売上ではないのに一緒に受け取っている。予約は先月なのに、泊まったのは今月。宿の会計はこの三つで手が止まります。会計ソフトを選ぶときに見るのは、画面がきれいかどうかではなく、この三つを毎月同じ手順で処理できるかどうかです。

宿泊業の会計は、入金額と売上が一致しない

自分の宿でどこを確認すべきか予約サイト経由の売上があるか → はい: 入金一件を売上・手数料・預り金に分けて登録でき、その分け方を記憶できるソフトを選ぶ。宿泊税や入湯税を預かっているか → はい: 預り金の科目を自分で追加でき、税区分を変更できるかを試用中に確認する。宿泊のほかに館内飲食や売店の売上があるか → はい: 部門またはタグで売上を分けられるプランを選ぶ(下位プランでは使えない場合がある)。予約時決済で、宿泊が決算月より後になる予約があるか → はい: 前受金の残高を予約台帳側で出し、会計へ合計で入れる手順を先に決める。いずれにも当てはまらない場合: 現地決済と現金だけで、宿泊のみを売っている小さな宿なら標準的な機能で足ります。通帳の自動取込と科目追加ができるかだけ見てください。自分の宿でどこを確認すべきか予約サイト経由の売上があるかはい入金一件を売上・手数料・預り金に分けて登録でき、その分け方を記憶できるソフトを選ぶいいえ宿泊税や入湯税を預かっているかはい預り金の科目を自分で追加でき、税区分を変更できるかを試用中に確認するいいえ宿泊のほかに館内飲食や売店の売上があるかはい部門またはタグで売上を分けられるプランを選ぶ(下位プランでは使えない場合がある)いいえ予約時決済で、宿泊が決算月より後になる予約があるかはい前受金の残高を予約台帳側で出し、会計へ合計で入れる手順を先に決めるいいえ現地決済と現金だけで、宿泊のみを売っている小さな宿なら標準的な機能で足ります。通帳の自動取込と科目追加ができるかだけ見てください。

通帳に振り込まれた予約サイトからの入金を、そのまま売上として記帳している宿がよくあります。これをやると売上高が実際より小さくなります。手数料は本来、宿泊料を全額売上に立てたうえで支払手数料として費用に落とすものです。差引後の金額だけを売上にすると、消費税の課税売上の集計が変わりますし、銀行で「年商はどのくらいですか」と聞かれたときの答えも実態とずれます。決算のときに税理士から必ず指摘され、一年分をさかのぼって直す作業が発生します。

そこにもう一つ、宿泊税や入湯税を預かっている宿では、その分も入金に混ざります。宿が受け取ってはいるが、宿のお金ではない。ここを売上に混ぜてしまうと、納付したときに経費のように処理してしまい、利益が意味のない数字になります。月次で見ても、税を集めた月だけ売上が膨らんで見える。

つまり宿の会計ソフト選びは、入金一件を複数の行に分解する作業を、毎月引っかからずに回せるかで決まります。単価の高い商品を現金で売っている商売より、取引の構造が一段複雑だと思ってください。

予約サイト経由の入金を、どこで分解するか

実務の流れは決まっています。月に一度、各予約サイトの管理画面から支払明細をダウンロードし、宿泊料の総額、送客手数料、キャンセル料、サイト側が受け取った税や立替の扱いを確認する。そのうえで、入金日の仕訳を組む。ここで会計ソフトに求めるのは、銀行明細を取り込んだあとに、その一件の入金を売上・支払手数料・預り金といった複数の科目に分けて登録できるかどうかです。一行しか割り当てられない作りだと、毎月電卓を叩いて手入力する羽目になります。

もう一つ見るのは、分け方をルールとして覚えてくれるかどうか。予約サイトの入金は名義も摘要も毎月ほぼ同じです。前月と同じ分解を候補として出してくれれば、締めの作業は数分で終わります。覚えない作りだと、繁忙期の月末に同じ作業を一から繰り返すことになり、そこで手が止まって記帳が三か月遅れます。

予約サイトが複数ある場合、明細ファイルの形式はサイトごとに違います。それを会計ソフトに直接読み込ませようとすると、列の対応づけで消耗します。表計算で月次の集計表を作り、サイトごとに合計を出してから会計ソフトへ入れるほうが、結局早くて間違いも追えます。予約一件ずつを会計ソフトに入れる必要はありません。細かく入れるほど、入金額と突き合わせられなくなります。なお、月末時点で宿泊は済んだのにサイトからの入金がまだ来ていない分は売掛金として残ります。これを立てておかないと、繁忙月の売上が翌月にずれて見えます。

宿泊税・入湯税は、どの科目で持つか

預かった税は、売上とは別の科目を作って持ちます。名前は「宿泊税預り金」のように分かるものにして、消費税の区分は課税対象外として扱うのが一般的な整理です。ここで大事なのは、月末にこの科目の残高が、次に納める予定額と一致するかを見られる状態にしておくこと。ずれていれば、どこかの入金で分解を忘れています。合わないまま放置すると、納付のときにいくら払うのかを帳簿から出せなくなり、自治体からの通知と睨み合うことになります。

会計ソフト側で確認するのは、勘定科目を自分で追加できるか、補助科目を付けられるか、そして科目ごとの税区分を変更できるかの三点です。科目追加はほとんどのソフトでできますが、税区分の細かい設定や部門との組み合わせはプランによって差があります。試用期間中に、実際に預り金の科目を作って一件仕訳を入れてみるのが確実です。

予約時に受け取った代金は、いつの売上になるか

売上を立てるのは宿泊した日です。決済は予約した日。この差が決算月をまたぐと、受け取った代金は前受金として残さなければいけません。年末年始や連休の予約を早くから取っている宿では、この金額がそれなりに大きくなります。前受金を立てずに入金日で売上にすると、その期の利益が実態より多く出て、税金を余分に払う形になります。

ただ、会計ソフトは予約一件ごとの前受け残高を管理する道具ではありません。予約管理システムか予約台帳の側で「入金済み・未泊」の一覧を出し、その合計だけを会計ソフトに前受金として入れる。毎月やらなくてもいい会社もあります。決算月だけ合わせる運用で足りるかどうかは、前受けの金額と決算月の予約状況で変わります。ここは会社によって変わるので、顧問税理士に決算月の前後だけ見てもらってください。

キャンセル料は宿泊というサービスを提供していないため、宿泊料と同じ扱いにはなりません。予約サイトの明細では宿泊料と並んで載ってくるので、集計表の段階で列を分けておかないと、あとから抜き出せなくなります。

売上をどこまで分けておくと後で効くか

宿泊だけを売っている宿はほとんどありません。館内の食事、売店、日帰り入浴、自動販売機、貸切風呂の追加料金。これらを一本の売上高にまとめてしまうと、前年より売上が落ちたときに、客室単価が下がったのか飲食が使われなくなったのかが分かりません。原因が分からなければ、値段をいじるのか献立を変えるのかも決まらない。だから部門やタグで分けられる機能があるかを、選ぶ段階で見ます。この機能は下位プランだと使えないことがあるので、料金の安い順に選ぶと後で困ります。

消費税の区分でも分ける理由があります。売店で売る菓子や飲料の持ち帰り分は、宿泊料とは税率の扱いが違います。混ぜて記帳してから申告前に洗い出すのは、レシートをひっくり返す作業になります。日々の記帳の段階で分かれていれば、申告のときは集計を見るだけで済みます。

予約サイトの支払明細は、紙で届かない

宿の証憑で厄介なのは、予約サイトの支払明細やキャッシュレス決済の入金明細が、郵送されずに管理画面からダウンロードする形でしか手に入らないことです。これは電子取引のデータにあたるので、受け取ったデータのまま探せる状態で保存しておく必要があります。デスクトップのフォルダに「明細.pdf」で積み上げていくと、税務調査で「この月の分を出してください」と言われた瞬間に詰まります。日付・取引先・金額で見つけられるファイル名の付け方を決めるか、会計ソフトの証憑保存機能に仕訳と紐づけて置くか、どちらかにしてください。保存の要件は記事末尾の国税庁の公式ページで確認できます。

もう一つ、ログイン情報の管理を宿は落としがちです。予約サイトの管理画面に入れるのがフロント担当者一人だけという状態で、その人が辞めると過去の明細が取り出せません。パスワードは社長が持つか、少なくとも二人が入れる状態にしておく。過去分は退職前にまとめてダウンロードさせておくのが安全です。

プランはどこで分かれ、いつ切り替えるか

個人事業主向け 最安プランの年額freee会計 スターター 11,760円、やよいの青色申告 オンライン セルフプラン 11,800円、マネーフォワード クラウド確定申告 パーソナルミニ 10,800円個人事業主向け 最安プランの年額 (税抜)freee会計 スターター11,760円やよいの青色申告 オンライン セルフプラン11,800円マネーフォワード クラウド確定申告 パーソナルミ10,800円
出典: freee会計(個人事業主向け) / やよいの青色申告 オンライン(個人事業主向け) / マネーフォワード クラウド確定申告(個人事業主向け)(2026-07-27 時点に公式ページで確認)。制度・料金は改定されます。最新は公式ページをご確認ください。

宿泊業で見るべき差は、部門別の集計ができるか、消費税の申告書まで作れるか、証憑ファイルをどれだけ置けるか、税理士用のアカウントを追加できるかです。安いプランは部門機能と消費税の細かい区分が落ちていることが多く、入れたあとに上位プランへ移る流れになります。最新の料金と機能の線引きは変わるので、記事末尾の公式ページで確認してください。契約前に試用で、預り金の科目追加と入金一件の複数行分解だけは必ず試してください。

切り替える時期は繁忙期を外します。科目や部門の設定を変えた月は必ず記帳が乱れるので、稼働が落ちる時期の期首に合わせるのが実務的です。年末年始が繁忙なら決算月との兼ね合いも見ながら、閑散期の月初から新しいソフトで入れ始め、一か月分だけ旧ソフトと両方で記帳して残高を突き合わせる。手間ですが、ここで合わないものを見つけておかないと、決算のときに一年分を遡ります。

最後に、顧問税理士がそのソフトのデータを受け取れるかを先に聞いてください。宿の記帳は前受金と預り金の判断が絡むので、期末に必ず税理士が触ります。会計事務所が扱えない形式で一年溜めると、紙に出して渡し直すことになります。

一次ソース(公式ページ)

制度・料金は改定されます。本記事は執筆時点の情報です。最新情報は必ず上記の公式ページでご確認ください。

よくある質問

民泊やゲストハウスで数室だけの規模でも、同じ考え方でいいですか

入金が手数料差引後で届く点、宿泊日と決済日がずれる点は室数に関係なく同じなので、入金の分解と前受金の考え方はそのまま使えます。ただし自宅の一部を使っている場合は、水道光熱費や通信費の家事按分をどう決めるかのほうが金額の影響が大きくなります。按分の割合は面積や使用日数など根拠を残せる基準を先に決めて、毎年同じ基準で通してください。

宿泊税や入湯税は、消費税の課税売上に入りますか

宿泊者から預かって自治体へ納める性質のものなので、宿の売上として扱うものではありません。ただし条例の建て方や表示方法によって処理の細部が変わることがあるため、導入時に一度、自治体の担当課と顧問税理士の両方に確認してから科目を作ってください。一度決めた扱いを途中で変えると、月次の比較ができなくなります。

予約管理システムと会計ソフトを連携させるべきでしょうか

連携できると転記は楽になりますが、宿の規模では日次または月次の合計を一本の仕訳で入れるほうが照合が速いことが多いです。連携の可否より、誰がいつ締めて誰が仕訳を入れるかという手順を先に決めるほうが効きます。連携を検討するなら、対応しているソフトの組み合わせを両方の公式ページで確認してください。