美容室の会計ソフト選び、判断はレジ連携で決まる
美容室で会計ソフトを選ぶとき、機能一覧を並べて比べても決まりません。実際に効いてくるのは、レジの売上をどう帳簿に入れるか、スタッフにどういう形で払っているか、店舗がいくつあるかの三つです。この三つが同じなら、あとは画面の好みの範囲です。逆にここを決めずに契約すると、閉店後にレシートを見ながら手入力する運用がそのまま何年も続きます。
最初に決めるのは、レジの売上をどう帳簿に入れるか
美容室の帳簿で件数が一番多いのは日々の売上です。カットやカラーの施術売上、指名料、店販、そしてカードや電子マネーの決済。これを客ごとに帳簿へ入れる必要はありません。日次の合計を、現金・カード・電子マネー・店販といった区分ごとに一本ずつ入れれば税務上も経営判断上も足ります。顧客ごとの分析はPOSや予約システムの仕事で、会計ソフトに持ち込むと入力量だけが増えます。
だからソフト選びで最初に見るのは、いま使っているレジやPOSから日計データを外に出せるか、そしてそれを会計ソフトが取り込めるかです。出せないなら毎日一本の手入力、月に三十回。それ自体は数分でも、溜めると月末に一気に来ます。もうひとつ厄介なのがキャッシュレスで、売上が立った日と入金日がずれ、しかも決済手数料が引かれた金額が振り込まれます。差額を手数料として処理し、売掛を消していく作業が毎月発生するので、入金明細と売上をどう突き合わせるかは契約前に画面で確かめてください。
スタッフへの支払いの形で、必要な機能が変わる
歩合の社員、時給のアシスタント、面貸しや業務委託。美容室はこの三つが混ざりやすく、給与として払うのか外注費として払うのかで源泉徴収も消費税の扱いも変わります。ここは会計ソフトの機能では解決しません。契約の形が先で、ソフトはそれを記録する道具です。
歩合は毎月金額が変わります。指名本数や売上から計算した結果を表計算で作り、会計ソフトには給与の仕訳を月一本入れる。スタッフが数人のうちはこれで十分回ります。人数が増えて、社会保険や住民税の控除まで毎月動くようになると、給与計算を同じシリーズで動かして仕訳が自動で入る形のほうが楽です。ただし乗り換えのときに一番手間がかかるのも給与側の設定なので、切り替えるなら人が増える前に済ませたほうがいい。
現金が多い店で、どこがずれるか
キャッシュレスが進んでも、美容室は現金の比率が高い業種です。釣銭準備金を金庫から出し入れし、レジを締めて日計を出す。ここで実際の現金と帳簿の残高が合わないことが必ず起きます。数百円のズレを放置すると、期末に何万円という原因不明の差額になって、雑損失で落とすしかなくなります。日次で締めてズレを記録しておけば、どの日に何があったか追えます。
これはソフトの機能というより運用の話ですが、選び方には影響します。現金の入力をスマホからその場でできるか、レジ締めの数字をまとめて入れる画面があるか。閉店後にパソコンの前に座らないと入力できない作りだと、まず続きません。続かない運用は、二か月後に紙の束として戻ってきます。
店舗が二つ目になった日に困ること
一店舗のうちは意識しませんが、二店舗目を出した瞬間に「どっちの店が儲かっているのか」が分からなくなります。売上はレジで分かる。分からないのは経費で、材料の仕入れ、水道光熱費、スタッフの人件費が一本の帳簿に混ざるからです。後から店舗別に分け直すには過去の仕訳を全部触ることになり、これは丸一日仕事です。
会計ソフト側では部門や補助科目という形で、店舗ごとの集計を持たせられます。ただしこの機能はプランの上下で分かれていることが多く、下位プランでは使えない場合があります。最新の対応状況は記事末尾の公式ページや各社の料金ページで確かめてください。二店舗目が視野に入っているなら、一店舗のうちから部門を作っておくのが安上がりです。今は「本店」だけでいい。
材料の仕入れと、電子で届く請求書をどう残すか
ディーラーからの材料仕入、家賃、リース、広告費。美容室の経費はほぼこの数種類の繰り返しで、毎月同じ相手から同じような請求書が来ます。今はメール添付のPDFやウェブからダウンロードする形が増えていて、電子データで受け取ったものは電子のまま保存するのが原則です。印刷して紙で綴じただけでは要件を満たしません。
そこで会計ソフトに求めるのは、その請求書のファイルを仕訳に紐づけて保存し、取引先や日付で探せることです。パソコンのフォルダにバラバラに置くと、調査で「去年の四月の仕入請求書を」と言われたときに出てきません。仕訳から証憑にたどり着ける状態を作っておけば、探す作業がなくなります。保存のルール自体は記事末尾の国税庁のページが一次情報です。
料金は何で変わるか
クラウドの会計ソフトの料金は、だいたい部門機能の有無、ログインできる人数、給与や請求の機能を付けるか、サポートに電話で聞けるかで段が分かれます。一番安いプランで始めて、部門が必要になって上げる、というのはよくある流れです。金額は改定されるので、比較する時点の公式ページで確認してください。
もうひとつ、顧問税理士がいるなら契約前に必ず聞いてください。事務所が扱い慣れていないソフトを選ぶと、決算のたびにデータの受け渡しでやりとりが増えます。乗り換えるタイミングは決算期の切り替えが一番安全で、期の途中で替えると同じ年度のデータが二か所に分かれます。
結局どれを選ぶか、三つの型に当てはめる
一人でやっているサロンなら、青色申告の複式簿記に対応していて、銀行口座とカードを同期できれば十分です。レジ連携にこだわるより、確定申告の画面まで一本でつながるものを選んだほうが早い。社員が数人いて一店舗なら、判断の中心はレジのデータをどう取り込むかと、給与をどこで計算するかの二つになります。複数店舗があって面貸しも混ざっている店は、部門機能と、外注費の支払い管理ができることを先に確認してください。ここを外すと、あとで全部やり直しになります。
比較で迷ったら、機能表を眺めるのをやめて、無料で試せる期間に先月一か月分を実際に入れてみることです。レジの日計を取り込み、カード入金を消し込み、材料の請求書を一枚添付する。この三つが引っかからずに終われば、その店ではそのソフトで回ります。確認しておく点をまとめると次のとおりです。
- レジ・POSから日計データを出せるか、会計ソフトが取り込めるか
- キャッシュレスの入金と決済手数料をどう処理するか
- 店舗別・部門別の集計がそのプランで使えるか
- 請求書ファイルを仕訳に紐づけて保存・検索できるか
- 給与計算をどこでやり、仕訳をどう入れるか
一次ソース(公式ページ)
制度・料金は改定されます。本記事は執筆時点の情報です。最新情報は必ず上記の公式ページでご確認ください。
よくある質問
予約システムに入っている売上を、そのまま会計ソフトに取り込んでいいですか。
予約側の数字は未来の予約やキャンセル分を含むことがあり、帳簿に載せる確定売上とはズレます。会計に入れるのはレジを締めたあとの日計です。予約システムとPOSが同じ製品なら締め後のデータを使い、別なら必ずレジ側を正としてください。
面貸しスタッフの売上は、自店の売上に入れるべきですか。
契約の形によって変わります。席貸し料だけを受け取る契約なら売上はその席貸し料、全額をいったん店で受け取って報酬を支払う契約なら総額が売上で支払いが経費です。契約書と帳簿の処理が食い違うと税務調査で必ず突かれるので、契約書を先に整えてから科目を決めてください。
店販商品の在庫まで会計ソフトで管理する必要はありますか。
多くの店は期末に棚卸をして在庫の金額を調整するだけで足ります。本数の増減を日々追いたいならPOSやレジ側の在庫機能のほうが向いています。会計ソフトの在庫機能を使い始めると、棚卸のたびに数量を合わせる作業が増えるので、目的が決まってからにしてください。