飲食店の会計ソフト — 5人以下の店で見る条件
営業が終わってレジを締め、売上票をレジ横のクリップに挟む。月が明けたら業者の請求書と一緒に袋に入れて税理士へ渡す。この流れを変えたくて会計ソフトを探している店が多いです。5人以下の飲食店の場合、見るべき条件は「機能が多いか」ではなく、レジ・仕入・現金という三つの入り口をソフトがどう受け止めるかに絞られます。
飲食店の会計は、どこで手が止まるか
止まる場所はだいたい二つです。ひとつは営業後の売上入力。もうひとつは月末にまとまって届く仕入の請求書です。どちらも一件あたりの金額は小さいのに件数が多く、しかも毎日発生します。溜めると翌月の頭に何時間も潰れ、潰れるとまた溜まる。この循環に入ると、ソフトを入れたのに紙の袋が復活します。
会計ソフトの説明では「銀行口座とカードを連携すれば自動で仕訳ができる」と書かれています。それは事実ですが、飲食店は売上の一部が現金でレジに入り、仕入の一部が財布から出ていきます。口座を通らないお金の割合が大きい店ほど、連携で埋まらない部分が残ります。だから選ぶときは、自動化の説明を読むより先に、自分の店で口座を通らないお金がどれだけあるかを数えたほうが早いです。
レジの売上を、どの形で会計に渡すか
やり方は三通りしかありません。POSレジと会計ソフトを直接つなぐ、レジから出したCSVを取り込む、日計表を見て手で入れる。つなげられるなら手間は一番小さいですが、対応しているレジの一覧は各ソフトで違うので、契約前に自分のレジ名が載っているかを確認します。載っていない場合、CSVの項目名を並べ替える作業が毎月発生することになります。
もうひとつ決めるのは、売上を日ごとに入れるか、月でまとめて一本にするかです。まとめたほうが入力は楽ですが、現金過不足が出たときにどの日にずれたのか追えなくなります。レジの現金合わせで差が出ることがある店なら、日ごとに残すほうがいい。差がほとんど出ず、キャッシュレス比率が高い店なら、月一本でも困りません。ここは店の現金の扱い方で分かれます。
仕入の入力をどこまで減らせるか
酒屋や食材業者との掛け取引は、月に一枚の請求書で届きます。この一枚を「仕入」として一行で入れるだけなら負担はほとんどありません。問題は、原価を品目別に見たいと言い出したときです。明細を分けて入れる作業は毎月確実に発生するので、原価管理はレジやPOS側の数字でやり、会計ソフトには合計だけを入れる、という切り分けをしておくと続きます。
厄介なのは現金仕入れです。市場や近所のスーパーで払ったレシートは、その日のうちに何かの形にしないとエプロンのポケットで消えます。スマホで撮ってそのまま経費として取り込める機能があるかどうかは、飲食店では実務上いちばん効く条件です。撮影して取り込んでも金額の読み取りは確認が必要ですが、レシートを探す時間はなくなります。
- レシートのスマホ撮影・画像からの取り込みに対応しているか
- 使っているレジの売上データを連携またはCSVで受け取れるか
- 店内飲食と持ち帰りで税区分を分けて登録できるか
- 電子で受け取った請求書をソフト内に保存できるか
店内飲食と持ち帰りが混ざる店の注意点
テイクアウトや出前をやっている店は、消費税の扱いが店内飲食と分かれます。ここで先に見るべきはレジです。レジ側で店内と持ち帰りを分けて記録していないと、会計ソフトに何を入れても後から分けられません。売上票に区分が出ているかどうかを、今日のレジ締めのときに確認してください。分かれていなければ、ソフトを選ぶ前にレジの設定を直すほうが順序として正しいです。
インボイスの登録をしている店は、受け取る請求書側の管理も出てきます。業者が登録事業者かどうかで仕入の扱いが変わるため、取引先ごとに登録番号を持てるソフトのほうが後が楽です。免税のままでいる店は、この部分の入力はほぼ不要になります。自分がどちらなのかで必要な機能が変わるので、営業の説明をそのまま受け取らないでください。
電子帳簿保存法で店に残る作業
業者のWeb明細、配達アプリの精算書、カードの利用明細。これらはデータで受け取っているので、印刷して紙のファイルに綴じるだけでは保存したことになりません。会計ソフトにファイルを保存できる機能があれば、そこに入れておくのが一番手数が少ない。要件の細かい部分は変更されることがあるので、記事末尾の公式ページで現行の内容を確認してください。
そして、この保存作業を誰がやるかを決めないと止まります。店長がやるのか、オーナーが週に一度まとめるのか。飲食店は営業中に事務作業ができないので、開店前か閉店後のどこかに時間を差し込む必要があります。決めずに始めると、二か月目に誰も触っていないフォルダができます。
料金で見落としやすいところ
月額の表示だけで比べると外します。飲食店で影響が出やすいのは、レシートや証憑の取り込み件数に上限があるかどうか、スタッフに見せるためのアカウントを追加できるか、給与計算やレジ連携が別契約になっていないかです。アルバイトを何人か抱えている店だと、給与の部分を別で契約することになって総額が変わります。最新の料金と含まれる範囲は各社の公式ページで確認してください。
もうひとつ、顧問税理士がいる場合は、その事務所が普段使っているソフトを先に聞きます。同じものにすればデータの受け渡しがなくなり、決算前のやり取りが短くなる。違うものを選ぶこともできますが、その場合はデータの出し方を事務所と決めてから契約したほうが安全です。
切り替えをいつ始めるか
年度の頭から始めるのが理想ですが、それを待つと一年近く紙のままになります。実際には、繁忙期を外した月の初日から新しいソフトに入れ始め、それより前の期間は今のやり方のままにしておくのが現実的です。月の途中で切り替えると、その月だけ二か所に記録が散って、後から見たときに何が正しいか分からなくなります。
始める前に、試用期間のうちに一か月分だけ実際に入れてみてください。レジのデータが素直に入るか、レシート撮影の読み取りがどのくらい手直しを要するか、それは触らないと分かりません。ここで詰まる店は、機能ではなく作業の置き場所が決まっていないことが原因です。
一次ソース(公式ページ)
制度・料金は改定されます。本記事は執筆時点の情報です。最新情報は必ず上記の公式ページでご確認ください。
よくある質問
POSではない古いレジのままでも会計ソフトは使えますか
使えます。日計表を見て一日分または一か月分を手で入れる形になります。ただしレジの買い替えを検討しているなら、会計ソフトを決める前にレジを決めたほうが手戻りがありません。レジ側の出力形式が変わると、売上の取り込み方をもう一度組み直すことになります。
まかないや店主が食べた分は、どう記録しておけばいいですか
仕入として計上した食材を店の人間が食べた場合、そのままでは原価が実態より膨らみます。まかないを福利厚生として扱うか給与に含めるかで処理が変わり、ここは顧問税理士の方針や食事の負担割合の取り決めによって分かれます。少なくとも「まかない用に何をどれだけ使ったか」を月ごとにメモしておくと、後から説明できます。
配達アプリの売上は自分の店の売上として入れるのですか
アプリ経由の注文も店の売上です。入金は手数料が引かれた後の金額で届くので、売上と手数料を分けて記録しないと、原価率も利益も実態からずれます。プラットフォーム側の精算書をダウンロードして、売上・手数料・入金額の三つが突き合う形で保存しておいてください。