社長ひとりの採用面接で、外さないために見るところ
数人の会社で社長が一人で採用を決めるのは、おかしなことではありません。事業のことを一番知っているのは社長だからです。問題は一人で決めていること自体ではなく、外したときに気づく仕組みが無いことにあります。
一人で決めることの弱点は、偏りではなく検証の欠如
一人で決めると偏る、とよく言われます。実際には偏り自体はどの会社にもあり、それがその会社らしさになっている面もあります。本当の弱点は別のところにあって、採った後に「なぜこの人を採ったのか」を確認できないことです。
基準が頭の中にしかないと、外れたときに何を直せばよいのか分かりません。人当たりがよかったから採った、勢いがあったから採った。これらは印象で、次に活かせません。三か月後に振り返って「あのとき何を見て決めたか」が言えるなら、一人で決め続けても精度は上がっていきます。
会う前に、外せない条件を三つだけ書く
面接の前に、この仕事で外せない条件を三つ書いてください。紙一枚で構いません。三つに絞るのは、多く書くと結局全部を見ないからです。技能でも、勤務できる時間帯でも、通勤の距離でも、何でも構いません。実際にこれが欠けたら困る、というものを選びます。
会ってから決めようとすると、その場の印象に引きずられます。感じのよい人に会うと条件のほうを緩めてしまい、後で困る。三つを先に書いておけば、緩めたときに「いま緩めた」と自分で分かります。緩めてはいけないという話ではなく、緩めたことを自覚できるかどうかが違いを生みます。
全員に同じ質問をする
面接で相手によって聞くことが変わると、比較ができません。話が弾んだ人には深く聞き、そうでない人には浅く終わる。この差が判断の差になっているなら、見ているのは相手ではなく会話の相性です。
三つか四つでよいので、全員に必ず聞く質問を決めてください。前の職場で一番大変だったことは何か、それにどう対処したか。この種の質問は、答えの内容より、具体的に話せるかどうかで差が出ます。なお、本籍地や家族の状況など、仕事と関係のないことは聞かないでください。職業安定法の考え方は記事末尾のリンクから確認できます。
判断の理由を、一行だけ残す
採った人についても、見送った人についても、決めた理由を一行書いてください。手帳でもメモでも構いません。「経験は薄いが、段取りの話が具体的だった」「感じはよいが、必要な時間帯に入れない」。この程度で十分です。
この一行が効くのは半年後です。うまくいった人と、続かなかった人を並べて、そのときの一行を読み返す。自分が何を見て当たり、何を見て外したかが、そこで初めて見えます。記録が無いと、印象だけが残って基準は育ちません。一人で決め続けるつもりなら、この作業が唯一の学習の手段になります。
現場の従業員に会わせる意味
従業員がいるなら、決める前に一度会わせてください。判断を委ねるためではありません。社長が見ている観点と、現場が見ている観点が違うからです。社長は事業に合うかを見ますが、現場は一緒に働けるかを見ます。
後者は、実際に隣で作業する人にしか分かりません。ここで違和感が出た人は、入社後に定着しないことが多くあります。逆に、従業員が乗り気なら、入った後のフォローも自然に手厚くなります。会わせる時間は十五分でも構いません。長さより、会わせたという事実のほうが効きます。
条件は、面接で伝えるのではなく先に出す
一人で決めていると、条件の説明が面接の場での口頭になりがちです。給与も勤務時間も休みも、その場で話して納得してもらったつもりになる。ここが後から揉める最大の原因です。相手は覚えていませんし、こちらも何をどう言ったか正確には覚えていません。
求人の段階で書ける条件は全部書いてください。書けば応募が減る、と考えて曖昧にすると、減るのは応募ではなく定着です。条件が合わない人が応募して、入ってから合わないと気づく。その分の時間は、双方にとって丸ごと損になります。
そして採用を決めたら、条件は書面で渡してください。これは親切ではなく雇う側の義務にあたる部分があります。何をどこまで明示する必要があるかは、記事末尾の公式ページで確認できます。一人で全部を決めている会社ほど、この書面が唯一の記録になります。
迷ったときに、採らない判断ができるか
人手が足りない状況で面接をしていると、迷った相手を採ってしまいます。今は誰でもいいから欲しい、という状態です。この判断はほぼ外れます。合わない人が入ると、教える時間が取られ、既にいる従業員の負担が増え、辞めた後に採り直すことになります。
迷ったら見送る、と先に決めておいてください。そのうえで、見送ったときに困らないよう、応募が来続ける状態を作るほうに時間を使う。求人の出し方を直す、条件を見直す、既存の従業員から紹介してもらう。採用の失敗の多くは、面接ではなくその手前で決まっています。
他人を入れるべき場面が来る
一人で決める形が破綻するのは、社長が現場を見なくなったときです。実際の作業を知らないまま人を選ぶと、必要な能力が分からなくなります。このときは、その現場を見ている人に判断を渡してください。
渡すときは、何を基準に選んでほしいかを言葉にする必要があります。頭の中にあった基準を人に伝える作業は面倒ですが、ここを通らないと権限は渡せません。これまで理由を一行ずつ残してきたなら、その積み重ねがそのまま伝える材料になります。労働条件の明示や就業規則など、人が増えたときに必要になる整備は、記事末尾の公式ページで確認してください。
一次ソース(公式ページ)
制度・料金は改定されます。本記事は執筆時点の情報です。最新情報は必ず上記の公式ページでご確認ください。
よくある質問
従業員に面接を手伝わせると、採用の基準がぶれませんか
見る観点を先に分けておけば、ぶれるのではなく増えます。社長は事業への合い方を見て、現場の従業員は一緒に働けるかを見る。同じ観点で二人が見ると、たしかに意味がありません。
家族に意見を聞くのはどうですか
利害が近いぶん率直に言ってくれる利点はありますが、その人が現場を知らないなら判断の材料にはなりません。聞くなら、応募者と実際に接する立場の人を優先してください。
採用を外部に任せることはできますか
紹介や代行のサービスはあります。ただし最終の判断まで委ねることはできませんし、委ねるべきでもありません。母集団を集める部分と、選ぶ部分は分けて考えてください。