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最低賃金が上がる前に、時給と月給のどこを直すか

公開 2026-08-10 · 採用・求人

最低賃金は毎年改定されます。発効日を一日でも過ぎれば、下回った時間分はその時点で未払い賃金です。そして引っかかるのは時給のパートだけではありません。月給の社員、固定残業代を乗せている社員、歩合が中心のスタッフ——順に割り戻していくと、直す場所は給与ソフトの単価欄より前、雇用契約書と就業規則にあることが分かります。

発効日から逆算して、いつ何をするか

改定に向けた段取り1. 自社の県の改定額と発効日を確認(拠点が複数県にあれば県ごとに見る)。2. 全員の時間額を割り戻して一覧化(月給者・歩合者・固定残業代のある人を必ず含める)。3. 下回る人と、その上の層の段差を同時に決める(新人と先輩の逆転を先に潰す)。4. 残業実績の多い部署で人件費を試算(割増の基礎単価も上がる)。5. 契約書・賃金規程を書き換え、本人に説明(書面で渡し、規程は周知する)。6. 締め日との関係を決めて給与ソフトの単価を変更(月の途中で切り替えるかどうかを事前に決める)改定に向けた段取り1自社の県の改定額と発効日を確認拠点が複数県にあれば県ごとに見る2全員の時間額を割り戻して一覧化月給者・歩合者・固定残業代のある人を必ず含める3下回る人と、その上の層の段差を同時に決める新人と先輩の逆転を先に潰す4残業実績の多い部署で人件費を試算割増の基礎単価も上がる5契約書・賃金規程を書き換え、本人に説明書面で渡し、規程は周知する6締め日との関係を決めて給与ソフトの単価を変更月の途中で切り替えるかどうかを事前に決める

改定額は都道府県ごとに公表され、発効日が決まります。公表から発効までの間はそれほど長くありません。ここで最初に確認するのは、発効日が自社の給与計算の締め日のどこに来るかです。締め日の途中に来ると、同じ月の中で旧単価と新単価が混在します。日割りで二本立てにするか、締め日に合わせて発効日より前から新単価に切り替えるか、先に決めておかないと、給与計算の当日に電卓を叩きながら判断する羽目になります。

切り替え方を決めたら、単価の変更、契約書の差し替え、本人への説明が続きます。パートやアルバイトが多い店だと、この説明に一番時間がかかります。時給が上がる話なので反発は出ませんが、「先輩と同じ額になった」という話が休憩室で出るまでが早い。だから単価表は個別に説明するのではなく、上げ幅の考え方をそろえてから配ったほうが後の面倒が少ないです。

誰が下回るのか、時給の人だけ見ていると漏れる

時給で払っている人は単価をそのまま比べれば済みます。問題は月給者です。月給を時間額に直すには、除外される手当を差し引いた月給額を、一か月平均所定労働時間で割ります。所定労働時間が長い会社——土曜が出勤日だったり、一日の所定が長めだったり——は、割り戻すと想像より低い数字が出ます。額面で見て余裕があると思っていた月給者が、割り戻したら下回っていた、というのは実際に起きます。

適用される額は、労働者が働いている事業所の所在地の地域別最低賃金です。複数の県に店や現場があれば、県ごとに別の額を見ます。本社の所在地で全社一律に判断すると、額が高い県の事業所で割れます。派遣で人を受け入れている場合は派遣先の地域の額が基準になり、業種によっては地域別より高い特定最低賃金が定められていることもあります。自社の業種に特定最低賃金があるかどうかは、一度調べれば毎年使える情報なので、最初に確かめておくと以降が楽です。

どの手当が計算に入り、どれが入らないか

割れやすい賃金設計かどうかの見分け月給の中に固定残業代を含めているか → はい: 時間外に対する部分を外して時間額を出し直す。通勤手当や家族手当を含めた額で足りていると判断しているか → はい: それらを除いて計算し直す。所定労働時間が長め(休日が少ない・一日の所定が長い)か → はい: 割り戻すと想像より低い時間額になる。歩合や出来高が賃金の中心になっている人がいるか → はい: 賃金総額を総労働時間で割って比べ、保障給の定めも確認する。試用期間中や研修中に低い時給を設定しているか → はい: 労働局長の許可がなければ通常の額が必要。いずれにも当てはまらない場合: どれにも当てはまらないなら、時給者の単価一覧を改定後の額と突き合わせるだけで対象者が出ます割れやすい賃金設計かどうかの見分け月給の中に固定残業代を含めているかはい時間外に対する部分を外して時間額を出し直すいいえ通勤手当や家族手当を含めた額で足りていると判断しているかはいそれらを除いて計算し直すいいえ所定労働時間が長め(休日が少ない・一日の所定が長い)かはい割り戻すと想像より低い時間額になるいいえ歩合や出来高が賃金の中心になっている人がいるかはい賃金総額を総労働時間で割って比べ、保障給の定めも確認するいいえ試用期間中や研修中に低い時給を設定しているかはい労働局長の許可がなければ通常の額が必いいえどれにも当てはまらないなら、時給者の単価一覧を改定後の額と突き合わせるだけで対象者が出ます

最低賃金と比べるときの賃金には、入れてよいものと入れられないものがあります。入れられないのは次のものです。

実務で一番ひっかかるのは固定残業代です。基本給を抑えて固定残業代を厚く乗せた設計にしていると、額面は十分あるのに、時間外に対する部分を外した瞬間に時間額が下がります。求人票の見せ方を優先して組んだ賃金設計が、改定のたびに真っ先に割れるのはこの型です。通勤手当や家族手当を含めて「足りている」と判断していた場合も同じで、外して計算し直すと結論が変わります。

一人上げると、その上の人が止まらなくなる

下回る人だけを最低額まで持ち上げると、入ったばかりの人と何年も続けている人の時給差が消えます。差が消えたことに先輩が気づくのは、たいてい明細を見た月ではなく、新人が自分の時給を口にした日です。そこで辞められると、募集と教育のコストのほうが上げ幅より高くつきます。だから見直しは、割れている人の是正と、その上の層の付け直しを同時にやるものだと考えたほうがいい。何年目でいくら、リーダーはいくら、という段差を先に決めておけば、翌年以降は改定額に合わせて段差ごと平行移動させるだけで済みます。

もうひとつ連動するのが割増賃金の基礎単価です。時給や月給が上がれば、残業代、休日労働の割増、深夜の割増、有給休暇を取った日に払う賃金、休業手当まで全部上がります。人件費の増加を上げ幅だけで見積もると、残業の多い部署で予算が足りなくなります。残業時間の実績が多い部署から順に、上げ幅を残業時間分も掛けて試算してください。

契約書と就業規則は、どこまで書き換えるか

賃金は労働条件の明示事項です。時給を変えたら、変更後の内容を書面で渡すのが実務上の安全策です。口頭で「上げたから」と伝えただけだと、後で単価の認識が食い違ったときに何も残っていません。パートの契約を期間ごとに更新している会社なら、更新のタイミングと発効日をそろえておくと差し替えが一回で済みます。

就業規則や賃金規程に具体的な額や計算方法を書いているなら、そこも変更が必要です。一定人数以上を常時雇う会社には作成と届出の義務があり、変更したときも同じ手続きになります。加えて、変更した規程を従業員が見られる状態にしておくこと。周知していない規程は、後で内容を争われたときに効力を認められない可能性があります。そしてパートや有期の人と正社員で待遇に差があるなら、その差の理由を説明できる状態にしておく必要があります。時給だけ上げて手当は正社員のみという運用を続けると、説明を求められたときに答えに詰まります。

増える人件費を、どこで吸収するか

吸収先は値上げ、時間の組み替え、投資のどれかです。値上げをするなら、単価表や料金表の改定時期を最低賃金の発効に合わせるのが説明しやすい。取引先への案内も、改定を理由にすれば個別交渉より通りやすくなります。逆に、改定から数か月遅れて値上げを言い出すと、なぜ今なのかを一から説明することになります。

時間の組み替えでは、扶養の範囲内で働きたいと言っているスタッフの動きに注意してください。時給が上がると、同じ収入で働ける時間が短くなります。何も言わずにいると、年の後半になってから「もうシフトに入れない」と申告が集中し、月末や土日が埋まらなくなります。時給を上げると決めた時点で、本人に働ける時間の見込みを聞き、足りない枠を先に募集に回したほうがいい。設備投資と賃上げを組み合わせる公的な助成制度もありますが、対象になる経費や手続きの順序は変わるので、着手する前に記事末尾の公式ページと所轄の窓口で最新の内容を確認してください。

来年も同じことが来る前提で、作業を残しておく

改定は毎年あります。今年の見直しを個別対応で乗り切ると、来年また全員分を割り戻す作業から始めることになります。最低限、全従業員の時間額——月給者は割り戻した後の数字——を一覧にして残してください。この一覧があれば、翌年は新しい額と突き合わせるだけで対象者が出ます。所定労働時間を変えた人や、手当を新設した人だけ再計算すれば済みます。

もう一つ、昇給の時期を改定に合わせるかどうかを決めておくこと。決算期に昇給していると、改定で下から押し上げられた層と、昇給で上がる層が年に二回別々に動き、段差の管理が崩れます。時期をそろえてしまえば、年に一度、賃金表を一枚見直すだけの作業になります。ここは会社の決算や繁忙期の都合で変わるので、自社の都合の良い時期に寄せてください。

一次ソース(公式ページ)

制度・料金は改定されます。本記事は執筆時点の情報です。最新情報は必ず上記の公式ページでご確認ください。

よくある質問

発効日が給与の締め日の途中に来る場合、その月は全部を新しい単価で払っても構いませんか

多く払う分は問題になりません。発効日で単価を切り替えて日割りで二本立てにすると計算も明細も複雑になるので、締め日単位で先に切り替える会社は多いです。逆に、締め日の都合で発効日以降に旧単価のまま払った時間があると、その分は未払いとして遡って精算が必要になります。

試用期間中だけ低い時給にしていますが、これは最低賃金を下回ってもよいのですか

下回ってよいのは、都道府県労働局長の許可を受けた場合だけです。許可なく低く設定していれば、試用期間中であっても違反になります。許可の対象や手続きは決まった様式があるので、記事末尾の公式ページと所轄の労働局で確認してください。

歩合給が中心のスタッフは、最低賃金と比べるときどう計算しますか

その賃金計算期間に支払う賃金の総額から除外される手当を差し引き、実際に働いた総労働時間で割って時間額を出し、地域別最低賃金と比べます。出来高払制には別に保障給を定める義務もあるため、歩合が伸びなかった月に何を払うかを契約書に書いておかないと、繁閑の差が出た月にもめます。