介護の求人票、パートと正社員で何が変わるか
介護の現場で人を採るとき、パート・アルバイトと正社員で作業そのものが丸ごと変わるわけではない。求人を出し、面接し、条件を書面で渡し、保険の届出をする。順番は同じだ。変わるのは書面に書く中身と、保険をどこまで掛けるか、そして更新や昇給の扱いをどう書くか。ここを曖昧にしたまま採ると、揉めるのは入職の日ではなく、三か月後や一年後のシフト変更・雇止めの場面になる。
手続きが分かれるのは三か所だけ
募集から面接までの流れは、区分が違っても共通だ。分かれるのは、労働条件として明示する中身、社会保険と雇用保険をどう扱うか、そして就業規則のどの規定が適用されるか。この三か所を先に押さえておけば、残りは同じ書式で回せる。
具体的に効いてくるのは夜勤だ。正社員は月に何度か夜勤に入る前提で採用するのに、パートは日勤帯だけという運用をしている事業所は多い。それなのに同じ求人票で募集して、面接で口頭だけ「夜勤もお願いするかも」と伝えると、最初のシフトを組む段階で必ず止まる。夜勤に入れる人と入れない人が最初から書面で分かれていないと、シフト表は毎月作り直しになる。
求人を出す前に決めておく条件
募集の段階で明示しなければならない事項は職業安定法で決まっている。業務内容、契約期間、就業場所、労働時間、賃金、加入する保険、そして業務内容や就業場所が変わりうる範囲。ハローワークに求人を出すときは入力欄になっているので抜けにくいが、自社サイトや施設の貼り紙、知人紹介で採るときにごっそり抜ける。紹介で入った人ほど条件の記録が残っておらず、あとで確認しようがない。
介護固有で先に決めておくのは、資格を必須にするか、送迎や入浴介助を任せるか、早番遅番のローテーションに入れるか、訪問なら移動時間をどう扱うか。移動時間を労働時間に含めるかどうかを書かないまま採ると、訪問件数が増えた月に賃金の計算が合わなくなる。賃金額は地域別の最低賃金を下回っていないか、求人を出す前に一度確認する。改定の時期をまたぐと、去年の求人票をそのまま出し直して下回ってしまうことがある。最新の水準は記事末尾の公式ページで確認してほしい。
パートの契約で書き漏らすと後で揉める項目
期間を定めて採るなら、期間そのものだけでなく、更新するかどうか、更新の判断基準、通算でどこまで更新しうるかを書く。「更新する場合がある」の一行だけで済ませている契約書が多いが、これだと更新しないと決めたときに、本人にも家族にも説明ができない。判断基準として、勤務成績、事業所の利用者数の状況、担当業務の継続の有無あたりを具体的に書いておく。
もうひとつは昇給、賞与、退職金の有無だ。無いなら「無し」と書く。書かないと「いずれ出るものだと思っていた」と言われる。あわせて、正社員には出していてパートには出していない手当がある場合、その理由を説明できる状態にしておく。夜勤手当のように担う業務そのものが違うなら説明はつくが、通勤手当や食事に関する手当まで区分だけで切っていると理由が立たない。処遇改善に関する加算の配分ルールも、区分ごとにどう配るかを先に決めて、面接で聞かれたら答えられるようにしておく。
採用が決まった日から初出勤までにやること
まず労働条件通知書を出す。口頭の内定だけで初出勤させて、契約書は落ち着いてから、という進め方をすると、初日に転倒事故があったときに雇用開始日すら証明できない。書面は入職日より前に渡すのが原則で、渡した日を控えておく。
本人から受け取るものは区分によって大きく変わらない。
- 資格証の写し(初任者研修修了証、実務者研修修了証、介護福祉士登録証など)
- マイナンバーと本人確認書類
- 扶養控除等申告書
- 給与振込先の口座情報
- 前職がある場合は雇用保険被保険者番号が分かるもの
- 雇入時の健康診断の結果
資格証は写しを取るだけでなく、原本を目で見て確認する。人員配置の要件や加算の届出で資格者の頭数を数えるため、実地指導で聞かれたときに写しが揃っていないと、その職員を資格者として数えた根拠が出てこない。
保険と帳簿はどこで扱いが分かれるか
正社員はほぼ迷わない。雇用保険も社会保険も加入させ、入職した月のうちに届け出る。分かれるのはパートで、所定労働時間や勤務日数、事業所の規模によって加入するかしないかが変わる。境目にいる人は「扶養の範囲で働きたい」と言ってくることが多く、シフトを増やした月だけ超えるといった動き方をする。ここは事業所の状況で結論が変わるので、迷ったら年金事務所とハローワークに勤務時間の実態を伝えて確認したほうが早い。
一方で、労働者名簿、賃金台帳、出勤簿の三つは区分に関係なく全員分いる。週に一日だけ入る登録ヘルパーも例外ではない。夜勤の実働時間や休憩の取得も記録に残す。監査や実地指導で最初に出せと言われるのがこの三つで、非常勤の分だけ抜けている事業所が多い。
就業規則をパートにどう適用するか
常時使用する労働者が一定人数を超えると、就業規則の作成と届出が義務になる。この人数にはパート・アルバイトも入る。介護は非常勤が多いので、正社員の顔ぶれだけ見ていると義務が生じていることに気づかない。登録ヘルパーを含めて数えてみると超えていた、というのはよくある。
作るときに気をつけるのは適用範囲の書き方だ。正社員向けの規則を一本作って「パートには適用しない」とだけ書くと、その人たちに適用されるルールが存在しない状態になる。無断欠勤の扱いも、有給の取り方も、根拠がなくなる。パート用の規定を別に作るか、本則の中で条文ごとに適用範囲を書き分けるかのどちらかにする。ひな形は記事末尾の公式ページにあるものを土台にして、夜勤やシフトの部分だけ自事業所の実態に直すのが早い。
入職直後に崩れないための段取り
試用期間を置くなら、期間と、その間の賃金が本採用後と違うかどうかを契約書に書く。書かずに「最初の数か月は時給が低い」と口頭で伝えるやり方は、初回の給与明細を見た日に確実に問い合わせが来る。
シフトをいつ確定して本人に渡すかも、採用前に決めておく。介護は利用者の入退所や急な欠員でシフトが動くが、パートで入る人は別の予定と組み合わせて生活を回している。前月のうちに確定して渡す運用にしていないと、区分を問わず定着しない。資格取得の費用を事業所が出す場合は、負担する範囲と、途中で辞めたときの扱いを書面にする。ただし、辞めたら違約金を払わせるといった定め方は労働基準法で禁じられているので、費用の貸付とその免除という組み立てにするか、そもそも回収しない前提で出すかを先に決めておく。
一次ソース(公式ページ)
制度・料金は改定されます。本記事は執筆時点の情報です。最新情報は必ず上記の公式ページでご確認ください。
よくある質問
無資格・未経験でも応募できる求人にしたい場合、書き方で気をつけることは何ですか。
「無資格可」と書くだけでは、応募者は身体介護までやらされるのかどうか判断できません。担当してもらう業務の範囲と、入職後に受けてもらう研修の有無をあわせて書いてください。研修費用を事業所が負担する場合は、負担する範囲と、いつ受講してもらうかを面接の段階で口頭でも伝えておくと、入職後の「聞いていない」が減ります。
夜勤専従をパートで雇うとき、正社員と同じ契約書で足りますか。
足りません。夜勤専従は一回の勤務が暦日をまたぐため、始業終業時刻、休憩と仮眠の扱い、月に何回入るかの目安を個別に書く必要があります。仮眠時間を労働時間に含めないなら、その時間に呼び出しがあった場合の扱いまで決めておかないと、後から未払い賃金の話になります。
パートで働いていた職員を正社員に切り替えるとき、採用手続きをやり直す必要はありますか。
入社手続きを一からやり直す必要はありませんが、労働条件が変わるので新しい労働条件通知書か契約書を出してください。所定労働時間が増えることで保険の加入区分が変わることがあり、その届出は切り替えた月のうちに済ませる必要があります。あわせて労働者名簿の記載も直しておくと、後の確認が楽になります。