KING OF TIMEからタッチオンタイム、移行できるデータ
乗り換えの相談で最初に聞かれるのは、たいてい「前のデータはそのまま入るのか」です。答えを先に言うと、そのまま載るのは従業員名簿くらいで、残りは新しい方で組み直すことになります。移行作業の大半はデータの移し替えではなく、設定の再現です。そこを取り違えると、切り替えた月の給与計算で数字が合わなくなります。
「そのまま入るもの」はどこまでか
引き継ぎやすいのは、氏名、社員番号、所属、雇用区分といった名簿の情報です。この手のシステムはどれもCSVでの一括登録を用意しているので、列の並びと文字コードを新しい方の様式に合わせれば、まとめて登録できます。人数が数十人なら、ここは半日もかかりません。
ただし雇用区分は名前だけが移ります。KING OF TIMEで作った「パートA」という区分に紐づいていた丸め方、休憩の自動控除、所定労働時間の扱いは、名簿と一緒には移りません。箱の名前だけが移って、中身は空で届くと思ってください。締め日、残業の集計ルール、シフトパターン、申請と承認の流れ、管理者ごとの権限範囲も同じです。設計の考え方が各社で違うので、設定項目が一対一で対応しません。だから、いまの設定を画面のまま印刷するか一覧に書き出しておかないと、新しい方で同じ計算結果になったかどうかを確かめようがなくなります。
過去の打刻データは新しい方に入れるべきか
出勤簿や賃金台帳は法律で保存が求められています。保存すべき期間は法令で決まっているので、年数は顧問の社労士か記事末尾の公式情報で確認してください。ここで判断が必要なのは「どこに保存するか」で、新しい勤怠システムの中である必要はありません。
実務としては、過去分は新システムに取り込まないほうが安全です。理由は二つあります。ひとつは、集計ルールが違うまま古い打刻を流し込むと、当時支払った給与の時間数と表示される時間数が食い違うこと。もうひとつは、締めが終わった月の数字が新しいルールで再計算されると、あとから見たときにどちらが正しいのか説明できなくなることです。日次データ、月次の集計表、従業員別の年間集計をCSVとPDFの両方で書き出し、共有フォルダに年月で分けて置く。これで足ります。書き出しは解約の前に済ませてください。契約が切れると管理画面に入れなくなり、「先月の分をもう一度」が効きません。
一番ずれるのは有給の残日数
移行でトラブルになりやすいのが年次有給休暇です。付与の方式が入社日ごとなのか全社一斉の基準日なのかで、次の付与タイミングが変わります。新しい方で設定を選び直すとき、前と違う方式を選んでしまうと、切り替え後の最初の付与で全員の残日数が動きます。動いたことに気づくのは、たいてい誰かが有給を申請した日です。
残日数そのものは、手で入力する前提で考えておいてください。移行日を決めて、その時点の一覧を印刷し、一人ずつ突き合わせる。人数が少ないうちは、これが結局いちばん速くて確実です。時間単位の有給を使っている会社は、端数の時間がどう繰り上がるかも先に見ておきます。ここを詰めずに切り替えると、給与計算の直前に本人から問い合わせが来て、旧システムを解約したあとだと根拠を出せません。
打刻機とICカードは引き継げるか
タッチオンタイムは指紋やICカードで打刻できる専用端末を用意しています。いま使っている端末を挿し替えてそのまま使う、という話にはならないと考えておいたほうがいい。端末はサービスごとに作られているのが基本なので、手持ちの機器が使えるかどうかは必ず販売元に先に確認してください。使えないなら、端末の手配日数が切り替え日を決める制約になります。
あわせて聞いておきたいのが、社員証や交通系ICカードで打刻している場合に、そのカードを新しい方でも登録できるかどうかです。カードの識別番号を登録し直す作業が要るなら、一人あたりの作業は短くても全員分となるとまとまった時間になります。これを切り替え日の朝にまとめてやると始業に間に合いません。前の週のうちに、休憩時間や退勤時に少しずつ登録を済ませておく。工場や店舗のように打刻が朝の数分に集中する現場ほど、ここで詰まります。
給与ソフトへの受け渡しは組み直しになる
勤怠の出口は給与計算です。いま給与ソフト側は、KING OF TIMEが出すCSVの並びに合わせて取り込み設定をしてあるはずで、勤怠を替えればその設定も作り直しになります。ここを切り替え当月まで放置すると、締めた直後に給与が回らなくなります。
詰まるのは項目の粒度です。深夜、法定休日、法定外休日、遅刻早退、有給消化といった区分を、給与ソフトが求める形で出せるか。実際のデータを一度通してみないと分かりません。だから本番の締めより前に、テスト用の一か月分を新しい方で作って給与ソフトに取り込んでみます。エラーの原因はたいてい、給与側に存在しない項目が混ざっているか、社員番号の桁や先頭のゼロが落ちているかのどちらかです。両方とも事前に一回通せば見つかります。
切り替えるのは締め日、並走はどうするか
切り替えは締め日で切ります。月の途中で替えると、同じ月の勤怠が二つのシステムに割れ、残業や深夜の時間を手で足し合わせることになる。給与の締めと勤怠の締めがずれている会社は、給与の締めに合わせたほうが事故が減ります。
並走させるかどうかは、従業員の操作が変わるかどうかで決めてください。ICカードや指紋のように打刻の手順そのものが変わるなら、切り替え前の一週間ほど両方で打刻してもらう。二重打刻は面倒がられますが、初日に打刻漏れが出たときに元データが残るので、修正の根拠になります。パソコンのブラウザ打刻のままで手順が変わらないなら、並走なしで切り替えても取り返しはつきます。いずれにしても、旧システムの解約は帳票の書き出しが終わってからです。
切り替えまでの順番
やることの順序は決まっています。先に現行設定の棚卸しをして、次に名簿を移し、集計ルールを組み直し、テスト月で給与ソフトまで通す。有給残と打刻手段の登録はその後です。順番を飛ばして先に端末を並べても、集計ルールが決まっていなければテストのしようがありません。
期間としては、締め日を二回またぐくらいの余裕を見ておくと落ち着きます。一回目の締めで設定の間違いが出て、二回目で確認できる。繁忙期と年末調整の時期は避けてください。勤怠の切り替えは、うまくいっても社内から質問が来る作業です。誰が質問を受けるのかを先に決めておかないと、社長のところに全部集まります。
一次ソース(公式ページ)
制度・料金は改定されます。本記事は執筆時点の情報です。最新情報は必ず上記の公式ページでご確認ください。
よくある質問
KING OF TIMEを解約したあと、過去の勤怠データは見られますか
契約が終わると管理画面に入れなくなるのが一般的なので、解約手続きに入る前に必要な帳票をすべて書き出しておいてください。解約後のデータ保持期間や再発行の可否はサービスの契約条件によるので、解約を申し込む前にサポートに直接確認するのが確実です。書き出したCSVとPDFは、年月ごとのフォルダに分けて社内で保管しておくと、あとから調査を受けたときに探せます。
月の途中で切り替えてしまうとどうなりますか
同じ給与月の勤怠が二つのシステムに分かれるため、残業や深夜の時間を手で足し合わせて集計することになります。月単位で判定する割増の計算がずれる原因にもなるので、締め日で切るのが原則です。どうしても途中になる場合は、その月だけは表計算で合算し、計算の根拠を残しておいてください。
従業員への告知はいつ、何を伝えればいいですか
打刻の方法が変わる場合は、切り替え前の締め日サイクルのうちに伝えて、実物の端末や画面を一度触らせてください。初日の朝に打刻できずに列ができるのが、切り替えで一番起きやすい失敗です。切り替え後の一週目は管理者が毎日打刻漏れを見て、その日のうちに本人へ連絡する運用にしておくと、月末にまとめて修正する手間が消えます。