タイムカードを廃止しても残る作業はどれか
紙のタイムカードをやめたい理由は、たいてい月末の集計です。そこは確かになくなります。ただし作業が消えるのではなく、中身が入れ替わるのが実際のところです。何が残るかを先に知っておくと、導入したあとの落差がありません。
紙をやめると何が変わるか
まず、なくなるものと残るものを分けて見てください。ここを混同したまま導入すると、「思ったより楽にならない」という感想になります。
打刻漏れは電子でもなくならない
打刻し忘れる人は、紙でも電子でも忘れます。変わるのは、忘れたことにすぐ気づける点です。紙だと月末に束を見て初めて分かりますが、電子なら当日か翌日に把握できます。
ただし、気づいた後の作業は残ります。本人に確認し、実際の時刻を申請してもらい、上長が承認する。この一連の流れは自動化できません。むしろ、承認の手続きが増えたと感じる人もいます。
修正の履歴が残ることは守るべき条件
管理者が理由なく打刻を書き換えられる運用にすると、記録の客観性が失われます。誰がいつ何を修正したかが残る仕組みにしてください。これは製品を選ぶときの条件として外せません。厚生労働省のガイドラインでも、労働時間の把握は客観的な記録によることが原則とされています。
廃止に向くかどうか
すべての会社が今すぐ変えるべきというわけではありません。効果が出る条件はある程度はっきりしています。
反対されるのはたいてい理由がある
紙をやめる話を出すと、必ず反対が出ます。多くの場合、理由は「面倒だから」ではありません。話を聞くと、これまで曖昧にしてきた部分が数字になることへの警戒だったりします。始業前の準備の時間、終業後の片付け、休憩が取れていない日。紙のタイムカードでは定時の打刻で丸めていたものが、電子にすると全部残ります。
ここで押し切ると、打刻が形だけになります。実際の時刻ではなく、これまでどおりの時刻を打つようになるだけです。そうなると記録の意味がなくなり、費用だけが増えます。
先に決めておくのは、記録が正確になった結果、増えた時間をどう扱うかです。払うのか、業務の配分を変えるのか。方針を示さないまま「正しく打刻してください」とだけ言うと、現場は自分に不利になると受け取ります。
紙の記録はすぐ捨てられない
電子化したからといって、それまでの紙を処分してよいわけではありません。労働時間に関する記録には保存が求められる期間があります。切り替えた月から電子で残す、それ以前は紙で保管する、という二重の状態がしばらく続きます。
保管場所と、どこまでが紙でどこからが電子かの境目を、切り替えのときに記録しておいてください。数年後に問い合わせを受けたとき、どちらを探せばよいかが分かります。
打刻の方法は1つに絞らなくてよい
全員をスマホ打刻にする必要はありません。店舗や事務所に据え置きの端末を置く方法もあり、外に出る人だけスマホにする形も取れます。従業員の抵抗が強い場合、方法の選択肢を示すだけで話が進むことがあります。
いずれの方法でも、最初の1〜2か月は設定の調整と質問対応に時間がかかります。繁忙期にぶつけないでください。落ち着いた時期に切り替えるのが、結果的にいちばん早く終わります。
選ぶときに見るのは機能一覧ではない
製品の比較表を眺めても、続くかどうかは分かりません。見るべきは、自社でいちばん多い勤務の形が素直に記録できるかどうかです。全員が同じ時間に出社して同じ時間に帰る会社と、直行直帰や時短が混ざる会社では、必要なものが違います。
試すときは、いちばん複雑な人の一週間を入れてみてください。標準的な人で試すと、どの製品でも問題なく動きます。差が出るのは例外のほうで、そして毎月手が止まるのも例外のところです。
もう一つ、給与計算にどう渡すかを先に確認してください。集計は自動でも、給与の担当者が結局手で打ち直しているなら、作業は移動しただけです。誰の手間が減るのかを、人の名前で確認しておくと見誤りません。
就業規則との食い違いが表に出る
記録を仕組みに載せると、就業規則に書いてあることと実際の運用が違っている部分が見えてきます。休憩の時間帯、締め日、端数の扱い。長く紙で回してきた会社ほど、この食い違いが残っています。
仕組みの設定は、規則に合わせるのが原則です。実際の運用に合わせて設定してしまうと、記録と規則が食い違ったまま固定されます。運用のほうが実態に合っているなら、規則を直す手続きを取ってください。設定でごまかすと、後から説明できなくなります。
やめたあとに残る紙もある
打刻をやめても、紙が完全になくなるわけではありません。有給や残業の申請を紙で回している会社では、そこが残ります。順番としては、打刻を電子にしてから申請を移すほうが混乱が少なく済みます。両方を同時に変えると、現場は二つの新しい手順を同時に覚えることになります。
申請まで電子にすると、承認の記録が自動的に残ります。誰がいつ承認したかは、あとから労働時間の妥当性を説明するときの材料になります。紙の申請書を綴じたファイルを探す作業がなくなるのは、思っているより大きな違いです。
費用の見方
費用は人数に応じて増える形が一般的です。だから、いま何人分が必要かではなく、増えたときにどうなるかまで見ておいてください。人数の区切りをまたいだ瞬間に負担が変わる形になっていることがあります。
比べる相手は、いま紙にかかっている費用ではありません。集計に使っている時間です。その時間に、担当者の時給ではなく「その時間で他に何ができるか」を当てて考えてください。経営者本人が集計しているなら、その時間の価値はいちばん高いはずです。最新の料金は記事末尾の各社の公式ページで確認してください。
比べる相手をもう一つ挙げるなら、記録が正確でなかった場合に起きうる負担です。労働時間の記録が客観的に残っていない状態で指摘を受けると、遡って確認する作業が発生します。何も起きなければ費用は無駄に見えますが、そういう性質の支出だと考えてください。
一次ソース(公式ページ)
制度・料金は改定されます。本記事は執筆時点の情報です。最新情報は必ず上記の公式ページでご確認ください。
よくある質問
紙をやめれば集計作業はなくなりますか
集計そのものは自動になります。残るのは、打刻漏れの確認と修正、申請の承認、例外的な勤務の判断です。作業の中身が集計から確認へ変わると考えてください。
打刻の修正は誰がやりますか
本人が申請し、上長が承認する形が基本です。管理者が黙って書き換えられる運用にすると、記録の客観性が失われます。修正の履歴が残る製品を選んでください。
紙のタイムカードは捨ててよいですか
労働時間の記録には保存が求められる期間があります。電子化したあとも、その期間が過ぎるまでは元の記録を捨てないでください。