勤怠管理をエクセルで続ける限界はどこにあるか
エクセルでの勤怠管理は、人数が増えたから破綻するのではありません。破綻するのは、集計以外の仕事がエクセルの外側に溜まり始めたときです。この記事は、切り替えを検討すべきサインと、移行前に決めておくことを整理します。
限界のサインは4つある
1. 修正の依頼が口頭で来ている
打刻の押し忘れや直行直帰の申告が、チャットや口頭で担当者に届き、担当者がエクセルを直している状態です。この形の問題は集計の手間ではなく、誰がいつ何を直したかが残らないことにあります。あとから労働時間を確認したいときに、根拠が追えません。
2. 締め日のあとに必ず手戻りが出る
集計を終えてから修正が入り、もう一度集計をやり直す。これが毎月起きているなら、原因はエクセルの計算式ではなく、申請と承認の締め切りが仕組みとして存在しないことにあります。
3. 自己申告だけで記録している
労働時間の把握について、国は使用者が講ずべき措置をガイドラインで示しています。自己申告による把握を行う場合に必要な措置も含まれるため、現在の記録方法がその内容に沿っているかを、記事末尾の厚生労働省のページで確認してください。ここは「エクセルかシステムか」ではなく、記録の方法そのものの問題です。
4. 担当者が休むと締められない
集計のやり方が特定の人のエクセルの中にしかない状態です。人数が少ない会社ほど起きやすく、そして影響が大きいサインです。
移行を決めたら、先に決めること
システムの比較を始める前に、次の3点を決めておくと選定が短く済みます。
- 打刻の方法 — 事務所のPC、共有のタブレット、個人のスマートフォン、ICカードのどれを使うか。現場に出る職種があるなら、位置情報つきの打刻が必要かどうかも含めて決めます。
- 働き方の種類 — 固定時間だけか、シフト制があるか、変形労働時間制を採っているか。この条件に対応しないシステムは、いくら安くても候補から外れます。
- 給与計算との接続 — 集計結果を給与ソフトに手入力するのか、データで渡すのか。連携できる組み合わせは決まっているので、給与側から見て対応するシステムを選ぶほうが早いことがあります。
エクセルのままで直せることもある
四つのサインのうち、当てはまるのが一つだけなら、仕組みを入れ替える前に運用を直したほうが早いことがあります。とくに、修正の依頼が口頭で来る問題と、締めのあとに手戻りが出る問題は、申請の締め切りを決めるだけで大きく減ります。
具体的には、修正の申請を締め日の何日前までに出すと決め、その期限を過ぎたものは翌月にまとめる、という運用です。仕組みを入れなくても実行できます。これで解決するなら、費用も教育の手間もかかりません。
ただし、記録の客観性の問題は運用では解決しません。担当者がエクセルの数字を直接書き換えている限り、誰がいつ何を直したかは残らないからです。この一点が当てはまるなら、運用の工夫では届きません。
費用の比べ方を間違えない
エクセルは費用がかからないように見えますが、集計にかかっている時間は費用です。毎月の集計と手戻りに何時間使っているかを、一度実際に計ってみてください。頭の中の見積もりは、たいてい実際より短く出ます。
そのうえで比べるのは、システムの費用とその時間の価値です。担当者が経営者本人なら、その時間の価値はいちばん高くなります。人数が少ない会社ほど「エクセルで足りている」と考えがちですが、実際には社長の時間が使われていることが多くあります。
移行のタイミング
締めの区切りが良い月の初日から新方式に切り替え、最初のひと月は旧方式と並行して記録するのが安全です。並行期間を置くと、集計結果が合わないときに原因を特定できます。繁忙期の直前は、運用が定着する前に負荷がかかるため避けてください。
移行してもエクセルが完全に消えるわけではない
勤怠の記録と集計は仕組みに移りますが、そこから先の分析はエクセルに書き出して行うことがあります。部門ごとの傾向を見たい、前年と比べたい、といった用途です。
だから、集計の結果を扱いやすい形で書き出せるかを確認してください。画面では見られても書き出せない仕組みだと、結局は手で転記することになります。書き出した内容に、必要な項目が入っているかまで見ておくと確実です。
これまでのエクセルは残しておく
切り替えたあとも、過去の記録は労働時間の記録として保存が必要です。エクセルのファイルを消さずに、開ける状態で保管してください。式が入ったまま残しておくと、あとで開いたときに参照先が失われて数字が壊れることがあります。
安全なのは、集計が確定した時点の数字を値として固定した形で残すことです。人ごと・日ごとの記録が読める状態であれば、根拠として使えます。ファイルの置き場所と、いつまで残すかを決めて、担当者以外にも分かるようにしておいてください。
選ぶときに現場の声を先に聞く
集計する側の都合だけで選ぶと、打刻する側が使いにくい仕組みになります。使いにくければ打刻は漏れ、漏れた分の修正が担当者に返ってきます。結局、集計の手間は減りません。
候補が絞れた段階で、実際に打刻する人に触ってもらってください。数人でかまいません。そこで出た「面倒」という声は、導入後に毎日起きることの予告です。無視して進めると、定着しないまま費用だけが続きます。
触ってもらうときは、いちばん忙しい時間帯を想定して試してください。落ち着いた場面ではどれも問題なく動きます。差が出るのは、急いでいるときに何回操作すれば終わるかというところです。
一次ソース(公式ページ)
制度・料金は改定されます。本記事は執筆時点の情報です。最新情報は必ず上記の公式ページでご確認ください。
よくある質問
何人くらいから勤怠管理システムを入れるべきですか
人数だけでは決まりません。判断材料になるのは、集計の手戻りが毎月起きているか、労働時間の記録を客観的な方法で残せているかです。
エクセルでの勤怠管理は法律違反になりますか
エクセルの使用そのものが禁じられているわけではありません。論点は労働時間を客観的に把握し記録できているかで、詳しくは厚生労働省のガイドラインを確認してください。
勤怠管理システムに移行するのに適した時期はいつですか
締めの区切りが良い月初や、就業規則を見直すタイミングが移行しやすい時期です。繁忙期の直前は、運用が定着する前に負荷がかかるため避けたほうが無難です。