運送業の勤怠管理、5人以下ならどこで選び分けるか
ドライバーが数人の会社で勤怠管理システムを比べ始めると、機能一覧の差ばかりが目に入って決まらなくなります。決まらないのは、比べる順番が逆になっているからです。運送の勤怠は「タイムカードの電子版」では収まりません。先に自社の条件を三つ書き出してから候補を当てはめると、ほぼ機械的に絞れます。
何を記録するために入れるのか、先に決める
入れる理由は大きく三つに分かれます。給与計算の締め作業を減らしたいのか、拘束時間と休息期間を自分で把握したいのか、監査や労働基準監督署の調査で聞かれたときに出せる記録を残したいのか。この三つは要求される精度が違うので、どれが主目的かを決めないまま比べると、必要のない機能に金を払って、必要な項目が取れていないという結果になります。
給与が目的なら、出勤と退勤の二点が取れて締め日に集計が出れば足ります。ところが拘束時間の管理まで含めるなら、荷待ちがどこに入ったか、休憩をどこで取ったかが記録に残っていないと後から説明できません。前日の帰庫が遅かった翌朝の出庫が早すぎないか、というのは出退勤の二点だけを見ていても気づけません。運転者には一般の業種とは別の基準があるので、そこを見る気があるかどうかで選ぶ製品が変わります。
五人以下の運送で選び分ける三つの軸
軸は、打刻がどこで発生するか、点呼記録や日報とどう役割分担するか、集計をシステムにどこまでやらせるか。この三つです。少人数の会社では、機能の数より「社長が毎月何回触るか」が効きます。人が増えれば運用を担当者に渡せますが、五人以下なら配車も請求も社長がやっているので、月末に三十分余分に取られる仕組みは半年で使われなくなります。
逆に言えば、少人数だから多機能でなくてもいい、とは限りません。ドライバー全員が直行直帰で、事務所に誰も来ない日があるなら、必要な機能はむしろ一般の会社より多くなります。人数ではなく働き方で決まる、と考えてください。
打刻はスマホか、事務所に置く機械か
車庫に集まって出庫し、帰りも必ず事務所へ戻るなら、据え置きの打刻機がいちばん揉めません。カードをかざすだけなので押し忘れが少なく、私物のスマホを業務に使わせる話も出てきません。一方で、自宅から現場へ直行する日や、そのまま帰る日があるなら、据え置きだけでは記録が空きます。空いた分を後から手で埋めることになり、それは客観的な記録とは言えなくなります。
スマホ打刻にするなら、位置情報を取るかどうかを先に決めておきます。取れば「本当にそこにいたか」は説明できますが、ドライバー側は監視されていると受け取るので、何のために取るのかを説明しないまま入れると打刻自体をサボられます。もう一つ現場で必ず起きるのが、山間部や地下の荷卸し場で通信が切れる場面です。圏外でも打刻できて後から送信されるのか、その場では押せないのか。ここは製品ごとに違うので、導入前に走行ルート上で試させてもらうのが確実です。
点呼記録や日報と二重入力にならないか
運送の朝は、点呼をして、アルコールチェックをして、日報を用意して、そこへさらに打刻が乗ります。作業が四つ並ぶと、いちばん後ろが必ず形だけになります。実際に起きるのは、まとめて後で押す、社長が代わりに押す、そして記録が実態とずれる、という流れです。ずれた記録は、監査でも給与でも使えません。
一本化できるなら一本化し、できないならどちらを正の記録にするかを決めます。問い合わせのときに聞くのは次の四点です。
- 点呼記録やアルコールチェックの記録を同じ画面に持たせられるか
- 打刻を後から直したとき、誰がいつ直したかの履歴が残るか
- 本人以外(社長)の代行入力ができるか、その場合の記録の残り方
- 日報や運行記録の出力と、勤怠の出力を突き合わせられる形式か
履歴が残らない製品でも運用はできますが、その場合は紙の日報を捨てないでください。突き合わせる材料がないと、記録の正しさを主張する根拠がなくなります。
集計で見たいのは残業時間だけではない
一般業種向けの勤怠システムは、残業が何時間になったかを月末に教えてくれます。運送で怖いのはそこではなく、拘束時間の合計と、勤務と勤務の間の休息が足りているかです。帰庫が遅れた翌朝の出庫、連続で長距離が入った週。これは月末に集計を見て気づいても手遅れで、配車を組む前の段階で見えていないと直せません。
運転者向けの集計に対応した製品もありますし、していない製品でも打刻データを書き出して自分で並べれば見られます。どちらでもいいので、誰がいつそれを見るのかだけは決めてください。「入れたのに誰も見ていない」が、少人数の会社でいちばん多い失敗です。あわせて、年次有給休暇の取得日数を管理できるかも確認しておきます。ドライバーは休みを取りにくいので、記録がないと取らせ忘れに気づけません。
料金は人数が少ないときほど最低利用料で決まる
一人あたりの単価で比べると安く見える製品でも、最低利用料や最低契約人数が設定されていると、数人の会社では実質の負担が跳ね上がります。最新の料金は公式ページで確認してください。単価表だけを見て決めると、契約書の段階で話が変わります。
据え置きの打刻機を置く場合は、本体の代金かリース料、通信の費用、故障時の対応がどうなるかまで含めて比べます。車庫に置くなら屋外に近い環境なので、寒暖や粉じんで壊れたときにすぐ代替が来るかどうかで、止まる日数が変わります。解約したときに過去の記録を持ち出せるかも先に聞いておいてください。労働時間の記録は一定期間の保存が要るので、解約と同時に見られなくなる形だと困ります。
型ごとに当てはめる — 結局どちらを選ぶか
車庫に全員が集まり、帰庫も揃うなら、据え置きの打刻機を中心にした構成が続きます。カードをかざすだけなので教育が要らず、押し忘れの言い訳も出ません。逆に直行直帰が混ざる会社は、スマホ打刻ができる製品以外は候補から外していい。半分埋まらない記録を毎月手で直す運用は、必ず途中でやめます。
点呼やアルコールチェックの記録が紙で溜まって困っているなら、勤怠側にそれを寄せられるかで選びます。ここは対応が製品ごとに分かれるところなので、機能一覧ではなく問い合わせで詰めてください。拘束時間まで自分で管理する気があるなら運転者向けの集計を持つ製品、まずは給与の締めを楽にしたいだけなら、給与ソフトへ渡せる形式かどうかで決めるほうが早い。歩合給や運行手当がある会社は、手当の計算まで勤怠に載せようとすると設定が重くなるので、時間だけ取って手当は別で計算する割り切りも十分ありです。
一次ソース(公式ページ)
制度・料金は改定されます。本記事は執筆時点の情報です。最新情報は必ず上記の公式ページでご確認ください。
よくある質問
デジタコの運行記録を、そのまま勤怠の打刻代わりにできますか
運行記録は車両単位、勤怠は人単位なので、そのままでは対応しません。二人乗務や車両の入れ替えがあると、どちらのドライバーの時間か機械側では決まりません。連携できる製品もありますが、車両と人の紐付けを誰がどのタイミングで登録するのかを先に聞いてください。車を降りてからの積み込みや荷待ちが記録から落ちる点も確認が必要です。
アルコールチェックの記録も勤怠システムにまとめられますか
対応は製品ごとに違うので、資料ではなく問い合わせで確かめてください。点呼記録は運輸側の保存要件で様式も保存期間も勤怠とは別建てなので、無理に一本化すると片方が抜けます。まとめるなら、ドライバーが朝いちばんに必ず触るほうへ寄せるのが現実的です。
ドライバーが打刻を忘れたとき、社長が直しても問題ありませんか
直すこと自体は問題になりませんが、誰がいつどんな理由で直したかが残る形にしてください。客観的な記録を後から書き換えたのに理由が残っていないと、調査の場で記録全体の信用が落ちます。修正申請と承認の履歴が残る製品なら、社長が代行入力しても経緯を説明できます。