飲食店の個人事業主の会計ソフト、レジ締めと申告で選ぶ
飲食店を個人でやっていると、会計ソフトを開けるのは閉店して片付けが終わってからか、月に一度の休みの日しかありません。だから選ぶ基準は機能の多さではなく、その短い時間で作業が終わるかどうかになります。ここでは判断の軸を先に出して、あとから自分の店の条件を当てはめる順番で書きます。
先に決めるのは、毎日の売上を誰が入力するか
飲食店の帳簿は、取引の件数が売上側に極端に偏ります。一日に何十枚も伝票が出ますが、会計上は一日分をまとめて一行にできます。逆に仕入や経費は、業者の請求書と市場やスーパーのレシートで枚数が膨らむ。この形が分かっていないまま機能一覧を見比べても、どれも同じに見えて決まりません。
入り口は三つです。店主が自分でレジ締めの日報を見ながら手で入れるか、POSレジと会計ソフトをつないで自動で流すか、通帳と現金の動きだけ入れて残りは税理士や記帳代行に渡すか。どれを選ぶかで、見るべき機能が入れ替わります。手入力なら仕訳の呼び出しの速さ、連携なら対応しているレジの機種、外注ならデータの受け渡し方です。
決めかねているなら、直近ひと月のレジ日報を実際に並べて、自分がこれを入力する気になるかどうかで判断してください。無理だと感じたなら、その場で連携か外注に振り切ったほうがいい。あとで気が変わると、残高を移し替える作業をもう一度やることになります。
レジの売上はどこまで自動で入るか
連携と一口に言っても中身はばらばらです。日ごとの売上合計だけが入るもの、現金・カード・電子マネーといった支払方法ごとに分かれて入るもの、品目区分まで分かれて入るもの。会計側で欲しいのは、たいてい支払方法別まで。ここが分かれないと、カード会社からまとまって入る入金と売上を突き合わせる作業が毎月手作業で残ります。
確認するのは、自分の店で使っているレジの機種名で連携できるかどうかです。同じメーカーでも旧機種は対象外ということがあります。公式の連携一覧に見当たらなければ、売上データをCSVで書き出して取り込めるかを見てください。列の形が合っていれば、それでも毎日の手入力はなくなります。
持ち帰りと店内飲食の両方をやっている店は、レジ側で税率の区分が分かれているかを先に見ます。混ざったまま会計に入ると、消費税の集計を後から手で割り直すことになる。免税のうちは影響が小さくても、課税事業者になった月から一気に重くなる部分です。
現金が合わない日、帳簿はどう書くか
現金商売の帳簿が面倒になるのはここです。釣銭の渡し間違い、レジの打ち間違い、両替の記録漏れ。一円単位で毎日ぴったり合うことはありません。合わないから放っておくと現金残高がずれ続け、年末に「手元にいくらあるはずか」が誰にも分からなくなります。
実務では、レジ締めで数えた実際の現金と日報の差額を、その日のうちに現金過不足として処理して締めてしまいます。ソフト選びの観点では、この同じ処理を毎日繰り返せるかどうか。定型の仕訳を登録できたり、前日の入力を複製できたりすれば、閉店後の作業は一分もかかりません。
もうひとつ、売上金をそのまま仕入の支払いや自分の生活費に使うと、事業のお金と家計が混ざります。混ざっても帳簿は作れますが、事業主貸の行が増えて自分で読めなくなる。売上はいったん口座に入れ、支払いは口座かカードから出す形にしておくと、あとの照合が段違いに楽です。
領収書とレシートの山を、どう溜めずに済ませるか
仕入は業者からの請求書、それ以外は市場やスーパー、ホームセンターのレシート。飲食は経費の枚数が多く、月末に袋からまとめて出すと一晩仕事になります。確定申告が間に合わなくなる店は、たいていここで詰まっています。
レシートを撮って読み取る機能はどのソフトにもありますが、見るべきは読み取りの精度よりも、確認して登録し終わるまで何手かかるかです。仕入業者の請求書がメール添付やPDFで届いているなら、それは電子取引としての保存の対象になります。紙で受け取ったものは紙のまま保存して構いません。細かい要件は記事末尾の公式ページを見てください。
会計ソフトに書類の保存機能が付いていれば、別のフォルダを管理する手間は減ります。付いていなくても、決めた場所に規則的なファイル名で入れていけば足ります。どちらにするかは、自分がフォルダ運用を続けられるかどうかだけで決めてください。続かない仕組みは、半年後に空のフォルダになります。
青色申告決算書まで、ソフトの中で終わるか
個人の飲食店が会計ソフトを入れる目的の大半は確定申告です。だから外せないのは、青色申告決算書と確定申告書まで作って、そのまま電子申告で出せるかどうか。会計は入るけれど申告書は別のソフト、という組み合わせもあるので、契約する前に確認してください。
飲食で効いてくるのは、期末の棚卸、自宅と店が一体の場合の家賃や光熱費の按分、専従者給与、それに厨房機器や内装の減価償却です。開業のときに入れた内装は数年かけて費用にしていくので、毎年同じ計算を繰り返します。手計算だと必ずどこかの年でずれる。ここを自動で持ち越してくれるかどうかは、長く使うほど差になります。
青色申告特別控除を電子申告で満額まで取りたい場合は、帳簿の保存方法やe-Taxの使い方が条件にからみます。ソフト側では「電子帳簿保存に対応」といった書き方をしていることが多い。控除の条件そのものは変わることがあるので、記事末尾の公式ページで確かめてください。
人を雇っているなら、給与はどこで計算するか
アルバイトが数人いる段階になると、給与計算を会計ソフトの中でやるか、別のサービスに分けるかを決める必要があります。飲食は時給制で、深夜割増があり、シフトが月ごとに動く。給与側が勤怠の集計を受け取れるかどうかが、実務の分かれ目になります。
会計ソフトと同じ会社の給与サービスを使えば、給与の仕訳が自動で立ちます。手で振り替える必要がなくなるのは大きい。ただし料金は会計と別建てになることが多いので、最新の料金は公式ページで確認してください。
人を雇った時点で、源泉徴収と毎月の納付、年末に年末調整が始まります。これは会計ソフトの選定とは別の話で、しかも遅れると延滞の扱いになります。会計より先に、誰がいつ計算して納めるかの段取りを決めておいてください。
結局、何で決めるか
軸は三つに畳めます。レジ連携が必要かどうか、確定申告書まで出せるかどうか、そして毎年払い続けられる料金かどうか。連携が必要なら対応機種で候補がほぼ絞られ、そこから外れるレジを使っているなら連携は諦めて手入力か外注に寄せます。この順番で見ると、比較表を眺めるより早く決まります。
候補が二つに絞れたら、無料で試せる期間に自分の店の実データを何日か入れてみてください。カタログの機能欄では差が出ませんが、実際に売上とレシートを入れると、入力画面の速さや取り込みの素直さで体感がはっきり分かれます。
税理士に頼む予定があるなら、契約前に相手が普段扱っているソフトを聞いておくこと。あとで合わせるために乗り換えると、期首残高の入れ直しと過去データの参照方法で余計な手間がかかります。そこだけは、先に聞けば無料で回避できます。
食材の仕入と棚卸は、帳簿のどこに書くか
帳簿アプリを入れて最初につまずくのは、食材の支払いをぜんぶ「仕入高」に放り込んでしまうことです。生鮮や酒、業務用の調味料は仕入でいいのですが、割り箸やおしぼり、洗剤、ラップは消耗品費です。ここを混ぜると原価率が出せなくなります。原価率が出せない店は、値上げの判断も、メニューを一品落とす判断も勘でやることになります。だから科目を分けるのは税務のためではなく、翌月の自分のためです。
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期末に残っている食材と酒は棚卸として在庫に振り替えます。これをやらないと、期末にたまたま多く仕入れた月の利益が実際より小さく出ます。飲食店は月末に業者へまとめ発注することが多いので、ズレが目立ちます。棚卸は倉庫と冷蔵庫、酒の未開栓分をメモして金額を入れるだけです。アプリなら決算前の入力画面に棚卸の欄があるので、そこに入れれば決算書側へ自動で回ります。
まかないと、自分や家族が食べた分は自家消費として扱います。仕入に入れたまま何もしないと、売れていない食材が原価に残り続けて数字が歪みます。厳密に一食ずつ計算する必要はなく、月ごとにまとめて振り替える運用にしておけば続きます。扱い方と金額の考え方は税務署の説明や公式ページで確認してください。
キャッシュレスとデリバリーの入金は、いつの売上として書くか
帳簿の付け方でいちばん間違いが多いのが、カードや電子マネー、デリバリーの売上を「振り込まれた日」に書いてしまうことです。売上が立つのは提供した日で、入金はその後です。入金日で書くと、月末の売上が翌月に飛びます。締めた月の利益が実態と合わず、資金が足りているのか足りていないのかの判断もできなくなります。
正しくは、売った日に売上を計上して、相手先ごとの未収入金として残します。入金があったらその未収入金を消していく。この形にしておくと、入るはずの金が入っていないときにすぐ気づきます。決済会社やデリバリー各社の入金サイクルは会社ごとに違うので、契約先の管理画面や公式ページで確認して、締め日と入金日を自分の帳簿カレンダーに落としておいてください。
もうひとつ、入金は手数料が引かれた差額で振り込まれます。この差額をそのまま売上として書くと、売上が実際より小さくなり、支払手数料も帳簿に残りません。売上は総額で立て、引かれた分は手数料として別に記帳します。アプリの明細取込みだと差額の一行しか入ってこないことがあるので、取り込んだあとに分ける手順を毎月同じ日に決めておくのが現実的です。
一次ソース(公式ページ)
制度・料金は改定されます。本記事は執筆時点の情報です。最新情報は必ず上記の公式ページでご確認ください。
よくある質問
レジは手書きの売上日報だけです。会計ソフトを入れる意味はありますか。
あります。売上は一日一行で入れるだけでも、口座やカードの明細を自動で取り込める分、仕入と経費の入力がまるごと軽くなります。ただしレジ連携を目的に上位のプランを選ぶ必要はありません。手書きの日報は、集計の根拠として紙のまま残しておいてください。
家族に店を手伝ってもらっている分の給与は、会計ソフトで扱えますか。
青色申告決算書に専従者給与の欄があるので、対応しているソフトなら入力先はあります。ただし経費にできるかどうかは事前の届出があるかで決まり、ソフトが代わりに要件を満たしてくれるわけではありません。届出の様式と提出先は記事末尾の公式ページで確認してください。
二店舗目を出したら、会計ソフトはどうなりますか。
個人事業なら申告そのものは一本にまとめます。店ごとの損益を分けて見たい場合は部門やタグの機能が必要で、これは下位プランだと使えないことがあります。レジ連携も店舗数の扱いがサービスごとに違うので、出店を決めた段階で両方確認しておくと入れ替えを避けられます。