小売の一人社長の会計ソフト、レジ締めと在庫で決まる
小売の一人社長が会計ソフトで詰まるのは、仕訳の書き方ではありません。毎日出るレジの数字、数日遅れでまとめて入ってくるキャッシュレスの入金、そして期末の棚卸。この三つをどう扱うかを先に決めれば、候補は自然に絞れます。機能一覧の比較から入ると、店の実務と関係ない項目で迷うだけです。
先に決めるのは「一日分の売上をどう入れるか」
小売の帳簿は、仕入と経費より先に、毎日立つ売上とその入金でできています。閉店後にレジを締めて、翌朝にはまた次の日の売上が始まる。この一日分を会計へ運ぶ方法が決まらないうちは、どのソフトを見ても同じに見えます。逆にここが決まると、必要な機能は三つ四つに絞られます。
判断に使う軸は次の三点です。営業日数だけ繰り返す作業なので、ここを軽く見ると入力が溜まり、確定申告の直前に一年分のレジ袋を広げることになります。
- レジの日計を、一日一本の仕訳にまとめられるか
- 入金の経路が何本あるか(現金・決済会社・モール・掛売)
- 在庫を帳簿の中で持つ必要があるか
レジ締めの数字を、毎日手で入力するのか
売上は、客ごとに仕訳を切る必要はありません。日計表の合計を、現金と決済手段ごとに一本ずつ起こせば足ります。問題は、その一本を誰が作るかです。手入力なら一日数分ですが、店を開けた日数だけ発生します。週末にまとめてやると、レシートの束と日計表の照合から始めることになります。
POSのCSVを取り込む方式なら、列と科目の対応付けを最初に一度作れば、以後は同じ形で流し込めます。ただしレジ側の集計区分が会計の科目と噛み合わないと、毎回手直しが入って結局手入力と変わりません。導入前に、いま使っているレジの日計表を一枚印刷してください。そこに出ている区分がそのまま借方と貸方に置けるかどうかで、連携の価値が決まります。
入金の口数を数えてから選ぶ
現金だけの店なら話は単純ですが、いまは決済会社が複数入っているのが普通です。会社ごとに締めが違い、入金日も違い、手数料が引かれた額で振り込まれます。売上を立てた日と、口座に入る日と、金額まで一致しない。ここを放置すると、通帳の入金が何の売上に対応するのか分からなくなります。
だから会計側では、決済分をいったん未収として持ち、入金時に手数料との差額を経費に落とす形が要ります。銀行やカードの明細を自動で取り込めるか、使っている決済会社の明細を取り込めるかは、契約前に確認する価値があります。対応がなければ、決済会社の管理画面からCSVを落として取り込む手順を決めておく。月末に三社分の入金明細を並べて電卓を叩く夜を、毎月繰り返さないためです。
在庫と棚卸を、帳簿の中でやるか外でやるか
小売の決算は棚卸で数字が変わります。期末に残った商品を落とさなければ利益が実態からずれ、そのまま税額に響きます。ここは一人社長でも省略できません。
一方で、日々の在庫まで会計ソフトの中で動かそうとすると、入荷のたびに登録する作業が増えます。多くのクラウド会計は在庫管理そのものを持たず、期末に一本仕訳を入れる前提で作られています。日々の数量はPOSや在庫アプリ側で持ち、会計には期末の残高だけを渡す。この分担のほうが、一人で回すには続きます。会計ソフトに在庫機能を求めるかどうかは、棚卸の頻度と品目数を見て決めてください。
消費税とインボイスの区分は、どこで付けるか
食品や新聞を扱う店は、標準税率と軽減税率が同じレジに混ざります。レジの日計表で税率ごとに分かれて出ているなら、その区分のまま仕訳を分ければ済みます。出ていない場合は手で分ける作業が毎日発生するので、会計ソフトより先にレジの設定を直すほうが早いです。
仕入側は、相手が登録事業者かどうかで処理が変わります。取引先ごとに登録の有無を保存しておける作りなら、入力のたびに迷わずに済みます。自分が課税事業者になるかどうか、どの計算方法を選ぶかは制度の話で、ソフトの選択とは別問題です。判断に迷うところは税理士か、記事末尾の公式ページで確認してください。
三つの型に条件を当てはめる
候補は大きく三つに分かれます。レジ会社が用意する会計連携や一体型、銀行連携と申告まで一本で持つ汎用のクラウド会計、そしてパソコンに入れて使うインストール型です。
レジと同じ会社で揃える型は、日計が自動で流れるのが強みです。ただしレジを入れ替えると会計側も見直しになるので、レジの契約年数と一緒に考えることになります。汎用のクラウド会計は口座と決済の取り込みが広く、確定申告書や法人の申告まで作れますが、レジのCSVをどう取り込むかは自分で設計します。インストール型は手元にデータが残る安心感がある反面、明細の自動取得は限られる場合があります。料金の考え方も型によって違うので、最新の料金は各社の公式ページで確認してください。
もうひとつ、税理士に決算を頼んでいるなら、その事務所が扱えるソフトに寄せるのが一番手数が減ります。年に一度のデータの受け渡しが、ファイルの書き出しと修正のやり取りで数日潰れることがあるからです。
切り替えるなら、いつ手を動かすか
乗り換えは期首から始めるのが原則です。期の途中で替えると、開始残高の移し替えに加えて、同じ期の帳簿が二つのソフトに分かれます。決算のときに両方を突き合わせる手間は、待つ数か月分より確実に重い。
移行できないものもあります。過去の仕訳がすべて形のまま入るとは限らず、補助科目やタグ、自動仕訳のルールは作り直しになることが多いです。旧ソフトの帳簿は、保存が必要な期間を満たす形で残してください。電子で保存する場合の要件は記事末尾の公式ページにあります。切り替えた最初の月だけは毎日締めて、月末に試算表を出す。ここでずれを見つけておけば、あとは同じ作業の繰り返しになります。
一次ソース(公式ページ)
制度・料金は改定されます。本記事は執筆時点の情報です。最新情報は必ず上記の公式ページでご確認ください。
よくある質問
POSのデータは毎日取り込むべきですか。月にまとめてもいいですか。
月にまとめても決算は組めます。ただし現金が合わなかったときに、どの日のどの操作が原因かを追えなくなります。月まとめにするなら、レジの日計表だけは日ごとにPDFか紙で残しておいてください。後から原因を特定できる材料が手元に残ります。
レジの現金がわずかに合わない日は、どう処理すればいいですか。
差額は現金過不足として処理し、原因が分かった時点で本来の科目に振り替えます。追いかける期限を自分で決めておかないと、決算前に何か月分もの差額が残ります。同じ方向のずれが続くなら、釣銭の準備金やレジ操作の手順そのものを疑ってください。
ネットショップと実店舗を、ひとつの会計ソフトで見るべきですか。
同じ法人・同じ事業なら分けずに一本で持つほうが手間は少ないです。売上の出どころを知りたいだけなら、補助科目や部門タグで分ければ足ります。ソフトを分けると決算で合算する作業が毎年発生し、消費税の集計もやり直しになります。