従業員5人以下の会計ソフト、外せない条件はどこか
会計ソフトの比較ページを開くと、機能の一覧が延々と並びます。従業員が数人の会社で毎月本当に使うのは、そのうちのごく一部です。選べなくなる原因は機能が足りないことではなく、条件に順番を付けていないことにあります。先に「これがないと来月の記帳が止まる」という条件を決めて、あとから製品を当てはめる。順序を逆にすると、使わない機能の比較で何週間も消えます。
最初に決めるのは製品ではなく「誰が毎月触るか」
経理専任がいない会社では、入力する人は社長本人か、配偶者や家族か、外部の税理士事務所のどれかです。ここを決めないままソフトを契約すると、月末に領収書の入った袋を前にして誰も手を付けない状態になります。ソフトの問題ではありません。担当が空白のまま自動化だけ買っても、空白は埋まらないからです。
社長が自分で入力するなら、日中は現場や商談に出ていて机に座るのは夜になります。その時間帯に、スマホで領収書を撮って登録できるか、翌朝に続きをパソコンでできるかが効いてきます。家族が日中に入力するなら、逆に必要なのは操作画面の分かりやすさで、簿記を知らない人が「これは経費のどれか」と迷ったときに候補が出てくるかどうかを見ます。税理士事務所が入力するなら、こちらが選ぶべきは会計ソフトではなく、証憑をどう渡すかの仕組みです。
外せない条件は三つに絞れる
一つ目は、銀行口座とクレジットカードの明細が自動で取り込めること。人数が少ない会社ほど、通帳を見ながら日付と金額を打ち直す作業が後回しになります。この作業は月に半日近く消えるうえ、溜めると記憶が飛んで「この出金は何だったか」を探す時間が上乗せされます。取り込みさえ回っていれば、あとは科目を選ぶだけの作業になり、通勤前の十分でも進みます。
二つ目は、帳簿と証憑が法律の求める形で残ること。電子で受け取った請求書や領収書は電子のまま保存する必要があり、あとから探せる状態にしておくことも求められます。ここを外すと、税務調査の場面ではなく、日々の「あの請求書どこだっけ」で毎回時間を取られます。要件の細かいところは変わることがあるので、記事末尾の公式ページで現在の内容を確認してください。
三つ目は、決算と申告まで一本でつながること。青色申告の帳簿として使うなら、期末に貸借対照表と損益計算書が出せるかは最低条件です。税理士に任せる場合でも、事務所が受け取れるデータ形式かどうかを先に聞いておかないと、こちらの入力を事務所が打ち直すという、いちばん無駄な形になります。
5人以下では要らない機能、あとで効く機能
部門別の集計、プロジェクト別の原価、在庫管理、多通貨。この手の機能は比較表では目立ちますが、数人の会社で最初から必要になることはほとんどありません。使わない機能が付いた上位プランを選ぶと、支払いが続くだけでなく、入力画面の項目が増えて家族が迷います。判断は「今期の決算に必要か」で切ってかまいません。
逆に、人数が少なくても半年以内にほぼ確実に効いてくるのは次の三つです。
- 給与計算と年末調整への接続(人を雇っている、または近く雇う場合)
- 請求書の発行と入金の消し込み(売掛が残る商売の場合)
- 電子申告への対応(税務署や自治体へ紙で出しに行く手間がなくなる)
この三つは、別のソフトを買い足しても対応できます。ただし別々にすると、売上の数字を二度打つ場面が必ず出ます。二度打ちは金額のずれを生み、ずれた月を探すのに一日かかる。同じ会社の製品でそろえる価値は、機能の良し悪しよりここにあります。
毎月の負担は何で決まるか
料金の決まり方は大きく分けて、機能の段階で決まる形と、使う人数や従業員数で決まる形があります。数人の会社は人数課金では安く収まりやすい一方、給与計算や年末調整が別料金になっているところが多く、そこを足すと最初に見た金額と印象が変わります。見るべきは月額の表示ではなく、一年分に必要な機能を全部足した合計です。
無料お試し期間の使い方にも癖があります。試用期間中に決算まで到達することはまずないので、試せるのは日々の入力と取り込みだけです。そこで確認するのは、自分の取引銀行が対応しているか、明細の摘要から取引先名がきちんと拾えるか、この二点で十分です。料金は改定されるので、金額は記事末尾の公式ページで最新のものを見てください。
税理士がいるかどうかで条件が入れ替わる
顧問税理士がいて、事務所が特定のソフトを前提に動いている場合、こちらが違う製品を選ぶと毎月データを変換して渡すことになります。変換のたびに科目がずれ、確認の電話が増える。事務所に「うちが入力するとして、どの形式なら手間が増えませんか」と一度聞いてください。多くの場合、この一問で候補が二つか三つに減ります。
税理士がいない場合は、条件が変わります。申告書そのものを作れるか、作れないなら別途どうするかを先に決める必要があります。個人事業なら申告書の作成まで含む製品がありますが、法人の申告書は会計ソフト単体では完結しないのが普通です。ここを知らずに期末を迎えると、決算月に慌てて事務所を探すことになり、繁忙期だと断られます。
三つの選択肢を条件に当てはめる
現実的な選択肢は三つです。クラウド型は明細の自動取込と法改正への自動対応が強みで、税理士と同じ画面を見られます。反面、毎年の支払いが続き、通信が不安定な場所では動きが重くなります。インストール型は手元で動くぶん操作が速く、大量の仕訳をまとめて打つ使い方に向きます。ただし更新の対応やデータのバックアップは自分の責任になります。
三つ目が、記帳代行に出して自社は証憑を渡すだけにする形です。入力する人がどうしても確保できない会社では、これがいちばん確実に回ります。数字が手元にリアルタイムで見えなくなる代わりに、月末の夜が空く。売上の見通しを毎日見る必要がない商売なら、割り切って選ぶ価値があります。
切り替えるなら期首に寄せる
期の途中で乗り換えると、前半と後半で帳簿が分かれ、決算のときに両方を突き合わせる作業が発生します。数人の会社でこれをやると、決算が一か月遅れます。事情がない限り、切り替えは新しい期の初日からにして、前の期は古いソフトで締めきってください。
移すのは期首の残高だけで十分です。過去の仕訳を全部移そうとすると形式が合わずに崩れますし、そもそも過去分は古いソフトを閲覧できる状態で残しておけば足ります。解約すると過去データが見られなくなる製品もあるので、解約前に決算書と総勘定元帳をPDFで書き出して保存しておく。ここを忘れると、数年後に融資の相談で過去の数字を求められたときに手が止まります。
一次ソース(公式ページ)
制度・料金は改定されます。本記事は執筆時点の情報です。最新情報は必ず上記の公式ページでご確認ください。
よくある質問
無料で使える会計ソフトでも足りますか
無料のプランは、登録できる仕訳の数や決算書の出力、サポートの範囲に制限があることが多いです。困るのは、制限に突き当たるのが決算直前になる点で、その時期に有料へ切り替えると設定を見直す余裕がありません。試すなら、期の途中ではなく開始直後に入れて、一年分を通せるかどうかを見てください。制限の内容と最新の料金は記事末尾の公式ページで確認してください。
エクセルの自作帳簿から会計ソフトに移るのは、どのタイミングですか
消費税の申告が必要になったとき、従業員に給与を払い始めたとき、事業用の口座やカードが増えたときが目安です。この三つはいずれも、記録の量ではなく記録の種類が増える変化なので、表計算の列を足して対応すると計算式が壊れます。移す前に、エクセルで使っていた項目名とソフトの勘定科目を対応させる表を紙で一枚作っておくと、初月の入力で迷いません。
ひとりでしか使わないのに、クラウド型を選ぶ意味はありますか
意味があるのは、税理士に同じ画面を見てもらえる場合と、パソコンが壊れたときにデータが手元の機械と一緒に消えない場合です。逆に、通信環境が不安定な事務所や、大量の仕訳をまとめて打ち込む使い方では、手元で動くソフトのほうが速く感じることがあります。人数ではなく、誰かに見せる機会があるかどうかで判断してください。