マネーフォワードと弥生で迷う人が、先に潰すべき条件
マネーフォワードと弥生を並べて、機能表のチェックが多いほうに決めようとすると、たいてい決まりません。どちらも仕訳を切り、決算書を出し、銀行明細を取り込むところまでは揃っています。分かれるのは機能ではなく、誰が毎月その画面を開くのか、税理士がどちらを前提に動いているのか、インストールした画面を手放せるのか。この三点です。
機能一覧を見比べても決まらない理由
従業員が数十人までの会社で、「この機能がなくて決算が締められなかった」という事態はめったに起きません。仕訳入力、補助科目、部門、固定資産、レポート。この辺りはどちらにもあります。比較サイトの表で丸が一つ多いほうを選んでも、その丸が自分の会社で使われることはまずない。
実際に効くのは運用のほうです。月末に誰が画面を開くか。分からない仕訳が出たとき誰に聞くか。決算のときデータをどう渡すか。ここが合っていないソフトは、機能がいくら多くても数か月で入力が止まります。入力の止まった会計ソフトは、領収書を突っ込んだ箱と変わりません。
そこで、自社の条件を上から順に当てはめていきます。途中で当てはまったら、そこで決めて構いません。
税理士が入っているなら、そこから逆に決まる
記帳か決算のどちらかを税理士に任せているなら、これが最大の判断材料です。事務所には普段使っているソフトがあり、そこから外れると、データを変換したり顧問先ごとに別の画面を開いたりする手間が事務所側に出ます。その手間は、遅かれ早かれこちらに返ってきます。資料の催促が増えたり、決算の着手が後回しになったり。
弥生は会計事務所向けのパートナー制度を長く運営していて、弥生のデータを前提に動く事務所は珍しくありません。マネーフォワードも会計事務所向けの仕組みを持っています。どちらが自分の顧問先に合うかは、聞けばその場で分かります。聞き方は「うちがこちらに替えたら、そちらの作業は増えますか」と「顧問報酬は変わりますか」。この二つを同じ場で聞いてください。片方だけだと、後から金額の話が出てきます。
税理士を付けず自分で申告まで出しているなら、この軸は丸ごと消えます。その場合は次からの二点で決まります。
通帳とカードの明細を、誰がどう入れるか
会計ソフトを入れて一番変わるのは、月末に通帳をめくって金額を打ち込んでいた時間です。両社とも銀行・クレジットカード・決済サービスの明細を取り込み、過去の仕訳から勘定科目を推測する仕組みを持っています。だから「自動で入るかどうか」では差が付きません。
差が出るのは、自社が実際に使っている金融機関やサービスが対応しているかどうかです。これは会社ごとに違うので、必ず自分の口座名で各社の対応一覧を調べてください。見るのは次のあたりです。
- メインバンクと、取引のある信用金庫・地方銀行
- 法人カード、社長個人のカードで立て替えている分
- 店舗やECで使っている決済サービス、モールからの入金口座
- 給与や請求のソフトから仕訳を流したい場合、その連携先
対応していない口座が一つでも残れば、その分の手入力は残ります。全部が自動になる前提で決めて、後から「思ったほど楽にならない」となるのがよくある失敗です。逆に、現金商売で通帳にほとんど動きがない会社なら、この軸自体が効きません。その場合は入力画面の速さと、レジや販売管理からの取り込みのほうを見てください。
インストール型の画面を手放せるか
弥生には、パソコンにインストールして使うデスクトップ製品と、ブラウザで使うクラウド製品の両方があります。マネーフォワード クラウドはブラウザで使う形です。ここは思想の違いであって、優劣ではありません。
インストール型が向くのは、経理が一人で同じパソコンだけを触り、操作を体が覚えていて、外から見る必要がない会社です。反対に、社長が移動中にスマホで残高を確認したい、税理士と同じ数字を同時に見たい、拠点が二つある。こういう会社はブラウザ型のほうが摩擦が少ない。データの受け渡しのために毎回ファイルを書き出す作業が消えます。
迷いやすいのは、今デスクトップの弥生を使っていて、更新のたびに考えている会社です。操作を覚え直す負担は確実に発生します。経理担当が一人で、その人が当面替わらないなら、急いで動かす理由は薄い。ただし担当が退職する、産休に入る、後任に引き継ぐ予定があるなら、引き継ぎと同時に替えたほうがいい。覚え直しが一回で済みます。
個人事業主と法人で、見るところが変わる
個人事業主が見るのは、青色申告決算書と確定申告書までソフトで作れて、そのまま電子申告に進めるかです。両社とも個人向けの製品を法人向けとは別に用意していて、料金も画面も別系統になっています。ここを混同して法人向けを契約すると、確定申告書が出てきません。契約の入口を間違えないでください。
法人は逆の注意が要ります。会計ソフトが作るのは決算書までで、法人税の申告書は別の話です。税理士に頼むか、申告用のソフトを別に用意することになります。会計ソフトを替えれば申告まで楽になると期待していると、肩透かしを食います。
法人成りを控えている個人事業主は、先に法人側の製品も見ておいてください。個人の申告データがそのまま法人の帳簿になるわけではなく、期首残高は作り直しになります。どちらの事業者でも同じです。
料金はどこを見比べるか
月々の額だけを並べても判断を誤ります。見るのは、初年度と次年度以降で条件が変わるか、プランによって使える機能がどう変わるか、そしてサポートが料金に含まれるか。特にサポートです。経理が専任でない会社では、分からない仕訳で作業が止まる時間のほうが高くつきます。電話やチャットで聞ける契約かどうかは、先に確認する価値があります。
従業員数や取引量で変わる部分もあります。人を増やす予定があるなら、増えた後の段でいくらになるかまで見てください。プラン構成も価格も改定されるので、最新のものは記事末尾の公式ページで確認を。年額と月額で単位が違うことがあるので、同じ土俵に直してから比べます。
決めきれないときの試し方と、替える時期
二つに絞ったら、両方の試用で同じ作業をやります。先月一か月分の通帳とカード明細を入れて、決算書の一歩手前まで通してみる。これで「うちの信金がつながらない」「科目の候補が全然出ない」「どこを押せば次に進むのか分からない」が全部出ます。カタログや比較記事からは出てきません。
触るのは、実際に毎月入力する人です。社長が試して決めて、入力するのは事務の人、という決め方をすると、使いにくい画面が毎日続くことになります。入力する人が「こっちのほうが迷わない」と言ったほうを採ってください。会計ソフトは速さより、迷わないことのほうが効きます。
替える時期は期首です。期の途中で切り替えると、前半と後半でデータが二つのソフトに分かれ、決算のときにそれぞれから資料を出す羽目になります。決算月が近いなら、今のソフトで決算を終わらせてから移る。この順番だけは崩さないほうがいい。
一次ソース(公式ページ)
- マネーフォワード クラウド会計(法人向け) — 料金ページ(2026-07-27 確認)
- マネーフォワード クラウド確定申告(個人事業主向け) — 料金ページ(2026-07-27 確認)
- マネーフォワード クラウド 公式サイト
- やよいの青色申告 オンライン(個人事業主向け) — 料金ページ(2026-07-27 確認)
- 弥生会計 Next(法人向け) — 料金ページ(2026-07-27 確認)
- 弥生 公式サイト
制度・料金は改定されます。本記事は執筆時点の情報です。最新情報は必ず上記の公式ページでご確認ください。
よくある質問
税理士から弥生を指定されたが、社内ではマネーフォワードを使いたい。両方使う形はありか
会計帳簿そのものを二つに分けると、どちらが正なのか分からなくなるので勧めません。ただし、会計は税理士に合わせ、社内では請求書や経費精算だけ別の事業者のものを使う、という分け方なら成立します。その場合は、社内側で作ったデータをどういう形で会計に取り込むかを、契約前に事務所と詰めておいてください。後から「その形式では受け取れない」となるのが一番面倒です。
今のソフトから替えたら、過去の帳簿は見られなくなるか
移行は仕訳データを書き出して取り込む形が基本で、過去年度の画面の見え方や補助科目の持ち方は変わることが多いです。移行後しばらくは旧ソフトを参照用に残すか、総勘定元帳や決算書をPDFで出力して保管しておくと安全です。帳簿の保存義務は会計ソフトを替えても消えないので、手元に残す形を先に決めてから解約してください。
従業員が増えたら、会計ソフトも乗り換えることになるか
数十人規模までなら、会計ソフトそのものが手狭になる場面はあまり出てきません。先に限界が来るのは給与計算と勤怠で、人数が増えるほど締め日前後の作業が膨らみます。会計を選ぶ段階で、同じ事業者に給与や勤怠の製品があるか、他社のものと連携できるかを見ておくと、増員のたびに選び直さずに済みます。