はじめて人を雇うとき、何から決めるか
一人でやってきた事業で最初の一人を雇うとき、つまずくのは面接ではありません。募集を出す前に決めていないことが多すぎることです。決めていない状態で求人を出すと、書けない欄が出てきて手が止まります。
募集を出す前に決めること
求人票に書く欄は、そのまま「決めておくべきこと」の一覧になっています。書けない欄があるなら、それはまだ決まっていないという意味です。
任せる仕事の切り出し方
「忙しいから人を雇う」だけでは、来てもらった初日に何を頼むかが決まりません。自分がやっている作業を書き出して、渡せるものを選ぶところから始めてください。
選ぶ基準は、頻度が高いこと、手順を言葉で説明できること、間違えても取り返しがつくことの三つです。この三つを満たす作業は、教える時間がすぐに回収できます。逆に、判断が要る仕事や、取引先との関係に関わる仕事は、慣れてもらってからです。
勤務の形を先に決める
何曜日の何時から何時まで、週に何日来てもらうのか。ここが決まらないと求人が書けませんし、決めずに「応相談」とだけ書くと、応募者は自分の生活に合うかを判断できません。
忙しい時間帯に合わせて決めるのが基本ですが、教える人がいる時間帯かどうかも考えてください。自分が外に出ている時間に来てもらっても、最初のうちは仕事が進みません。慣れるまでの期間と、慣れたあとの形を分けて考えると決めやすくなります。
労働条件は採用が決まってからでは間に合わない
労働条件のうち、明示しなければならない事項が定められています。何を伝える必要があるかは、記事末尾の公式ページで確認してください。
これを採用が決まってから用意しようとすると、初日までの短い期間で作ることになります。あわてて作ると抜けが出ますし、抜けが出たまま働き始めると、あとで食い違いが起きたときに双方が困ります。募集を出す前に一度作っておけば、次に雇うときも使えます。
就業規則をいつ作るか
作成と届出の義務が生じる人数の基準があります。それに届かない規模なら義務はありませんが、休みの取り方、残業をどう扱うか、遅刻や欠勤の連絡の仕方といったことは、決めておかないと毎回その場で判断することになります。
その場で判断すると、人によって扱いが変わります。二人目を雇ったときに「前の人はこうだった」という話が必ず出ます。厚生労働省がモデルとなる規則を公開しているので、それを土台に自社の形に合わせてください。ゼロから書く必要はありません。
保険と届出は雇う前に把握しておく
人を雇うと、労働保険や社会保険の手続きが発生します。勤務時間や日数によって、どの保険の対象になるかが変わります。募集の段階で勤務の形を決めておくべき理由の一つがこれです。
手続きの種類と期限は複数あり、自分ですべてを調べると時間がかかります。顧問の税理士がいるなら、社会保険労務士を紹介してもらえることがあります。最初の一人のときだけ相談して、二人目からは自分でやるという進め方でも構いません。
入社してからの最初の一週間を決めておく
採用が決まると安心してしまいますが、初日に何をしてもらうかを決めていない会社は多いはずです。決まっていないと、来てもらった人は手持ち無沙汰になります。この最初の印象は、そのあとかなり長く残ります。
準備するのは大げさなものでなくて構いません。初日にやってもらう作業を一つ、二日目以降に覚えてもらう作業を二つか三つ。それだけ書き出しておけば、当日に考えずに済みます。あわせて、道具や作業場所、必要なら鍵や連絡先も先に用意してください。
教える時間も確保しておいてください。忙しい日に来てもらって、自分が動き回ったまま放置すると、辞める理由になります。最初の数日は自分の作業量を減らす前提で日程を組んでください。
雇う以外の選択肢を一度考える
作業量が一時的に増えているだけなら、外注で足りることがあります。人を雇うと、忙しくない月にも支払いが発生し、簡単には戻せません。
判断の材料は、その仕事が毎月あるかどうかです。毎月あって、しかも自分がやると他の仕事が回らないなら、雇う理由があります。季節によって波が大きいなら、まず外注や短期の形で試して、続くと分かってから雇う形もあります。順番を間違えると、雇った側も雇われた側も苦しくなります。
二人目のときに楽になる形で残す
最初の一人を雇うときにやった作業は、記録しておけば二人目でそのまま使えます。労働条件の書面、手続きの一覧、初日に説明したこと。頭の中に置いておくと、二人目のときにまた同じ時間がかかります。
とくに、手続きの種類と提出先は忘れます。どこに何を出したかを一枚にまとめておいてください。次に雇うときも、辞める人が出たときにも使います。
辞めるときのことも先に考えておく
雇う話をしているときに考えたくないことですが、辞める場面は必ず来ます。そのときに必要な手続きと、返してもらうもの、引き継いでもらうことを決めておくと、慌てずに済みます。
とくに、鍵や取引先の連絡先、業務で使っていた道具の扱いは、決めていないと言い出しにくくなります。入社のときに「返却するもの」として一覧にしておけば、辞めるときの話がしやすくなります。これは疑っているからではなく、双方が困らないための準備です。
払う金額をどう決めるか
時給か月給かは、勤務の形で決まります。曜日や時間が動くなら時給、決まった形で毎月来てもらうなら月給が素直です。迷ったら、最初は時給で始めて、形が固まってから見直す進め方でも構いません。
金額の決め方で見るのは二つです。一つは地域の同じ職種の求人がいくらで出ているか。もう一つは、その人に任せる作業を自分がやった場合に、その時間で他に何ができるかです。安く抑えることを目的にすると、来てもらえないか、来てもすぐ辞めます。地域別の最低賃金は毎年見直されるので、記事末尾の公式ページで現在の水準を確認してください。
一次ソース(公式ページ)
- e-Gov法令検索 — 最低賃金法
- 厚生労働省 — パートタイム・有期雇用労働法
- e-Gov法令検索 — 労働基準法
- 厚生労働省 — ハローワークインターネットサービス
- 厚生労働省 — 地域別最低賃金の全国一覧
- e-Gov法令検索 — 職業安定法
- 厚生労働省 — モデル就業規則
制度・料金は改定されます。本記事は執筆時点の情報です。最新情報は必ず上記の公式ページでご確認ください。
よくある質問
労働条件は口頭で伝えるだけでは足りませんか
書面などで明示しなければならない事項が定められています。何を書く必要があるかは記事末尾の公式ページで確認してください。あとで食い違ったときに、書面がないと双方が困ります。
従業員が一人でも就業規則は必要ですか
作成と届出の義務が生じる人数の基準があります。義務がない規模でも、休みの決め方や残業の扱いを文書にしておくと、判断がぶれません。モデルとなる規則が公開されています。
パートやアルバイトなら手続きは簡単ですか
契約の形が違っても、労働条件を明示する必要はあります。勤務時間や日数によって保険の扱いが変わるので、募集を出す前に条件を確定させてください。