税理士に渡す資料が毎年遅れる会社の直し方
申告期限が近づくと税理士から催促の連絡が来る。通帳、領収書を放り込んだ袋、請求書の控え。集め始めると必ずどこかが欠けていて、銀行に記帳しに行ったり取引先に再発行を頼んだりで数日が消える。これは性格やだらしなさの問題ではなく、記録を置く場所と締める日が決まっていないから毎年同じ形で起きる。順番に潰せば来年は起きない。
なぜ毎年、同じ時期に同じ遅れ方をするのか
遅れる会社にはひとつ共通点がある。経理が「決算のときにやる作業」としてまとめて置かれていることだ。売上の入金もカードの引き落としも毎月起きているのに、それを記録する行為だけが一年分うしろにずれる。ずれた分の作業量は減らない。むしろ増える。半年前に引き落とされた一件の支払いが何だったのか、通帳の摘要だけでは思い出せず、そこで手が止まるからだ。
止まった項目がどうなるかというと、税理士は内容不明の入出金を経費にできない。事業主貸や仮払に寄せて処理するしかなく、本来落ちるはずだった支出が落ちないまま申告される。これは税理士が手を抜いているのではなく、根拠のないものを経費にすればあとで説明できなくなるからだ。資料を遅く渡すほど、こちらの取り分が静かに削られていく。
もうひとつ見落とされがちなのが、税理士側の作業時間だ。資料が揃ってから申告書ができるまでには、必ず確認の往復がある。この入金は何か、この支払いは誰宛か。締切ぎりぎりに渡すと、その質問に答える時間がこちらにも先方にもない。結果として、聞かずに処理できる形に丸められる。
遅れの正体はどこにあるか
ひとくちに「資料が出せない」と言っても、詰まっている場所は三つに分かれる。そもそも記録していないのか、記録はあるが探せないのか、判断がつかなくて手が止まっているのか。この三つは対処が全く違うので、混ぜて考えると何から手を付けるか決まらない。
記録していない場合は、通帳やカード明細という一次データは銀行側に残っている。だから復元はできる。時間はかかるが必ず終わる。探せない場合は、紙とデータが机の上、鞄の中、メールの受信箱、通販サイトのマイページに散っている状態で、これは置き場所を一箇所に決めるだけで来月から消える。厄介なのは三つ目だ。
手が止まるのは、自宅兼事務所の家賃をどこまで按分するか、社長個人のカードで払った備品をどう処理するか、あの飲食代は交際費か会議費か、といった判断が必要な場面。自分で決めきれないから後回しにし、後回しにしたまま袋に戻される。ここは一度税理士に聞いて、自社の答えを紙に書いて残す。同じ迷いを毎年繰り返すのをやめるだけで、作業は目に見えて軽くなる。
まず税理士に聞く、何をいつまでに
最初の一手はソフト選びでも入力でもない。今の税理士に、資料の渡し方と着手したい時期を確認することだ。事務所によって進め方はかなり違う。毎月まとめて受け取りたいところもあれば、年に一度で構わないところもある。クラウドで会計データを共有できる事務所もあれば、紙で受け取って自所のソフトに入れ直しているところもある。こちらが良かれと思ってやった作業が、先方では使えない形だったという行き違いが実際に起きる。
聞くのは次のあたりで足りる。
- 決算・申告の作業に、いつ頃から着手したいか
- 資料はデータで送っていいか、紙で渡す必要があるものはどれか
- 会計ソフトのデータを共有できるか、できるなら何を使っているか
- こちらで入力する範囲と、事務所側でやる範囲の線引き
記帳代行を頼んでいる会社でも、原資料を渡す頻度を年一から月次に変えるだけで詰まりが消えることがある。頻度を変えると料金体系が変わる場合もあるので、そこは事務所に直接確認してほしい。
会計ソフトはどこで効くのか
会計ソフトを入れれば遅れが自動で解消するわけではない。効くのは、探す時間と思い出す時間だ。銀行口座、クレジットカード、決済サービスを連携しておくと、明細が日付と摘要つきで勝手に取り込まれる。これで「記録していない」という状態がまず消える。半年前の引き落としでも、相手先の名前が残っているので何の支払いか追える。ここが一番大きい。
逆に、ソフトが効かないところもはっきりしている。現金で払った経費と、紙でやり取りする書類だ。誰かが撮るか入力するかしないと、いつまでも入らない。だからソフトを入れると同時に、現金払いを減らして事業用のカードや口座に寄せるほうが早い。社長の財布から立て替える運用を続ける限り、レシートを集める仕事は残る。
もう一点、税理士事務所と同じソフトを共有できるかは確認する価値がある。共有できれば、資料をまとめて渡すという作業そのものが消え、先方は必要なときに見に行ける。使えるソフトが決まっている事務所も多いので、乗り換えを検討しているなら先に相談したほうが手戻りがない。料金や連携できる金融機関は変わるため、最新の内容は各社の公式ページで確認してください。
紙とデータが混ざるものをどう捌くか
領収書と請求書は、紙で受け取るものとメールやサイトからダウンロードするものが混ざる。ここで注意が要るのは、メール添付やウェブからダウンロードした請求書は電子取引に当たり、データのまま保存することが求められる点だ。印刷して紙のファイルに綴じただけで済ませていると、保存要件を満たさない扱いになりうる。細かい条件は記事末尾の公式ページで確認してほしい。
実務では凝った仕組みより、置き場所とファイル名を決めるほうが続く。月ごとのフォルダを作り、日付・取引先・内容が並ぶ形で名前を揃える。それだけで、税理士から「あの支払いの請求書を」と聞かれたときに探す時間がなくなる。会計ソフトの証憑添付機能を使うなら、仕訳に紐づけて置くのが一番強い。あとから見たときに、金額と書類が最初から結びついているからだ。
紙で受け取ったものは、その日のうちにスマホで撮って所定の場所に上げる。溜めた瞬間に、月末の作業が「探す作業」に化ける。青色申告をしているなら帳簿と書類の保存自体が前提条件なので、保存が崩れることは記帳の遅れより重い。
期の途中から立て直すとき、どこから手を付けるか
今が期の真ん中でも、期首まで遡って入力してから今月に追いつこうとすると、まず挫折する。過去は量が多く、内容が思い出せず、達成感もない。順番は逆にする。今月から正しく回して出血を止め、それから過去を埋める。今月分が回り始めていれば、過去を埋めている間にまた新しい未処理が積み上がることがない。
過去分は、通帳とカード明細を軸に一気に埋める。連携すると過去の明細をある程度取り込めるソフトもあるので、対応範囲は使っているソフトのヘルプで確認する。現金の細かい支出でレシートが残っていないものは、正直、思い出せない分がどうしても出る。そこは割り切って、次からレシートを溜めない運用に切り替えるほうが得だ。過去に費やす時間には上限を決めておく。
来年また遅れないために、月末に何をするか
月末に固定の作業を一回置く。自動で取り込まれた明細の科目を確認する、未処理の紙を撮って上げる、売掛金の入金を突き合わせる。この三つが片付いていれば、決算前に集める作業はほぼ発生しない。所要時間は取引の量によるが、毎月やっていれば一度の作業は短い。溜めるから長くなるだけだ。
続かない会社に共通するのは、やる日を決めていないこと。「余裕ができたら」は来ない。予定表に日付で入れて、その日は他の予定を入れない。人がいるなら、レシートの撮影と入金確認だけでも渡す。判断が要らない作業なので任せやすい。
それでも自分の意思だけでは崩れるなら、税理士から毎月質問が来る体制にするのが手っ取り早い。月次で見てもらう契約に変えると、こちらが動かない限り先方の作業が進まないので、外から締切が入る。決算前の一週間を毎年潰すのと、月末に一回手を動かすのと、どちらが安いかという話でもある。
一次ソース(公式ページ)
制度・料金は改定されます。本記事は執筆時点の情報です。最新情報は必ず上記の公式ページでご確認ください。
よくある質問
税理士への資料提出が遅れると、こちらに実害はありますか
申告期限に間に合わない場合の不利益はもちろんですが、それ以前に、内容が確認できない入出金は経費として処理されずに終わります。税理士は根拠のない支出を勝手に経費にできないので、判断がつかないものは事業主貸や仮払で処理されます。また、直前に大量の資料が届くと節税の相談をする時間がなくなり、決算の着地を見ながら打てる手がなくなります。
期の途中から会計ソフトを使い始めても問題ありませんか
問題ありません。期首から順に入力しなければいけない決まりはなく、期首残高を入れて途中から記帳を始める形で成立します。ただし開始残高の入れ方はソフトによって手順が違い、間違えると貸借が合わなくなるので、そこだけは税理士か公式のヘルプを見ながら進めてください。
記帳代行を税理士に頼むのと、自分で入力するのはどちらが早いですか
どちらでも、原資料をこちらが月ごとに渡せるかで結果は変わりません。丸投げしても、領収書の袋を年に一度渡すやり方なら質問のやり取りで同じだけ止まります。自分で入力する時間が取れないなら、入力は任せて「毎月決まった日に資料を送る」ことだけを社内の仕事として残すのが現実的です。