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創業融資、自己資金と計画書のどこを見られるか

公開 2026-08-16 · 資金繰り・融資

創業段階の融資には、決算書がありません。過去の実績で判断できないので、審査が見るのは自己資金の中身計画の根拠、そして本人がその商売をどれだけ分かっているかの三つに絞られます。逆に言えば、この三つ以外で挽回することはできません。何を用意するかより先に、何を見られているかを知っておいたほうが早いです。

自己資金は「いくらあるか」より「どう貯めたか」

自己資金の話になると額の話ばかりになりますが、審査で効くのは貯まり方です。毎月の給与から少しずつ積み上げた履歴があれば、それは計画的に金を管理できるという実績になります。事業が始まったあと、入ってきた金を残せる人かどうかを推し量る材料がそこにしかない。だから通帳は残高だけでなく、入出金の流れごと見られます。

ここで問題になるのが、申込み直前にまとまった額が入っている通帳です。出どころを必ず聞かれます。それが贈与なのか、借入なのか、他の口座からの移動なのかで扱いが変わり、借りた金であれば自己資金ではありません。隠して説明が食い違うと、金額よりも重い減点になります。援助があったなら、誰からいくらを、贈与として受けたのか借りたのかを、そのまま言ってください。

現金で手元に置いている分は、原則として説明が難しくなります。証明する手段が無いからです。開業を考え始めた時点で、事業用に使う金は口座に入れて履歴を残しておく。これだけで、あとの説明の手間がまったく変わります。

計画書で本当に読まれているのは売上の根拠

事業計画書はどれも似た書式で出てきます。差が出るのは、売上の数字をどう積み上げたかです。総額だけ書いてある計画書は、いくら丁寧に作ってあっても中身を見ようがない。飲食なら席数と回転と客単価、美容なら席数と施術時間と稼働率、小売なら商圏と来店客数と買上率——というように、掛け算の形で分解されているかどうかを見られます。

分解されていれば、前提が現実的かを相手が検証できます。検証できる計画は、たとえ強気でも話ができる。分解されていない計画は、信じるか信じないかの話になってしまい、実績の無い相手に対して信じる理由がありません。ここが創業融資でいちばん差がつくところです。

もう一つ、支出側を薄く書かないでください。家賃、人件費、仕入れ、水道光熱、広告、そして自分の生活費。特に生活費を計画に入れていない創業計画は驚くほど多い。開業直後の数か月で足りなくなるのはたいてい生活費で、そこを見込んでいない計画は、見る側からすると最初から破綻しています。

実績の代わりになるもの

決算書が無い代わりに評価されるのが、その仕事の経験です。同じ業種で働いていた期間、担当していた役割、任されていた範囲。ここが厚いほど、計画の前提に説得力が出ます。未経験の業種で始める場合は、経験が無いことを埋める何か——共同で立ち上げる相手、先に取れている取引先、修行や研修の履歴——を出せるかどうかで話が変わります。

先に決まっている取引があるなら、それは強い材料です。契約書、発注の見込みを書いたやり取り、仮予約の記録。書面になっていなくても、相手先の名前と見込み額を整理して出せるだけで、売上の根拠が机上の計算から一歩出ます。

設備が要る商売なら、見積書を取っておいてください。何にいくら使うのかがはっきりしていない借入は、額の妥当性を判断できません。相見積もりがあれば、金額を吟味した形跡としても働きます。

準備の順番

創業融資の相談までにやること1. 事業用の口座を作り、資金を集約する(自己資金の出どころを履歴で説明できる状態にする)。2. 売上を掛け算の形に分解する(席数・客数・単価・稼働率など、検証できる前提に落とす)。3. 生活費を含めた支出を書き出す(開業直後に足りなくなるのはたいてい生活費)。4. 設備・内装の見積書を取る(資金使途の裏付け。相見積もりがあればなお良い)。5. 経験と、先に決まっている取引を整理する(決算書の代わりになる材料)。6. 公庫と地域の信用金庫の両方に声をかける(審査の期間は読めない。片方に賭けない)創業融資の相談までにやること1事業用の口座を作り、資金を集約する自己資金の出どころを履歴で説明できる状態にする2売上を掛け算の形に分解する席数・客数・単価・稼働率など、検証できる前提に落とす3生活費を含めた支出を書き出す開業直後に足りなくなるのはたいてい生活費4設備・内装の見積書を取る資金使途の裏付け。相見積もりがあればなお良い5経験と、先に決まっている取引を整理する決算書の代わりになる材料6公庫と地域の信用金庫の両方に声をかける審査の期間は読めない。片方に賭けない

この順番には理由があります。口座の集約は早いほど履歴が積み上がるので、思い立った時点で先にやる。逆に見積書は時期が近くないと取れないので後ろです。順番を逆にすると、見積書の有効期限が切れて取り直すことになります。

面談で聞かれて詰まりやすいところ

よく詰まるのは、計画どおりにいかなかったときの話です。「想定より客数が伸びなかったら、どうしますか」。ここで黙ってしまう、あるいは「頑張ります」と答えると、計画そのものの信用が落ちます。営業日を増やす、単価の構成を変える、仕入れを絞る、自分の給与を下げる——順番を決めて答えられるようにしておいてください。

もう一つは、借入額の根拠です。多めに借りておきたいという気持ちは分かりますが、使い道が説明できない分は説明できないままです。設備でいくら、開業からしばらくの運転資金でいくら、と分けて、それぞれの根拠を持ってください。運転資金の期間の考え方は資金繰り表で示します。

最後に、税金や公共料金の未納、個人の借入の返済遅れがあれば、先に整理してください。これは計画の良し悪し以前の話として効いてきます。心当たりがあるなら、申し込む前に自分で確認しておいたほうがいい。制度の対象・要件・限度・金利は年度で変わるので、必ず記事末尾の公式ページで最新のものを確認してください。

一次ソース(公式ページ)

制度・料金は改定されます。本記事は執筆時点の情報です。最新情報は必ず上記の公式ページでご確認ください。

よくある質問

自己資金が足りない分を、親族から借りて口座に入れておくのは有効ですか

逆効果になることが多いです。通帳は入出金の履歴ごと見られるので、直前にまとまった額が一度に入っていれば必ず出どころを聞かれます。借りた金であれば、それは自己資金ではなく負債です。そこで説明が食い違うと、金額の問題ではなく信用の問題になります。援助を受けたのなら、贈与なのか借入なのかをはっきりさせて、そのまま伝えてください。

会社を辞める前に相談してもいいですか

相談は在職中でも構いませんし、むしろ準備の時間が取れる分だけ有利です。退職後は生活費が自己資金を削っていくので、時間が経つほど条件は悪くなります。ただし申込みの段階で開業の時期・場所・設備の目処が立っていないと、話が具体的になりません。相談で何を揃えるべきかを聞いて、在職中に準備するという順番が現実的です。

事業計画書は自分で書かないといけませんか

書式の作成を手伝ってもらうのは構いませんが、中身は自分で説明できる状態にしてください。面談では計画書に書いていない部分を聞かれます。売上の根拠や、想定より客数が少なかったときにどうするかといった質問に、書いた本人でないと答えられません。人が作った計画書を読み上げているとすぐに分かります。