年末調整を自社でやるか、税理士に出すか
年末調整を自社でやるかどうかは、社員が何人いるかより先に、給与計算を今どこがやっているかで決まります。給与の計算を毎月自分の会社で回しているなら年調も自社で完結させたほうが早く、税理士や社会保険労務士に給与を渡しているなら年調だけ手元に戻すのは損です。判断の軸を先に決めてから、やり方を当てはめてください。
自社でやるかどうかは、給与計算の場所で決まる
年末調整は、その年に払った給与と天引きした税額を並べ、社員から集めた申告書の内容で税額を計算し直す作業です。土台になるのは月々の給与データですから、給与計算をしている場所に年調を置くのが最短になります。給与を外に出しているのに年調だけ自社でやると、一年分の支給額と社会保険料、扶養の異動を全部もらい直すところから始まります。この転記でずれると、還付額が違うという話になり、原因を探すのに何日か消えます。
逆に、給与を自社で計算していて年調だけ税理士に出す場合も、同じ理由で手間が発生します。給与データを書き出して渡し、返ってきた税額を年内最後の給与に反映し、源泉徴収票を配る。この往復の間に社員から「保険の証明書を出し忘れた」と申し出があると、もう一度往復です。どちらに寄せるかを決めるだけで、作業量は目に見えて変わります。
判断を分ける四つの条件
迷っているなら、次の順で自社の状況を当ててください。まず給与計算の場所。次に、年末に人の出入りがあるか。中途入社の人が一人いるだけで、前職の源泉徴収票を待つという不確定要素が入ります。三つ目は、住宅ローン控除の初年度や、掛け持ちで働いているパート、年の途中で扶養が増減した人がいるかどうか。四つ目は、担当できる人が社内にいるか、その人の年明けが立て込んでいないかです。
この四つのうち、給与が自社にあって出入りが少なく特殊な人もいないなら、自社完結でまず問題になりません。逆に三つ目が複数該当し、担当が社長ひとりというなら、初年度は外に出したほうが安全です。年調は間に合わなければ本人の確定申告に流れるだけで済みますが、社員に「確定申告してください」と頭を下げる回数が増えると、翌年の書類提出の協力度が落ちます。
顧問税理士に任せたほうが早い会社
すでに記帳や決算を頼んでいて、給与計算も一緒に見てもらっている会社は、年調を切り離す理由がありません。年調の結果は源泉所得税の納付額に直結し、その納付は会計の仕訳にも出てきます。同じ人が両方を見ていれば、納付額の調整も帳簿への反映も一度で終わります。
頼むときに確認しておくことは、どこまでが範囲かという線引きです。社員から申告書を集めるのは会社側、計算と源泉徴収票の作成は税理士側、市区町村へ出す給与支払報告書と税務署への法定調書はどちらか。ここを曖昧にしたまま年が明けると、誰も出していない書類が残ります。料金の考え方は人数で変わることが多いので、最新の料金は依頼先に確認してください。
給与ソフトで自社完結にする場合に要るもの
自社でやると決めたら、必要なのは年末調整の機能が入った給与ソフトです。毎月の給与を同じソフトで計算していれば、支給額と社会保険料は既に入っているので、あとは社員から集めた申告書の内容を打ち込むだけで税額が出ます。手計算で速算表を追う作業が消えるのは、ここが大きい。
選ぶときに見るのは、社員がスマホや paso で申告内容を入力して会社に送れる仕組みがあるかどうかです。紙を配って回収する方式だと、書き方の質問に一人ずつ答えることになり、記入漏れの差し戻しも発生します。入力を本人にやらせる形にすると、担当者の仕事は中身の確認に変わります。もう一つは、源泉徴収票と給与支払報告書、法定調書合計表まで作れるか。ここが作れないソフトだと、計算が終わったあとに別の作業が残ります。料金は人数や機能で分かれるので、記事末尾の公式ページや各社の料金ページで確認してください。
紙と手計算で乗り切れる境目
社員が数人で、全員が長く勤めていて扶養の動きもない。この状態なら、申告書を紙で集めて手で計算しても終わります。国税庁が配っている手引きと税額表があれば計算自体はできますし、初年度に一度自分で通してみると、どの数字がどこに影響するかが体で分かります。
ただ、手計算を続けられるのは条件が変わらないうちだけです。人が増えたり、年の途中で入社した人が出たり、控除の仕組みが変わった年に、同じ手順が通らなくなります。そのときに慌ててソフトを入れると、一年分の給与データを入力し直す作業が年末に重なります。手でやるなら、来年もこの人数と顔ぶれで行けるかを先に見てください。
詰まるのは計算ではなく書類の回収
初めて自社でやった会社が時間を取られるのは、ほぼ書類集めです。生命保険料の控除証明書のハガキを失くした、iDeCo の証明書が家にある、配偶者の見込み収入を聞かないと書けない、中途入社の人の前職の源泉徴収票が届かない。この四つで止まります。集めるものは決まっているので、依頼のときに一覧で渡してください。
- 扶養控除等(異動)申告書
- 基礎控除・配偶者控除等・所得金額調整控除の申告書
- 保険料控除申告書と、生命保険・地震保険・国民年金・iDeCo などの控除証明書
- 住宅借入金等特別控除の申告書と残高証明書(初年度は本人が確定申告)
- その年に他社を辞めて入った人の、前職の源泉徴収票
回収の期限は、年内最後の給与計算に間に合う日から逆算して決めます。締切を給与日の直前に置くと、書き直しが発生した時点で反映できません。出さない人が必ず出るので、出ない場合は控除なしで計算して本人が確定申告する、と最初に伝えておくほうがもめません。これを言わずに待っていると、担当者が個人を追いかける係になります。
年が明けてから残る仕事
税額の再計算が終わって還付や追徴を給与に反映したら終わり、ではありません。本人に源泉徴収票を渡し、社員が住んでいる市区町村へ給与支払報告書を送り、税務署へ法定調書の合計表を出します。税理士や司法書士に払った報酬があれば支払調書も付きます。市区町村への提出は人数が多いと eLTAX でまとめたほうが楽で、税務署側は e-Tax が使えます。
納付の面も見てください。年調で還付が出た分は、預かっている源泉所得税から差し引いて納めます。差し引ききれない月は翌月に繰り越す形になるので、納付書の書き方が普段と変わります。ここを普段どおりに納めてしまうと、あとで還付請求か充当の手続きが必要になり、余計な往復が生まれます。提出先と提出物の一覧は毎年少し変わるため、記事末尾の公式ページで当年分を確認してから動くのが確実です。
初年度に何を優先するか
最初の年は、全部を完璧にやろうとしないほうが結果的に早く終わります。優先するのは、税額の計算が正しいことと、源泉徴収票が全員に渡ること、そして年明けの提出物が期限内に出ること。この三つが守れていれば、社員から見て問題は起きません。
逆に初年度から手を広げないほうがいいのは、申告書の完全ペーパーレス化です。社員側の操作に慣れが要るので、紙とデータが混在して回収状況が分からなくなります。紙で集めて担当者が入力し、翌年から本人入力に切り替える。この順のほうが定着します。どのやり方を選んでも、来年の自分のために、誰から何をいつ集めたかのメモだけは残しておいてください。同じ質問を来年もう一度考えることがなくなります。
一次ソース(公式ページ)
制度・料金は改定されます。本記事は執筆時点の情報です。最新情報は必ず上記の公式ページでご確認ください。
よくある質問
中途入社した人の前職の源泉徴収票が年内に届かないときは、どうしますか
前職分の給与を合算できない状態では、その人の年末調整は完結しません。会社側は年調を行わず、本人に確定申告してもらう扱いになります。前職の会社に催促するのは本人からのほうが早いので、入社手続きの時点で「退職した会社から源泉徴収票をもらってください」と伝えておくと、この事故はかなり減ります。
社長自身の役員報酬も年末調整の対象になりますか
役員報酬は給与ですから、扶養控除等申告書を出していれば対象です。ただし給与の収入が一定額を超える人は年末調整だけでは課税関係が終わらず、別に確定申告が必要になります。不動産収入や副業がある社長も同じで、会社側の年調は済ませたうえで個人で申告する形になります。
他社と掛け持ちしているパートの人は、自社で年末調整してよいですか
扶養控除等申告書は一人が一か所にしか出せません。相手先に出している人は自社では年調せず、源泉徴収票を渡して本人の確定申告に回します。掛け持ちが多い職場では、採用時に「うちに申告書を出すか、他社に出すか」を口頭で確認しておくと、年末に慌てて聞き直す手間がなくなります。