接待で使った金を、どう区分してどう記録するか
接待で払った飲食代を、経理が交際費に入れるか会議費に入れるかで、決算の数字が変わります。ところが判断の材料になるのは領収書ではありません。誰と、何人で行ったか。これが分からないと区分ができない。そして領収書にはそれが載っていない。だから、この話は税の話である前に、その場でメモを残すかどうかという運用の話です。
まず、区分が三つあることを押さえる
飲食を伴う支出は、大きく交際費等、会議費、福利厚生費のいずれかに分かれます。交際費等は取引先などをもてなすための支出、会議費は打ち合わせに伴うもの、福利厚生費は従業員全体を対象とした行事などです。同じ店で同じ金額を使っても、目的と参加者が違えば区分が変わります。
この区分が効くのは、交際費等について法人税の計算上の扱いが決まっているからです。中小法人については特例が設けられていて、一定の枠組みの中で損金に算入できます。制度の枠組みは中小企業庁の案内で説明されているので、自社が対象になるかを含めてそこで確認してください。
中小法人の特例は、二つから選ぶ形
中小法人向けの特例は、二つの計算のうち有利なほうを選ぶ形になっています。一つは、支出した交際費等のうち一定額までを全額損金に算入するもので、その上限は800万円です。もう一つは、接待飲食費の50%を損金に算入するものです。
どちらが有利かは、交際費等の総額と、そのうち接待飲食費が占める割合で変わります。飲食中心の使い方をしている会社と、贈答や接待ゴルフのような飲食以外が多い会社とでは結論が違う。ここは自社の数字を見ないと決まらないので、顧問税理士に判定してもらう部分です。
そして重要なのは、どちらを選ぶにしても接待飲食費がいくらだったかを集計できていないと選べないということです。飲食とそれ以外を混ぜて交際費に放り込んでいると、有利なほうを選ぶ判断そのものができません。日々の入力で分けておく必要があります。
この特例には適用期限があります。令和9年3月31日までに開始した事業年度が対象とされています。期限のある制度なので、来期の計画に織り込むときは延長されているかどうかを公式ページで確認してください。
交際費等から除かれる飲食費
社外の人との飲食のうち、参加者一人当たりの金額が一定額以下のものは、交際費等から除いて扱う仕組みがあります。その基準は1人当たり10,000円以下です。ここで効いてくるのが冒頭の話で、参加者の人数が分からないと、一人当たりが計算できない。
しかも、この基準を超えた場合は、超えた分だけでなく費用の全額が交際費等に該当します。人数を一人書き漏らしただけで結果が変わることがある、ということです。だから記録は「だいたい」では足りません。
加えて、この扱いを受けるには、飲食のあった年月日、相手方の氏名や名称と関係、参加者の数、金額と店名といった事項を記録して保存しておくことが求められます。求められる記載事項は国税庁の案内で定められているので、自社の経費精算の様式がそれを満たしているかを一度照合してください。
その場で残すものを決めておく
この六つのうち、最初の二つがその場でしかできません。あとの四つは後から追いつけます。だから社長と営業に徹底してもらうのは前半だけでいい、という整理にすると運用が回ります。全部を覚えてもらおうとすると、結局どれも守られません。
経費精算アプリを使っているなら、参加者と目的の入力欄を必須にしてしまうのが早い。手書きの精算書なら、その二つの欄を様式に作ってください。欄が無ければ誰も書きません。
区分に迷ったときの考え方
迷うのは、取引先との打ち合わせを兼ねた飲食のような、境目にあるものです。会議費として扱えるものには、通常要する費用として認められる範囲という考え方があり、単なる名目の付け替えは通りません。判断の基準は国税庁の案内に説明があります。
実務としては、迷ったものを勝手に決めずに、そのまま経理に上げてください。営業担当が「これは会議費だと思います」と判断して処理すると、社内で基準がばらばらになります。判断は一箇所に集めて、顧問税理士に相談する筋道を作っておくほうが、後で説明を求められたときに一貫します。
なお、消費税の扱いや、役員個人の私的な支出との線引きは別の論点として出てきます。特に、社長が一人で使った飲食や、家族との食事が混ざっていると、区分以前の問題になります。会社の経費として通すものと個人で払うものは、金額の大小にかかわらず分けてください。
この記事の範囲
ここで扱ったのは、区分の考え方と記録の残し方までです。自社が特例の対象になるか、どちらの計算を選ぶか、個別の支出がどの区分に当たるかは、自社の数字と実態を見ないと決まりません。その判断は顧問税理士に依頼してください。
金額の基準と適用期限は制度側で定められており、税制改正で変わることがあります。この記事に出ている数字は中小企業庁の資料から転記したもので確認日を付けていますが、来期の計画に使うときは必ず記事末尾の公式ページで最新のものを確認してください。
接待の領収書は、その場で何を書いてもらえばいいのか
まず宛名です。「上様」や空欄で受け取ってしまうと、その支出が自社のものだと書面だけでは辿れません。後で経理が本人に聞き直すことになりますし、調査の場で説明が口頭になると、こちらの記録全体が甘く見られます。略称や屋号ではなく、登記している正式な名称で書いてもらってください。店側に伝えるのは会計の一言で済みます。
paragraphs_dummy0で始まる文はありません。但し書きも同じ理由で効いてきます。「お品代」とだけ書かれた紙は、それが飲食なのか手土産なのか物品なのか、書面から判別できません。区分の判定は結局その中身で決まるので、判別できない資料は判定できない資料と同じです。「飲食代」「会議室使用料」のように、実際に何に払ったかが読める文言でお願いし、品目の入ったレシートが出る店なら領収書と両方もらって一緒に保管します。
参加した人の名前と相手先、何のための席かは、店が書いてくれるものではありません。だから自分で書き足す前提で、書く場所を社内で決めておきます。領収書の余白か裏か、精算書の欄か、どれでも構いませんが揃えることです。人によって書く場所も書き方も違うと、経理は一枚ずつ解読することになり、判定が後ろ倒しになって記憶が薄れた頃に本人へ問い合わせる羽目になります。
領収書が出ない支出は、どう記録として残すのか
慶弔金や会費のように、性質上そもそも領収書が出ない支出があります。ここで何も残さないと、私的な支出との区別が一切つきません。案内状や招待状、礼状、会費の通知といった相手方から届いた紙を捨てずに保管し、出金伝票に相手先の名称、自社との関係、支出の名目を書いて添えます。紙が一枚あるかないかで、説明の重さがまるで変わります。
割り勘や立替払いも同じ扱いになります。全額の領収書は幹事の手元にあり、自分の側には支払の証跡しか残らないことがある。この場合はカードの利用明細や送金の記録を証跡にして、そこに参加者と目的を書いたメモを紐づけます。証跡だけでは何の席か分からず、メモだけでは払った事実が裏付かないので、両方を組にして初めて記録として成立します。
キャッシュレスで払って紙が出ないケースも増えています。決済アプリの利用画面や明細を精算データに紐づけて残し、電子で受け取った領収書は電子のまま保存する必要があります。印刷して紙のファイルに綴じただけで済ませていると、保存の要件を満たさない扱いになりかねません。保存の方法や対象の細かい条件は制度側で決まっているので、公式ページで確認してください。
一次ソース(公式ページ)
制度・料金は改定されます。本記事は執筆時点の情報です。最新情報は必ず上記の公式ページでご確認ください。
よくある質問
領収書さえ取っておけば、あとで経理が判断できますか
できません。領収書に載っているのは店と金額と日付だけで、判断に必要な「誰と、何人で」が載っていないからです。交際費に当たるかどうか、飲食費として除ける範囲に入るかどうかは参加者の情報で決まります。経理が後から本人に聞いて回ることになるので、その場で領収書の裏か経費精算のメモに参加者を書いてください。
社内の人だけで行った飲み会は交際費になりますか
社内の人だけの飲食は、交際費等から除かれる飲食費の扱いにはなりません。ただし、全社員を対象とした行事など一定の要件を満たすものは福利厚生費として扱われることがあります。要件は国税庁の案内で定められているので、慣例で「毎年やっているから福利厚生費」と処理せず、自社のやり方が要件に当たるかを確認してください。
中小企業の特例は自動的に適用されますか
特例には対象となる法人の要件があり、資本金の額などで判定されます。適用を受けるための申告上の手続きもあるので、自社が対象かどうかと処理の仕方は顧問税理士に確認してください。要件と適用期限は制度側で定められており、期限を過ぎれば延長の有無を確認する必要があります。記事末尾の公式ページで最新のものを見てください。