小売の販路拡大、補助金はどこを見て選ぶか
「販路拡大 補助金 小売」で検索すると、補助金の検索サイトがいくつも出てきます。開いてキーワードを入れると、今度は数十件が並ぶ。ここで止まる人がとても多い。理由ははっきりしていて、補助金の側に「小売の販路拡大」というくくりの制度がほとんどないからです。使えるかどうかは、自分の店が何をどこに売りに行くのかを一文で言えるかどうかで決まります。
「販路拡大の補助金」で検索しても絞り込めないのはなぜか
補助金は業種で切られていません。切られているのは、支払う経費の種類と、取り組みの性格です。展示会に出るための出展料、ECサイトを作る外注費、チラシやカタログの制作費、商品を作り直すための機械。制度ごとに「これは出す、これは出さない」という一覧があって、そこに自分の予定している支出が載っているかどうかが第一の関門になります。
小売の「販路拡大したい」は、たいてい複数の話が混ざっています。ネット販売を始めたい、県外の物産展に出たい、飲食店に卸したい、観光客向けに商品を作り直したい。この四つは、必要な経費も、審査で見られる点もまるで違います。混ざったまま検索するので、どの制度も半分だけ当てはまるように見えて、決められない。
公募要領をダウンロードしては閉じる、を繰り返して数週間が過ぎるのがいちばんもったいない使い方です。順序を逆にします。制度を探す前に、やることを一つに決める。
先に決めるのは「誰に、どこで、何を売るか」
たとえば、駅前で総菜と乾物を売っている店が、店内で作っている惣菜を県外の物産展と自社サイトで売る、と決めたとします。これだけ決まれば、必要な支出が具体的に並びます。出展料、商品の輸送、当日の宿泊と移動、サイトの構築、商品写真の撮影、真空パックの資材、保健所向けの表示ラベル。この状態になってはじめて、対象経費の一覧と突き合わせられます。
逆に「売上を伸ばしたい」「客数を増やしたい」のままだと、経費に落ちないだけでなく、審査でも弱くなります。販路拡大系の審査は、今までやってきたことと何が違うのかを見ます。既存の店をきれいにするだけ、既存客に同じ商品を売り続けるだけの計画は、販路の拡大として読んでもらえないことがあります。ここは制度によって幅があるので、要領の「補助対象事業」の定義を読んで、自分の計画がその文章に当てはまるかを確かめてください。
やりたいことが三つも四つもある場合、今期に着手する一つだけを選びます。全部を一枚の計画書に詰めると、何のためにいくら使うのかがぼやけて、読む側が評価できなくなります。
対象になる経費とならない経費の線引き
大きな原則として、毎月の営業で普通に出ていくお金は対象外に置かれます。商品の仕入れ、在庫、家賃、既存社員の給料、水道光熱費。補助金が支えるのは、新しい取り組みのために一時的に発生する出費です。物産展に出すための商品も、仕入れや原材料として扱われて対象外になることがあるので、要領の書きぶりを必ず確認してください。ここを勘違いしたまま計画を立てると、採択後の精算で大きく削られます。
判断が分かれやすいのは、中古品、リース契約、自社スタッフが自分で作業した分、そして海外への渡航が絡む費用です。同じ「ECサイト構築」でも、テンプレートの月額サービスに払う利用料と、制作会社に一括で払う構築費とでは扱いが違うことがあります。見積を取りに行く前に、次の点を制度側の文書で押さえておくと手戻りが減ります。
- 対象経費の一覧に、自分が払う予定の費目がそのまま載っているか
- 一つの費目に金額の上限や、全体に占める割合の制限がないか
- 相見積が必要な金額のラインと、必要な社数
- 支払方法の指定(現金払いや相殺が認められるか)
- 事業の実施期間として区切られている範囲
最後の実施期間は、小売の販路拡大でとくに効いてきます。出たい物産展の開催日が期間の外にあると、出展料は一円も対象になりません。
国から探すか、地元から探すか
小売の販路拡大で現実に使えるものは、市区町村や都道府県、商工会・商工会議所が持っている小回りの利く制度に多くあります。募集の規模は小さくても、要件が地元事業者向けに書かれているぶん当てはまりやすい。しかもこうした制度は、広報が地元の紙媒体と自治体サイトの奥のページだけということがあり、全国の検索サイトに出てこないことがあります。
国の制度は、公募の回が限られていて、書類の分量も審査の競争も別物です。今回の回に間に合わないなら、次の回を待つ前提で計画を組むことになります。待つ間に物産展のシーズンが過ぎるなら、地元の制度で先に動くほうが商売としては正しい。
探す順番としては、地元に一度足を運ぶのを先にします。商工会や商工会議所の経営指導員は、今どの制度が動いているかを把握していますし、申請書の書き方の相談にも乗ります。そのうえで、記事末尾の公式ページにある検索サイトで、所在地と取り組み内容から国と自治体の制度を横断して当たると、抜けが減ります。
公募要領を開いたら最初に見る場所
要領は分厚いですが、最初に読むのは四か所だけで足ります。誰が申請できるか(業種、規模、所在地、税の納付状況)、何に使えるか(対象経費)、いつからいつまでの支出が対象か(交付決定日と事業実施期間)、そして何を出すか(提出書類の一覧)。この四つで、候補の大半はふるいにかけられます。
見落とされやすいのは実施期間です。ほとんどの制度で、交付決定より前に発注や契約をした分は対象になりません。看板の発注を先に済ませていた、サイト制作の着手金を払っていた、というだけで丸ごと外れます。物産展の申込金も、申込のタイミングが早すぎると同じことが起きます。動きたい気持ちは分かりますが、決定の通知が来るまでは発注書にハンコを押さないでください。
提出書類の一覧は、その場でコピーして机に貼っておくと後が楽です。決算書や確定申告書の写しは手元にあるはずですが、納税証明や登記事項証明のように役所で取るものが混ざっていると、そこだけで数日かかります。
申請の前に片付けておく事務
国の制度と、最近は自治体の制度でも、電子申請が前提になっているものが増えました。そこで必要になるのがGビズIDです。取得の手続きに書類の郵送が挟まるものがあり、思ったより日数がかかります。締切の週に取りにいくと間に合いません。制度を探し始めた日に、並行して申請しておくのが安全です。手続きの流れは記事末尾の公式ページで確認してください。
見積は、なるべく早い段階で取り始めます。制作会社や什器屋に「補助金に出すので、内訳を項目ごとに分けた見積がほしい」と伝えてください。一式いくら、という書き方の見積は、対象と対象外を分けられないという理由で差し戻されることがあります。相見積が必要な金額に当たりそうなら、二社目を探す時間も要ります。
計画書に書く中身は、今の売上がどういう構成になっていて、何が足りないから伸びないのか、この取り組みで何がどう変わるのかの三点です。店頭の客層と時間帯別の売れ方くらいは、レジのデータから出せるはずです。手元の数字を使って書いたものと、一般論で書いたものは、読めばすぐ分かります。
採択された後の作業まで見て選ぶ
補助金はほぼすべて後払いです。出展料も制作費も、いったん自分の口座から出ていきます。入金は事業が終わって実績報告を出し、検査が済んだ後になるので、その間の資金をどうするかを申請前に決めておかないと、採択されたのに動けないという事態になります。
実績報告では、見積・発注・納品・請求・支払の五点がそろった書類を経費ごとに求められます。銀行振込の控え、展示会なら会場の様子が分かる写真、ECなら公開したページの画面。あとから集めようとすると、納品書だけが見つからない、といったことが必ず起きます。発注のたびに専用のファイルに放り込む運用にしてください。販路拡大の制度では、事業が終わった後も一定期間、売上の状況を報告させるものがあります。
そして、事務の手間は補助の規模とあまり比例しません。小さな制度でも、書類の作成と報告に何日かは取られます。店を回しながらそれをやるのは自分か、事務の人か。そこまで見たうえで、出すかどうかを決めます。
一次ソース(公式ページ)
制度・料金は改定されます。本記事は執筆時点の情報です。最新情報は必ず上記の公式ページでご確認ください。
よくある質問
商店街の共同事業と、自分の店単独の申請は両方出せますか
制度が別なら併願できることが多いですが、同じ経費を二つの補助金で重ねて受けることはできません。共同事業に払う分担金が自店側の対象経費として認められるかは制度ごとに違うので、申請前に事務局へ電話で聞くのが早いです。共同事業のほうが先に決まる場合、自店の計画から重複部分を外して出し直すことになります。
ネットショップの月々の利用料や広告出稿費は対象になりますか
毎月継続して発生する費用は対象外とされることが多く、対象になる場合でも補助事業の実施期間に対応する分だけに限られるのが一般的です。年間契約で先払いしていると、期間外の分を按分して除かれることがあります。契約を結ぶ前に対象経費の一覧と期間の定めを見てください。
不採択だったとき、同じ計画で次に出し直せますか
多くの制度で再申請はできます。ただし不採択の理由は個別に教えてもらえないことがほとんどなので、審査の観点として公募要領に書かれている項目を一つずつ自分で点検し直すことになります。加点の対象になる認定や計画を先に取っておくと、次の回で効きます。