固定資産税の特例|設備を発注する前に市区町村へ出す書類
設備を入れたあとで「固定資産税が安くなる制度があるらしい」と聞いて調べ始めた、という相談が毎年ある。先に結論を言うと、買ったあとでは間に合わない。この特例は、設備を契約する前に市区町村の認定を取っておくことが前提になっている。順番が逆になった時点で、その設備については打つ手がなくなる。
何の税金が、どれくらいの期間軽くなるのか
ここで軽くなるのは法人税でも所得税でもなく、償却資産にかかる固定資産税だ。機械や器具備品を持っていると、年明けに市区町村へ「うちにはこれだけの資産があります」と申告し、それに応じて課税される。あの分が下がる。金額の効き方は資産の評価額次第なので、一台の小さな機械なら年に数万円の話にしかならないこともあるし、生産ラインを一式入れ替えるなら手続きの手間を十分に回収する。
効く期間は決まっていて、永久に安いわけではない。加えて、賃上げの方針を計画に盛り込むかどうかで軽減の幅や年数が変わる仕組みになっている。ここは制度改正で動く部分なので、具体的な数字は記事末尾の公式ページと、申請先の市区町村の案内で確認してほしい。担当課に電話すれば口頭で教えてくれる。
もう一点。これは設備を持ったあとに毎年かかる税金を下げる制度であって、買うときの資金が出るわけではない。資金繰りを助けてほしいなら補助金や融資の話であって、この特例とは別に検討することになる。両方使える場面もあるが、申請の窓口も時期も別物だと考えておいた方がいい。
順番を間違えると、それだけで対象外になる
一番多い失敗はこれだ。展示会で機械を見て、その場で値引きを提示されて発注書にサインしてしまう。翌月に顧問税理士から「先端設備の計画は出しましたか」と聞かれて、そこで初めて制度を知る。もう遅い。計画の認定は設備を取得する前に受けている必要があり、契約日が認定日より前だと、その設備は計画に載せられない。
だから、設備の入れ替えを考え始めた段階でこの制度を思い出せるかどうかがすべてになる。実務的には、見積を取る作業と、市区町村の窓口に電話する作業を同じ週にやってしまうのが確実だ。見積が固まってからでは、営業担当に「今月中に決めてくれれば」と押されて、判断が急かされる。
認定までにかかる期間も読んでおきたい。窓口の混み具合と、支援機関の確認書が出るまでの時間で決まるので、余裕を見て動く。決算期末に間に合わせたいという事情がある会社ほど、ここで詰まる。
自分の市区町村で使えるかを最初に確かめる
この特例は、国が決めた枠組みの中で市区町村が実施するかどうかを判断している。実施していない自治体では、そもそも申請を受け付けてもらえない。実施していても、対象とする業種や設備の種類を絞っている場合がある。だから最初にやることは、設備を置く場所の市区町村の商工担当課に「先端設備等導入計画の申請を受け付けていますか」と聞くことだ。
このとき一緒に、申請の様式がどこにあるか、提出は窓口持参か郵送か電子か、認定までどれくらいかかるかも聞いておく。役所ごとに運用が違い、ホームページに載っていない注意書きを口頭で教えてくれることが多い。窓口の名前も担当者名も控えておく。あとで機種を変えたいといった相談が必ず出るからだ。
複数の拠点に入れるなら、拠点ごとに確認が要る。本店のある市で受け付けていても、工場のある隣町では実施していない、ということが実際に起きる。
計画書に何を書き、どこで手が止まるか
提出する計画書そのものは、補助金の事業計画書に比べればずっと軽い。会社の概要、導入する設備の内容、それによって労働生産性がどう上がるかを書く。分量よりも、数字の筋が通っているかが見られる。
手が止まるのは生産性の説明のところだ。「新しい機械を入れるので効率が上がります」では通らない。今その工程に何人が何時間かかっていて、設備を入れたあと何時間になるのか、その根拠は何か。ここを埋めるには、現場に一度聞きに行く必要がある。社長が机の上だけで書こうとすると数字が作り話になり、支援機関の確認の段階で指摘されて戻ってくる。
対象になる設備の種類にも決まりがある。新品であることが基本で、中古は外れる。機械装置のほかに測定・検査の工具、器具備品、建物附属設備なども入りうるが、建物と一体になっているものの扱いには線引きがある。カタログと見積書を手元に置いて、窓口か支援機関に「これは対象になりますか」と現物で確認するのが早い。要件の細部は改正で動くため、記事末尾の公式ページで最新を見てほしい。
支援機関の確認書は誰に頼むか
計画には、認定経営革新等支援機関の事前確認が要る。顧問税理士が支援機関に登録していれば、そこに頼むのが一番早い。登録していなければ、取引のある金融機関か、地元の商工会・商工会議所に相談する。誰でもいいわけではなく、登録された機関でないと確認書として通らない。
頼むときは、計画の下書きと設備の見積を先に渡す。何もない状態で「確認書をください」と言っても、相手は書きようがない。それと、いつまでに必要かを最初に伝える。支援機関側も決算期には手が回らないので、こちらの締め切りを言っておかないと後回しにされる。
費用がかかるかどうかは相手による。顧問契約の範囲で対応してくれるところもあれば、別途の作業として見積が出るところもある。ここは事前に聞いておかないと、あとで気まずくなる。
認定が下りたあと、税額に反映されるまでに何をするか
認定書が届いたら、そこで初めて発注・契約に進む。認定日より前の契約書があると使えないので、日付の管理は経理任せにせず社長が見た方がいい。納品書と請求書は、あとで申告のときに突き合わせるので、その設備の分だけまとめて保管しておく。
実際に税額が下がるのは、年明けに市区町村へ出す償却資産の申告からだ。ここで特例を適用する旨を記載し、認定書の写しなど求められた書類を添える。認定を取っただけでは自動的に安くはならない。申告のときに何も言わなければ普通に課税される。認定書をファイルにしまって忘れる会社が実際にあるので、経理担当や税理士に「この設備は特例対象」と申し送りしておく。
添付書類は市区町村によって少し違う。申告の時期になってから慌てないよう、認定を受けた時点で窓口に「申告のときに何を付ければいいですか」と聞いておくと、翌年の手間が減る。
従業員数十人以下の会社が現実に詰まるところ
規模が小さい会社でこの制度が流れる理由は、たいてい制度の中身ではなく段取りだ。社長が営業も現場も見ていて、役所に電話する十分が取れない。支援機関に渡す資料を作る人がいない。そうしているうちに設備の納期が迫って、先に契約してしまう。
対策は単純で、設備の話が出た日に、次の三つだけを別々の人に振ってしまうことだ。順番に片付けようとするから止まる。
- 市区町村の窓口に、受付の可否と様式と所要期間を電話で確認する
- 顧問税理士に、支援機関の登録があるか、確認書を出してもらえるかを聞く
- 設備業者に、対象になりそうな型番かどうかと、契約日を待てるかを伝える
それと、使えるかどうか微妙な設備のために計画全体を遅らせない。対象が確実なものだけで先に認定を取り、あとから追加する方が、結果的に早く済むことが多い。会社の規模の要件(資本金や常時使用する従業員数の上限)もあるが、この記事の読者層ならまず問題にならない。念のため、要件と最新の様式は記事末尾の公式ページで確かめてほしい。
一次ソース(公式ページ)
制度・料金は改定されます。本記事は執筆時点の情報です。最新情報は必ず上記の公式ページでご確認ください。
よくある質問
リースで入れる設備でも特例は使えますか
所有権が移らないタイプのリースだと、償却資産の納税義務者はリース会社になります。この場合、軽減された分がリース料に反映される形で効いてきます。申請の際にリース会社が出す見積書などが必要になるので、契約前に「この特例に対応した見積を出せるか」をリース会社の担当者に直接聞いてください。営業担当が制度を知らないこともあり、確認に時間がかかります。
認定を受けたあとに機種や台数を変えたくなったらどうなりますか
認定された計画の内容を変えるには変更の手続きが要ります。窓口によって扱いが違うので、変更が見えた時点で担当課に電話するのが早いです。なお、機種変更で契約が遅れること自体は問題ありません。困るのは逆で、迷った末に先に契約してしまうことです。
工場と事務所が別の市町村にある場合、どこに申請しますか
設備を置く場所の市区町村が窓口になります。会社の本店所在地ではありません。二か所に設備を入れるなら、それぞれの市区町村に申請することになり、様式も受付の流れも別々です。片方だけ制度を実施していないというケースもあるので、両方に確認してください。