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フリーランスに発注する側になったとき、何が要るか

公開 2026-08-16 · 経営の実務

外注先が個人事業主やひとりの会社である、という中小企業は珍しくありません。この発注の仕方には、フリーランス・事業者間取引適正化等法によるルールがあります。対象になるかどうかは会社の規模ではなく、従業員を使っているかどうかで決まります。従業員がいれば、小さな会社でも発注側としての義務が生じます。まず自社がどちら側なのかを確かめてください。

誰と誰の取引の話なのか

法律が想定しているのは、受ける側が一人で仕事をしている場合です。個人であって従業員を使っていない人、あるいは法人であっても代表者以外に役員がおらず従業員も使っていない場合が、これに当たります。ここで大事なのは、法人化しているかどうかは関係ないということです。相手が株式会社でも、実態が一人なら対象になります。

発注する側は、業務委託をする事業者のうち、従業員を使っている個人か、役員が複数いるか従業員を使っている法人です。従業員が一人でもいれば、こちら側に立ちます。売上や資本金の大小は関係ありません。「うちは小さいから下請法のような話とは無縁」という感覚のままだと、対象なのに気づいていない状態になります。

まずやることは、外注先の一覧を作って、それぞれが一人でやっているのかを確認することです。名刺やウェブサイトだけでは分からないので、継続的に頼んでいる相手には直接確かめてもいい。ここが分からないと、どの取引に注意が要るのかが決まりません。

発注時に明示するもの

業務を委託したときは、取引の条件を書面または電磁的方法で示すことが求められます。メールやチャットでも構いません。何を、いつまでに、いくらで、どういう条件で、という基本の項目です。項目の詳細は法律と関係省庁の資料で定められているので、そこを一度読んで、自社の発注書の様式に落としてください。

ここは義務の話であると同時に、実務上も効きます。金額と納期と成果物の範囲を最初に文字にしていない発注は、あとで必ず揉めます。「そこまでやると思っていた」「そこは聞いていない」という食い違いは、相手が悪いのではなく、決めていないから起きます。雛形を一つ作って毎回それを送る運用にするのが、結局いちばん手間が少ない。

支払いの期日を先に直す

報酬の支払期日についても定めがあります。成果物を受け取った日を起点として、できる限り短い期間内に支払期日を定めなければならない、という形です。上限となる日数は法律に定められているので、自社の支払サイトがそれを超えていないかを確認してください。

ここで詰まる会社が多いのは、支払サイトが取引先ごとにばらばらで、しかも慣行で決まっているからです。「うちは翌々月末払い」という一律の運用をしている場合、外注先が対象になるなら見直しが要ります。経理の締め日と支払日をどう組み替えるかは、資金繰りにも影響するので、早めに手を付けたほうがいい。

あわせて、報酬の減額や、受け取ったものの受領拒否、返品、買いたたきといった行為は禁じられています。発注後に「予算が減ったので」と金額を下げる、納品後に理由をつけて受け取らない、といった対応は、慣れている会社ほど無意識にやっていることがあります。禁止される行為の範囲は条文で定められているので、そこを確認してください。

就業環境についての義務もある

取引条件だけでなく、募集情報を正確に示すこと、育児や介護との両立への配慮、ハラスメントに関する相談体制の整備といった項目も定められています。一定の期間以上継続する業務委託については、中途解除や不更新の予告についての定めもあります。

ハラスメントの相談体制は、従業員向けに整えているものを外注先まで含める形にするのが現実的です。窓口を分けて作るのではなく、既にある窓口が外注先からの相談も受ける、と決めて周知する。小さい会社ほど、この一手で足ります。

自社が対象かを確かめる

発注側としての義務が生じるか自社に従業員がいるか(法人なら役員が複数いるか) → はい: 発注側の事業者に当たる。以下の確認へ進む。外注先に、一人でやっている個人または一人の法人がいるか → はい: その取引が対象。発注書と支払期日をまず確認する。発注のたびに、条件を書面かメールで残しているか → はい: 明示の運用はできている。項目が足りているかを条文で照合する。支払期日が、受領日から定められた期間内に収まっているか → はい: 支払いの運用はできている。減額や受領拒否の慣行がないか点検する。いずれにも当てはまらない場合: 外注先の一覧を作り、一人でやっている相手を洗い出すところから始める発注側としての義務が生じるか自社に従業員がいるか(法人なら役員が複数いるか)はい発注側の事業者に当たる。以下の確認へ進むいいえ外注先に、一人でやっている個人または一人の法人がいるかはいその取引が対象。発注書と支払期日をまず確認するいいえ発注のたびに、条件を書面かメールで残しているかはい明示の運用はできている。項目が足りているかを条文で照合するいいえ支払期日が、受領日から定められた期間内に収まっているかはい支払いの運用はできている。減額や受領拒否の慣行がないか点検するいいえ外注先の一覧を作り、一人でやっている相手を洗い出すところから始める

順に見ていけば、自社がどこまでできていて何が足りないかが分かります。全部を一度に整えようとせず、発注書の雛形と支払期日の二つから手を付けてください。この二つは影響が大きく、しかも今日から直せます。

税務の扱いと混ぜないこと

外注先への支払いについては、報酬の種類によって源泉徴収が必要になる場合があります。これはこの法律とは別の、税務上の話です。原稿料やデザイン料など対象になる報酬の範囲は国税庁の案内で定められているので、自社の外注がそこに当たるかを確認してください。

もう一つ、外注として頼んでいるつもりでも、指揮命令の実態が雇用に近ければ労務の問題として扱われることがあります。働く時間や場所を細かく指定している、他の仕事を受けることを制限している、といった状態が続いているなら、契約の形と実態が合っているかを見直したほうがいい。ここは判断が難しいので、社会保険労務士に相談してください。

義務の具体的な内容、対象となる期間の要件、例外の扱いは法律と関係省庁の資料に定められています。ここに書いたのは自社が対象かどうかを確かめるまでの整理なので、実際の運用は記事末尾の公式ページで最新のものを確認してください。

一次ソース(公式ページ)

制度・料金は改定されます。本記事は執筆時点の情報です。最新情報は必ず上記の公式ページでご確認ください。

よくある質問

一人社長の会社に外注する場合も対象になりますか

相手が法人であっても、代表者以外に役員がおらず従業員も使っていないなら、この法律でいうフリーランス(特定受託事業者)に当たります。個人か法人かではなく、他に役員や従業員がいるかどうかで判断します。屋号で請求書が来ていても、実態が一人であれば対象です。相手が法人だから関係ない、という整理は誤りです。

口頭で頼んで、あとからメールで確認するのでは足りませんか

取引条件は書面か電磁的方法で明示することが求められています。メールやチャットでも構いませんが、口頭で頼んだまま何も残さないのは避けてください。実務上も、金額や納期の認識違いはあとで必ず揉めます。発注のたびに同じ様式で送れるよう、雛形を一つ作ってしまうのが結局いちばん手間がかかりません。

継続的に頼んでいるフリーランスとの契約を終わりにするとき、注意はありますか

一定期間以上続いている業務委託を中途解除したり更新しなかったりする場合には、あらかじめ予告することが求められています。期間の要件や例外は法律と関係省庁の資料で定められているので、切る判断をする前に必ず条文と公式の解説を確認してください。急に打ち切って揉めるのは、金銭以上に評判の面で損をします。