勤怠管理システム 5人以下の会社はどこで選ぶか
従業員が5人以下だと、勤怠管理システムの機能比較表はほとんど役に立ちません。欄の八割は使わない機能で、残り二割が自社に合っているかどうかで決まるからです。先に決めるのは製品名ではなく、誰がどこで打刻するか、集計したものをどこへ渡すか、その二つです。ここが決まれば候補は自然に二、三本に絞れます。
機能表を見る前に、打刻の場所を決める
少人数の会社で勤怠の運用が壊れるのは、打刻の手段が現場と合っていないときです。全員が同じ事務所や店舗に出勤して、だいたい同じ時間に始業するなら、入口に置いた共有端末で打刻するのが一番手間がかかりません。一人ずつスマホを開かせると、朝の慌ただしい時間に打刻忘れが出て、月末に「この日は何時でしたか」と聞いて回る羽目になります。
逆に、現場へ直行して直帰する働き方が混じっているなら、共有端末は最初から選べません。事務所に寄るためだけに移動させれば、その移動時間が労働時間になります。スマホ打刻にするなら、位置情報をどこまで記録するか、私物の端末を使わせるのか、通信費をどうするかを決めてから入れてください。これを決めずに配ると、導入の翌週に従業員から質問が来て止まります。
5人以下で本当に要る条件はどれか
必要なのは三つだけです。始業・終業の時刻が本人の記憶ではなく記録として残ること、残業と休日労働が自動で集計されること、その集計を給与計算に渡せる形で出せることです。逆に言うと、ワークフローの多段階承認や部署別の集計は、5人の会社では使い道がありません。社長が全員の勤怠を一画面で見られれば足ります。
見落とされやすいのが、締め日の設定と打刻の修正です。給与の締めが月末ではない会社は珍しくないのに、締め日を自由に変えられない製品もあります。打刻を直したときに「誰がいつ直したか」が残るかどうかも確認してください。残らないと、後から時間外の計算を疑われたときに説明する材料がなくなります。
- 打刻の手段(共有端末・スマホ・ブラウザ)を複数使えるか
- 締め日を自社の給与締めに合わせられるか
- 打刻の修正履歴が残るか
- 給与計算ソフトへ出力または連携できるか
- 有給の残日数を管理できるか
法律の側から外せないのはどこか
使用者には労働時間を適正に把握する義務があり、厚生労働省のガイドラインでは、タイムカードやICカード、パソコンの使用記録といった客観的な記録を原則としています。自己申告で済ませられるのは例外的な場合で、そのときも実態と合っているかを確認する手順が要ります。紙に手書きで「9:00〜18:00」と毎日同じ数字を並べているなら、それは客観的な記録として弱いと思ってください。
もう一つ、賃金台帳には労働日数と労働時間数、時間外や深夜、休日労働の時間数を書く必要があります。勤怠システムを入れる目的の半分はここです。集計が給与計算の根拠として使える形で残らないなら、システムを入れても紙の集計がなくなりません。細かい要件は記事末尾の公式ページで確認できます。
選択肢を当てはめる — 打刻機を置くか、スマホで済ませるか
ICカードや指紋で打刻する専用端末は、全員が同じ場所に出入りする会社に向きます。端末を一台置けば人数が増えても運用は変わらず、スマホを持たないパートの方がいても困りません。ただし端末の購入か月額の負担が別にかかること、設置場所に電源と通信が要ることは先に確かめてください。レジと一体になった製品を使っている小売や飲食なら、レジ側の打刻機能で足りることもあります。
スマホ打刻は、現場が分散している会社では事実上これしかありません。位置情報を一緒に記録できる製品が多く、直行直帰の時刻を後から聞き回る作業がなくなります。一方で、従業員からすると勤務中ずっと位置を見られていると感じやすいので、何を記録して何を見ないのかを口頭で説明しておかないと反発が出ます。全員がパソコンの前で仕事を始めるオフィス業務なら、ブラウザから打刻するだけで十分で、端末もアプリも要りません。
少人数だと料金はどこで効いてくるか
人数課金の製品でも最低利用料が設定されていることが多く、5人だと最低ラインに張り付きます。つまり一人あたり単価の比較はあまり意味がなく、月々いくら払うかの総額で見たほうが実態に合います。人数が増えたときにどこで段が変わるかも、入れる前に見ておくと後で慌てません。
もう一つは追加料金です。給与ソフトとの連携、シフト作成、申請の承認といった機能が基本料金に含まれるのか、別建てなのかは製品ごとに違います。初期費用や打刻端末の代金が別にかかる場合もあります。最新の料金は各社の公式ページで確認してください。無料で使えるプランがある製品もありますが、人数や保存できる期間に制限があるので、制限に当たったときに何が起きるかまで読んでから決めたほうがいい。
入れる前に決めておく運用
システムより先に決めるのは、締め日、打刻漏れが出たときに誰が直すか、修正を誰が承認するかの三点です。5人の会社だと社長が全部やることになりがちですが、社長が外出がちだと承認が溜まり、給与計算の前日に半月分をまとめて直す作業が発生します。そうなるとシステムを入れた意味が薄れます。
休憩の扱いも先に決めてください。自動で一定時間を差し引く設定にするのか、本人に打刻させるのか。店が忙しくて休憩に入れなかった日が出たときにどう申告させるかまで決めておかないと、記録と実態がずれます。残業を事前申請制にするなら、その運用もシステムの設定と合わせて始めたほうが、後から変えるより揉めません。
続かない会社は、どこでやめるか
よくあるのは、紙のタイムカードを捨てられずに両方残し、どちらが正なのか分からなくなるパターンです。移行の一巡だけ併走するのは構いませんが、期限を切らないと半年でも一年でも紙が残ります。もう一つは、将来を見込んで機能の多い製品を入れてしまい、設定の途中で止まる場合。5人の会社に必要な設定が終わるのは数日の作業量であるべきで、それを超えるなら候補を間違えています。
将来の乗り換えも頭に入れておいてください。過去の打刻データを他社へそのまま持っていける仕組みは基本的になく、出力したファイルを別に保管することになります。だからこそ、導入時に「出力できる形式」を見ておく価値があります。ここは会社によって必要な期間が変わるので、給与計算の根拠として何年分を手元に残すか、顧問税理士がいるなら一度聞いておくと判断が早い。
一次ソース(公式ページ)
制度・料金は改定されます。本記事は執筆時点の情報です。最新情報は必ず上記の公式ページでご確認ください。
よくある質問
従業員5人以下で就業規則もありませんが、それでも勤怠の記録は要りますか
就業規則の作成義務は常時使用する労働者の人数で変わりますが、労働時間を把握して記録する義務は人数に関係なく使用者にあります。賃金台帳にも労働日数や労働時間数、時間外労働の時間数を書く必要があるので、給与計算の元になる記録はどのみち要ります。就業規則がない会社ほど、始業・終業や休憩の扱いが口約束になりがちなので、システムを入れるときに文章で決めておくと後の揉め事が減ります。
役員と家族だけの会社でも勤怠管理システムは必要ですか
役員本人は労働者ではないため労働時間の把握対象から外れますが、家族であっても実態が労働者なら対象になります。判断は肩書きではなく、指揮命令を受けて決まった時間に働いているかどうかで決まります。迷う場合は、労働保険や社会保険でその人をどう扱っているかを手がかりにしてください。
今あるタイムカード機を残したまま、システムを並行で使ってもいいですか
移行の一巡だけ併走するのは現実的ですが、長く続けると二つの記録がずれたときにどちらが正なのか説明できなくなります。併走するなら最初から「どちらを給与計算の根拠にするか」を決め、期限を切ってください。打刻機を資産として買っている場合でも、使わない月から保守契約を止められるか先に確認しておくと無駄が出ません。