建設業の業務システム導入|補助金の対象はどこまでか
工事台帳をExcelで作り、日報は紙、請求は別ソフト。この状態をまとめたくて業務システムを探し始めると、たいてい販売会社から「補助金が使えますよ」と言われます。そこで確かめる順番を間違えると、発注のタイミングひとつで補助の対象から外れます。建設業が引っかかりやすいところを、申請の流れに沿って並べます。
補助金を探す前に、現場のどこが詰まっているか決める
先に制度を探すと、要件に合う機能を足しただけのシステムになります。建設業で手が止まっているのは、だいたい決まった場所です。見積を作った後に実行予算を別ファイルで組み直している。材料と外注の発注書が現場ごとにバラバラで、月末に請求書が届いてはじめて原価が分かる。職長が日報を出しに事務所へ寄らないと勤怠が確定しない。この三つのどれが一番痛いかで、入れるべきシステムの種類が変わります。
痛みの順位を決めずに「全部つながるもの」を選ぶと、現場が入力しない機能まで金を払い続けることになります。補助が出るのは入れたときの費用だけで、翌年以降の利用料は自社で払います。ここを逆に考えて、月々の負担が重いまま使われていないシステムを抱えている会社をよく見ます。まず、直したい業務を一つ文章で書けるかを確かめてください。書けないなら、申請書の「導入の目的」も書けません。
そのシステムは補助の対象として登録されているか
ITの導入を支援する国の補助金は、あらかじめ登録された事業者が登録したツールだけが対象になります。つまり、どれだけ自社に合うソフトでも、登録されていなければ申請の土俵に乗りません。建設業向けの工事管理パッケージは登録されているものもありますが、地元の代理店から買う場合、その代理店自身が支援事業者として登録されていないことがあります。
営業から補助金の話が出たら、制度の名前と枠の名前、そして登録は誰の名義かを聞いてください。「うちで申請を代行します」と言われても、名義が別会社なら契約書や請求書の宛名がそろわず、実績報告で止まります。ここは口頭ではなく、登録番号やツール名をメールで出してもらうのが早い。後から「言った言わない」になると、交付決定の取り消しまで行く話です。
建設業で対象外になりやすい経費はどれか
現場にタブレットを配る前提で見積を取ると、金額の大半がハードになることがあります。端末が対象かどうかは枠によって違い、ソフトと一体のときだけ認められる場合があります。回線の契約料や毎月の通信費は、まず対象外と考えておいたほうがいい。測量機器やドローンのような現場機材は、ITの補助金ではなく設備投資側の制度で見る話になります。
もうひとつ見落とされるのが、自社専用の作り込みです。「うちの工事台帳の様式に合わせて改修してほしい」という個別開発費は、対象外になるか、別枠扱いになることがあります。既存システムの保守料や、すでに使っているソフトの継続利用料も同じです。見積書を一行ずつ見て、どれが補助対象でどれが自腹かを分けた表を自分で作ってください。販売会社の見積は補助対象かどうかで行を分けていないことが多く、採択後の報告で初めて食い違いに気づきます。
交付決定の前に動かしてよいこと、いけないこと
一番多い失敗がこれです。採択の連絡と交付決定は別で、交付決定より前に契約・発注・支払いをしたものは対象になりません。「年度内に現場を回したいから先に入れておこう」と導入を始めてしまい、全額自己負担になった会社があります。デモを見る、見積を取る、社内で比較する、ここまでは自由です。注文書にハンコを押した瞬間から危ない。
逆に、交付決定を待っている間にやっておくことはあります。現場の誰がスマホで日報を入れるのか、入力しない職長をどう扱うのか、既存の工事番号の付け方をそのまま移すのか。この決めごとは申請とは関係なく進められますし、決まっていないとシステムが来てから数か月遊ばせることになります。導入が遅れて事業期間内に支払いが終わらないと、これも対象外です。
申請の前に会社側でそろえるもの
電子申請には法人のアカウント(GビズIDプライム)が要ります。これは印鑑証明などを添えた手続きで、発行まで待ち時間があります。公募が出てから取りに行くと間に合わないことがあるので、補助金を使う気があるなら先に取っておく。社長以外が申請作業をするなら、誰が管理するかも決めておいてください。
添付書類は、直近の決算書類と納税証明が基本です。建設業の場合、決算変更届を出すときに作っている資料とは別物なので、顧問税理士に早めに声をかけておくと速い。自治体の制度を使うなら、社会保険の加入状況や、許可・経審の情報を見られることがあります。未加入の作業員がいる、社保の適用でグレーな契約が残っている、といった状態は申請以前の問題として先に整理しておくべきです。
採択された後に残る仕事
補助金は使ったら終わりではありません。実績報告で、契約書・納品書・請求書・振込の控えを揃えて出します。振込は原則として法人口座からで、社長の個人口座から立て替えると説明が面倒になります。領収書の宛名が屋号と社名で揃っていないだけで差し戻されることもある。
さらに、導入後の効果報告を求められる制度があります。売上や従業員数、労働時間といった数字を後から出す形です。残業を減らすことを目的にして申請したのに、導入前の労働時間を誰も記録していなかった、という状態だと報告のしようがありません。時間外の上限規制が建設業にも適用されている以上、どのみち勤怠は押さえる必要があります。申請の前月あたりの状態を、紙でもいいので残しておいてください。
採択されなかったとき、どう進めるか
不採択は普通に起きます。そのとき、システム導入そのものを止めるかどうかは、最初に決めた「直したい業務」の痛みの大きさで決めます。月末の原価集計に毎回数日かかっているなら、補助を待つ間の数か月分の手間のほうが高くつくこともある。補助金が出る前提でしか回らない計画なら、そもそも規模が大きすぎます。
再挑戦するなら、同じ内容で次の回に出す前に、不採択の理由として思い当たるところを潰します。目的が「効率化」のような言葉だけで、どの作業が何時間減るのかが書かれていない申請書は弱い。並行して、自治体の制度も見てください。国の制度と自治体の制度は対象経費も申請時期も別で、同じ経費に二重で受けることはできませんが、国で落ちたものを自治体側で拾えることはあります。探し方は記事末尾の公式ページからたどれます。
一次ソース(公式ページ)
制度・料金は改定されます。本記事は執筆時点の情報です。最新情報は必ず上記の公式ページでご確認ください。
よくある質問
建設業許可を持っていないと、補助金は申請できませんか
許可の有無そのものを条件にする制度は国の補助金では一般的ではありません。ただし自治体の制度では、許可や社会保険の加入状況を要件に入れているものがあります。実際に詰まりやすいのは許可より、納税証明や直近の決算書類が揃わないケースです。要件は制度ごとに違うので、記事末尾の公式ページや窓口で自社の状況を当てはめて確認してください。
元請から使うよう言われた施工管理システムの利用料も対象になりますか
自社が契約者として契約し、自社名義で支払うことが前提になります。元請が契約しているシステムに自社がアカウントで参加するだけだと、支払いの実態がないため対象になりません。元請指定のものを自社契約に切り替える場合は、そのツールが補助対象として登録されているかを先に確認してください。
現場で使うタブレットやスマホの本体代、通信費はどうなりますか
ハードは枠によって扱いが分かれ、ソフトと一体で申請する場合に限って認められることがあります。一方で回線契約や毎月の通信費は対象外とされるのが通例です。リースや分割払いも扱いが違うので、端末を何台買うか決める前に公募要領の対象経費欄を読んでおくと、後から自腹が増えません。