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交付決定の前に発注してはいけない理由

公開 2026-07-28 · 補助金・助成金

補助金でいちばん多い事故は、書類の不備でも計画の甘さでもありません。採択の連絡が来た時点で発注してしまうことです。事業そのものは問題なく進み、機械も入り、支払いも済んでいる。それでも補助金は出ません。理由は「早く動いた」からです。

採択と交付決定は別のもの

採択は「あなたの計画を審査で選びました」という通知です。交付決定は「この経費に、この額まで補助します」という決定です。この二つの間には、事務局が経費の中身を一件ずつ見る期間があります。見積の内容が対象になるか、金額の根拠が妥当か、計画と経費が対応しているか。ここで指摘が入り、経費を落とすことも珍しくありません。

だから採択の時点では、まだ何にいくら出るかが決まっていません。決まっていないものを前提に発注すれば、出ない経費を自腹で払うことになります。多くの制度が「交付決定の日より前に発生した経費は対象としない」と定めているのは、この順序を崩されると審査の意味がなくなるからです。

補助金の時間の流れ — 動いてよくなるのは4番目から1. 申請(公募期間内に事業計画と見積を出します)。2. 採択の通知(計画が選ばれた段階。まだ発注してはいけません)。3. 交付申請と交付決定(経費を一件ずつ確認され、補助の対象と額が決まります)。4. 発注・契約・支払い(ここからが対象になる期間です)。5. 実績報告(契約書・請求書・振込の記録で、日付と支払いを証明します)。6. 補助金の入金(報告の確認が終わってから振り込まれます)補助金の時間の流れ — 動いてよくなるのは4番目から1申請公募期間内に事業計画と見積を出します2採択の通知計画が選ばれた段階。まだ発注してはいけません3交付申請と交付決定経費を一件ずつ確認され、補助の対象と額が決まります4発注・契約・支払いここからが対象になる期間です5実績報告契約書・請求書・振込の記録で、日付と支払いを証明します6補助金の入金報告の確認が終わってから振り込まれます

どこからが「発注」なのか

発注日は、請求書の日付でも納品日でもありません。相手に「これでお願いします」と伝えた時点です。注文書を出していなくても、メールで「この見積で進めてください」と書けば、そこが発注日として扱われます。口頭で伝えた場合も同じです。

ここを軽く見て事故になる例が多くあります。設備の納期が長いから、押さえるだけ押さえておこう。工事の職人の手が空くのが今しかないから、先に日程だけ確定させておこう。どちらも意図は分かりますが、事務局から見れば発注です。実績報告のときに契約書と請求書の日付を照合されるので、後から日付を合わせることもできません。取引先に依頼して日付を書き換えてもらうのは、それ自体が不正になります。

見積を取るところまでは問題ない

誤解されやすいのですが、交付決定の前でも見積を取ることはできます。というより、申請の時点で見積の提出を求められるのが普通なので、取らないと申請自体ができません。禁止されているのは、その先の契約と支払いです。

ですから、交付決定を待つ間にやっておくべきことははっきりしています。相見積を集める。仕様を詰める。工事なら現地を見てもらう。社内の設置場所を決めて、電源や配線の条件を確認する。ここまで進めておけば、交付決定が出たその日に発注できます。待つ期間を空白にする必要はありません。

ひとつだけ、取引先への伝え方には気をつけてください。「補助金が決まったら発注します」と最初に言っておかないと、相手はこちらが進めるつもりだと受け取ります。相手が資材を手配してしまってから断るほうが、関係を壊します。

待っていると間に合わない、と思ったとき

補助事業には実施期間の終わりが決められています。交付決定が遅れると、期間の残りが短くなり、納期の長い設備では本当に間に合わないことがあります。この焦りが、先に発注する動機になります。

ただし、間に合わないという判断を自分でしないでください。事務局に連絡すれば、実施期間の考え方や、納品が期間内に収まらない場合の扱いを教えてもらえます。制度によっては期間の延長や計画の変更が認められることもあります。連絡せずに発注して対象外になるより、確実に良い結果になります。

それでもどうしても成り立たないと分かったなら、補助金を使わずに自費で進めるという判断もあります。設備が今すぐ必要なら、それが正しいこともあります。まずいのは、補助金が出る前提で自腹の出費を計画に入れてしまうことです。

例外があるかどうかは、その制度の公募要領で確かめる

制度によっては、事前着手の届出を出して認められれば、交付決定より前の経費を対象にできる仕組みを持っています。ただしこれは、どの制度にもあるものではありません。あっても、届出が受理された日より前の分は対象外です。

確かめ方は決まっています。公募要領の中で、補助対象経費の条件が書かれている箇所を読んでください。「交付決定日以降に契約したもの」という条件と、事前着手の扱いは、そこに並んで書かれています。インターネットで見つけた他社の体験談を根拠にしないでください。制度ごとに違ううえ、公募の回によっても変わります。読むのは、自分が申請する制度の、今回の回の公募要領です。

社内でどう防ぐか

この事故は、経営者本人ではなく現場が起こすことがあります。社長が申請しているのを知らない担当者が、通常の手順で発注をかけてしまう。あるいは、採択の連絡を「決まった」と受け取った担当者が、良かれと思って前倒しする。

取引先の側から崩れることもあります。付き合いの長い業者ほど、こちらの都合を汲んで先に段取りを組んでくれます。ありがたい話ですが、補助金の案件では裏目に出ます。見積を依頼する時点で「交付決定が出るまで着手しないでほしい」と伝えておいてください。伝えていなければ、相手に落ち度はありません。

防ぎ方はひとつで、補助金を使う案件だけは発注の前に一度止める、と決めておくことです。稟議の紙でも、社内チャットの一言でも構いません。止める仕組みがないと、忙しい時期に必ず抜けます。

あわせて、交付決定の通知が届く場所を決めておいてください。電子申請の制度では、通知がシステム上に出るだけでメールが来ないことがあります。届いていることに気づかず待ち続けて、実施期間を無駄に削ってしまうのは、よくある損の形です。

入金は最後だと分かって資金を組む

順序の話をもう一段だけ広げておきます。補助金は、発注も支払いも実績報告も終わったあとに入ってきます。つまり、設備の代金は先に全額を自社で払うことになります。

ここを見落として交付決定を待たずに発注する人は、たいてい資金の見通しも立てていません。手元の資金で払いきれるのか、払いきれないなら融資でつなぐのか。つなぐつもりなら、金融機関への相談は申請と並行して始めてください。交付決定が出てから動くと、そこでまた待つことになります。金額・補助率・締切は制度ごとに違い、年度でも変わるので、この記事では書いていません。記事末尾の公式ページで、自分が申請する制度の公募要領を確認してください。

いま公募中の補助金・助成金 244 件締切までの残り日数つき。目的別・地域別にも絞れます(出典 jGrants / デジタル庁)

一次ソース(公式ページ)

制度・料金は改定されます。本記事は執筆時点の情報です。最新情報は必ず上記の公式ページでご確認ください。

よくある質問

交付決定の前に契約した分だけを補助対象から外して、残りを申請することはできますか

できないことが多いと考えてください。一つの事業として計画したものの一部が対象外になると、事業計画そのものが成り立たなくなり、計画変更の手続きが必要になります。分割して逃げられる話ではないので、事務局に相談してください。

交付決定の通知はどこに届きますか

電子申請の制度なら申請に使ったシステム上に通知が出ます。メールだけを見ていると気づかないことがあるので、採択の連絡が来たらシステムにログインする習慣にしてください。郵送の制度もあり、通知の届き方は公募要領に書かれています。

発注済みだと分かったとき、正直に申告すると不利になりますか

黙って進めるほうが不利になります。実績報告のときに契約書と請求書の日付は必ず確認されるので、隠しても見つかります。見つかった場合は交付の取消しになりますが、先に相談すれば計画変更で処理できる余地があります。