会計ソフトの選び方 — 個人事業主と法人で分かれる判断
会計ソフトの記事は「おすすめ◯選」ばかりですが、実際に迷うのは製品選びの前の段階です。自分が個人事業主なのか法人なのか、青色申告をするのか、今は何で記帳しているのか。ここが決まれば候補は自動的に絞られます。この記事では判断の順番を先に示し、そのうえで料金と乗り換えを整理します。
まず、どの条件に当てはまるかを決める
製品名から入ると比較軸が増えすぎて決まりません。次の順番で自分の条件を確定させてください。上から順に、答えが出た時点で候補が絞れます。
この順番が大事なのは、下の条件ほど「あとから変えにくい」からです。法人か個人かは選べませんし、すでに別のソフトにデータが溜まっているなら、その移行コストが製品の使い勝手の差を上回ることがよくあります。
料金は年額に揃えて比べる
料金ページの比較でつまずく原因はほぼ一つで、同じ「◯◯円/月」の表示が、月払い契約の金額と年払い契約の月額換算で混ざっていることです。大きく表示されているのは多くの場合、年払いにしたときの月額換算のほうです。
誤解を避けるため、年額の総額に揃えたものを次に示します。個人事業主向けの最も安いプランどうしの比較です。
ただし、この金額だけで決めないでください。最安プランは機能が絞られており、対応する申告の種類やサポートの範囲が製品ごとに違います。上の図は「年額に揃えるとこの程度の幅に収まる」という前提の確認であって、順位表ではありません。キャンペーン価格や初年度無償の扱いも各社で異なります。適用条件は必ず公式ページでご確認ください。
すでに他のソフトを使っている場合
乗り換えで失敗する典型は、機能を比べることに時間をかけて、移行の手順を後回しにすることです。先に手順を確認してください。引き継げるデータの範囲が分かった時点で、そもそも乗り換えるべきかどうかの判断が変わることがあります。
手順3と手順6は特に注意してください。解約するとデータの取り出しができなくなる製品があるため、「新しいソフトで問題なく回ることを確認してから解約する」という順番を崩さないことをおすすめします。
無料で試す期間の使い方
試用の期間を、画面を眺めるだけで終わらせないでください。それでは判断の材料が集まりません。自分の実際の取引を、直近の一か月ぶん入れてみるのが唯一の確かめ方です。
見るのは三つです。銀行やカードの明細が取り込めるか。取り込んだあと、自分が判断しなければならない件数がどれくらい残るか。そして、その判断の画面が自分にとって分かりやすいか。この三つ目は人によって答えが違うので、他人の評価では代われません。
期間が終わる前に、決算や申告に関わる画面も一度開いておいてください。普段は使わない機能ほど、必要になったときに困ります。使い方が分からなくても、どこにあるかを見ておくだけで違います。
途中で変えられるものと変えられないもの
プランは後から上げ下げできることが多いので、最初から高いものを選ぶ必要はありません。使ってみて足りないと分かってから上げれば十分です。
一方、事業年度や消費税の扱いといった設定は、記帳を進めてから直すと影響が広がります。ここは最初に確認してください。分からなければ、記帳を始める前に確認する。始めてから直すのとでは、手間がまったく違います。
この記事のまとめ
- 製品名から入らず、法人か個人か、青色申告をするかを先に確定させる。
- 料金は月額表示ではなく年額の総額に揃えて比べる。月払いと年払いの表示が混在しているため。
- すでに別のソフトを使っているなら、機能の比較より先に移行できるデータの範囲を確認する。
- 金額・要件は改定される。契約前に必ず公式の料金ページで確認する。
入力を減らす方法はソフトの外にもある
会計ソフトを入れても、支払いの方法がばらばらだと入力は減りません。現金で払っている支払いを口座やカードに寄せるだけで、自動で取り込める割合が大きく変わります。
事業用の口座とカードを分けることも同じです。個人の支出と混ざっていると、取り込んだ明細を一件ずつ仕分けることになります。この作業は毎月発生するので、分けた効果は毎月効いてきます。ソフトを選ぶ前にできることなので、先に手を付けてください。
記帳を溜めない仕組みにする
会計ソフトを入れても、触るのが年に一度なら、作業の重さは変わりません。一年分の明細をまとめて判断するのは、ソフトがあってもつらい作業です。
月に一度、決めた日に触ると決めてください。時間としては短くて済みます。溜めないことの利点は作業が軽いことだけではなく、記憶が新しいうちに判断できることです。半年前の支払いが何だったかは、たいてい思い出せません。
それでも決められないときは
候補を二つまで絞ったのに決まらないなら、その二つに大きな差はありません。差がないものを比べ続ける時間のほうが、選択を間違えたときの損失より大きくなります。
そういうときは、税理士に依頼する予定があるかで決めてください。予定があるなら事務所が扱っているほう。予定がないなら、試したときに手が止まらなかったほう。それでも並ぶなら、どちらでも問題は起きません。
他人の評価をどう読むか
使っている人の評価は参考になりますが、その人の事業の形が自分と同じとは限りません。取引の件数、業種、簿記の知識、税理士に頼んでいるかどうか。この条件が違えば、同じ製品でも評価は逆になります。
読むときは、評価そのものではなく理由の部分を見てください。「使いやすい」ではなく「銀行の明細が自動で入るので入力がほとんどない」まで書いてあれば、自分に当てはまるかを判断できます。理由の書かれていない評価は、材料になりません。
一次ソース(公式ページ)
- freee会計 — 個人事業主向け料金プラン(公式)
- マネーフォワード クラウド — 個人事業主/副業向け価格・料金プラン(公式)
- やよいの青色申告 オンライン — 料金プラン(公式)
- 国税庁 — 青色申告制度
制度・料金は改定されます。本記事は執筆時点の情報です。最新情報は必ず上記の公式ページでご確認ください。
よくある質問
会計ソフトは結局どれを選んでも同じですか
帳簿づけと申告書の作成という基本機能はどの製品でもできます。差が出るのは銀行・カードとの連携のしやすさ、サポートの範囲、そして今使っている環境からの移行のしやすさです。
料金は何を基準に比べればいいですか
月額の表示だけで比べないでください。同じ「◯◯円/月」でも月払い契約の金額と年払い契約の月額換算が混在しています。年額の総額に揃えて比べるのが確実です。
途中で他の会計ソフトに乗り換えられますか
できます。ただし引き継げるデータの範囲は製品の組み合わせによって違います。作業量が最も少ないのは年度の切り替わりのタイミングです。