補助金の入金までにかかる資金繰りの備え
補助金で事業が傾く、という話があります。詐欺に遭ったわけでも制度が悪いわけでもありません。補助金が後払いであることを、資金繰りの計画に落とし込んでいなかっただけです。順序さえ理解していれば避けられます。
お金の出入りの順番を、先に書き出す
補助金の流れは、支払いが先で入金が後です。設備を発注し、納品を受け、代金を全額払い、それから実績報告を出し、確認が終わってようやく振り込まれます。つまり事業の期間中ずっと、自社が全額を立て替えている状態になります。
この当たり前のことが、実際には見落とされます。採択の通知を受け取った時点で「補助が出る事業」として頭の中に入ってしまい、支出の側だけが先に現実になるからです。採択の連絡が来たら、まず紙に書き出してください。いつ、いくら出ていくのか。いつ、いくら戻ってくるのか。この二行を並べるだけで、必要な資金の量が見えます。
戻ってくる時期は、自分では決められない
出ていく時期は自分の発注のしかたで動かせますが、戻ってくる時期は動かせません。実績報告を出してから確認が終わるまでの期間は事務局の側で決まり、書類に不備があればそのぶん延びます。混み合う時期に重なることもあります。
ですから、資金の計画は「戻ってくるのが遅れても持ちこたえられるか」で組んでください。予定どおりに入ることを前提に他の支払いを組んでしまうと、少し遅れただけで連鎖します。美容室や飲食店のように毎月の固定費が読める業種では、何か月ぶんの余裕があるかを数えておくと判断しやすくなります。
金融機関への相談は、交付決定を待たない
相談を始めるのは早いほどよいと考えてください。採択の段階で、こういう事業を採択されたので立て替えの資金が要る、と伝えておけば、交付決定が出てから実行までの時間が短くなります。逆に、交付決定が出て発注できる状態になってから相談に行くと、そこでまた待つことになります。
相談のときに持っていくのは、申請した事業計画と採択の通知、そして先ほど書き出したお金の出入りの表です。何にいくら使い、いくら戻り、返済の原資は何から出るのか。ここが説明できれば話は早く進みます。返済の原資を補助金だと説明すると弱くなります。補助金は一度きりで、返済は事業の利益から続くものだからです。
制度融資や保証付きの借入も選択肢に入れる
取引のある銀行だけが選択肢ではありません。日本政策金融公庫や、信用保証協会の保証を付けた借入も検討の対象になります。設備投資に紐づく資金は、こうした仕組みの想定している用途に近いことが多くあります。
どの窓口が自社に合うかは、事業の規模、取引の履歴、担保や保証の状況で変わります。条件は制度ごとに違い改定もされるので、この記事では書いていません。記事末尾のリンクから、それぞれの公式ページで確認してください。複数を並行して相談するのは失礼にはあたりません。
補助額は満額で入ってこないことがある
もう一つ、計画に織り込んでおくべきことがあります。交付決定の段階で経費が落とされることがあり、さらに実績報告の後の確定で減ることもあります。対象外と判断された費目、根拠が足りないと見られた支出。理由はさまざまですが、申請額より少なくなるのは珍しいことではありません。
ですから、満額が入る前提で他の支出を組まないでください。少なめに見積もっておいて多く入るぶんには困りませんが、逆は困ります。どれくらい少なく見るかに正解はありませんが、交付決定の通知が届いたら、その時点の決定額で計画を引き直す習慣をつけてください。
立て替えの期間は、思っているより長い
期間を短く見積もる人が多いので、ここは分けて書きます。立て替えが始まるのは発注の代金を払った日ですが、終わるのは補助金が振り込まれた日です。そのあいだには、事業の実施期間、実績報告の作成、事務局による確認、額の確定、そして振込までの事務が入ります。
このうち自分で短くできるのは、実績報告の作成だけです。書類を事業の途中からそろえておけば、実施が終わってすぐ出せます。逆に、終わってから集め始めると、そこで一か月近く延びることがあります。取引先に再発行を頼む必要が出ればさらに延びます。立て替えの期間を短くしたいなら、手を付けるのはここです。
もう一点、複数の設備を入れる計画では、支払いの時期をずらせないかを検討してください。同じ月に全部の代金が出ていく形にすると、その月だけ資金が極端に薄くなります。納期の都合で動かせないこともありますが、動かせるなら分けたほうが安全です。
回らないと分かったときの判断
書き出してみて、どうやっても回らないと分かることがあります。そのときは、規模を落とすか、今回は見送るかです。どちらも後ろ向きな判断ではありません。
設備が今すぐ必要なら、補助金を使わずに自費で進めるという選択もあります。補助金は事業を助ける道具であって、事業の目的ではありません。無理に規模を合わせて資金繰りを傷めるくらいなら、次の公募に備えて資金を作ってから臨むほうが、結果として早く進みます。多くの制度は毎年ほぼ同じ時期に公募されます。
辞退は、早いほど傷が浅い
採択された後に辞退することはできます。事情が変わって実行できないと判断したなら、早めに事務局へ申し出てください。黙って実施しないまま期限を迎えるより、手続きを取って辞退するほうが、次に申請するときの関係にも響きません。
迷うくらいなら、事務局に電話して状況を説明してください。資金の手当てがつかないという相談は珍しいものではなく、実施期間の考え方や計画の変更で対応できる余地があるかを教えてもらえます。自分だけで抱えて、支払いの直前に動けなくなるのが一番まずい進み方です。金額・補助率・締切、そして実施期間の定めは制度ごとに違います。記事末尾の公式ページで、自分が申請する制度の公募要領を確認してください。
一次ソース(公式ページ)
制度・料金は改定されます。本記事は執筆時点の情報です。最新情報は必ず上記の公式ページでご確認ください。
よくある質問
補助金が採択されていることは、融資の審査で有利になりますか
審査の材料の一つにはなります。第三者の審査を通った計画があるという意味を持つからです。ただし補助金があるから通る、というものではありません。返済の原資は補助金ではなく事業から出るものとして見られます。
交付決定の前に融資の相談をしても意味がありますか
あります。むしろ早いほうがよいくらいです。採択の段階で相談しておけば、交付決定が出てから実行までの時間が短くなります。金融機関の側も、計画を先に知っているほうが判断しやすくなります。
補助金が減額されたら、借りた分が余ります
その場合の扱いは金融機関との取り決めによります。繰上返済ができるか、手数料がかかるかを、借りる前に確認してください。減額はよくあることなので、想定しておいて損はありません。