花屋が融資を相談するなら、最初にどこへ行くか
花屋で融資の話が出るのは、たいてい二つの場面です。店を出す前と、市場への支払いが売上より先に来て手元が薄くなったとき。どちらも相談できる窓口は複数ありますが、行く順番はほぼ決まっています。先に決めるのは窓口ではなく、何にいくら要るのかのほうです。
借りる金を、使い道で三つに分ける
窓口を選ぶ前に、必要な資金を三つに割ってください。店を出すための開業資金、冷蔵ショーケースや配送車・作業台といった設備資金、そして仕入れと家賃・人件費を回すための運転資金です。この三つを混ぜたまま相談に行くと、担当者が最初に聞く「いくら要りますか」に答えられず、その日は世間話で終わります。二度目の訪問までに一週間が飛ぶのは珍しくありません。
花屋の運転資金は、季節の山と谷で形が決まります。母の日や彼岸、卒業・入学の前は市場での仕入れが一気に膨らみ、支払いは売上が入るより先に来る。逆に谷の月は売上が落ちても家賃と人件費は変わりません。だから「年間でいくら足りない」ではなく、月ごとに並べて「どの月にどれだけ足りないか」を出します。そこまでやると、相談は借りられるかどうかの話ではなく、いつ実行するかの話になります。
店を出す前なら、日本政策金融公庫から
まだ開業していない、あるいは開業して日が浅いなら、最初は日本政策金融公庫です。民間の金融機関は決算書を見て判断する習慣が強く、実績のない相手には材料が乏しい。公庫は創業の段階を前提にした制度を持っていて、実績がない状態で話を聞く窓口になっています。支店の相談は予約制のことが多いので、思い立った日に飛び込むのではなく電話を一本入れてから行ってください。
公庫で必ず突っ込まれるのが自己資金の出どころです。通帳を遡って見られると思っておいたほうがいい。相談の直前にまとまった金が入っていれば、それが誰からどういう約束で入ったのかを説明することになります。あわせて売上の根拠も聞かれます。店前の通行量、近隣に葬儀社や式場があるか、ホテルや飲食店の装花を取れる見込みがあるか。花屋は店頭販売と法人取引で売上の作り方がまるで違うので、どちらで立てるつもりなのかをはっきりさせておくと、計画書の説得力が変わります。
すでに営業している店が最初に当たる先
何年か営業していて、日々の入金と支払いを通している信用金庫や銀行があるなら、そこの支店が最初です。通帳の動きを見られているぶん、説明の手間が少なくて済みます。花屋のように現金売上と掛売が混ざる業種では、入金のリズムを日常的に見ている相手のほうが話が通りやすい。担当者がついていないなら、窓口で「融資の相談をしたい」と伝えれば担当が出てきます。
このとき信用保証協会の保証を付けるかどうかの話が出ます。保証協会は直接の相談も受け付けていますが、申込そのものは金融機関を経由するのが通常の流れです。つまり自分で協会へ先に行く必要は、多くの場合ありません。どの金融機関とも付き合いがないなら、店の近くの信用金庫が自然な選択です。地域の商店を数多く見ているので、花屋の季節変動を一から説明しなくても通じます。
自治体の制度融資は、どこで申し込むのか
都道府県や市区町村には、金融機関と信用保証協会と組んだ制度融資があります。窓口は自治体の商工担当課か、指定された金融機関です。保証料や利子の一部を自治体が負担する仕組みを持つところもありますが、条件も手続きも自治体ごとに違うので、住んでいる地域ではなく店の所在地の自治体のページを確認してください。
注意しておきたいのは時間です。自治体のあっせんを受け、金融機関で申込み、保証協会の審査を通る。三者を順に回るぶん、公庫に直接行くより日数がかかります。母の日前の仕入れに間に合わせたいという動機で動き始めると、たいてい間に合いません。使うなら、資金が要る時期から逆算して、ひとつ前の繁忙期が終わった頃に動き出すことです。
計画書で止まっているなら商工会議所・商工会
「数字をどう組んだらいいか分からない」で止まっているなら、商工会議所や商工会の経営指導員に先に会う手があります。創業計画書や資金繰り表の書き方を一緒に見てもらえますし、そこを通して公庫のマル経融資(小規模事業者経営改善資金)につながる道もあります。これは一定期間の経営指導を受けていることが条件で、担保や保証人の扱いが通常の融資と異なります。詳しい条件は地域で運用が違うので、最寄りの会議所・商工会に直接聞いてください。
遠回りに見えますが、計画書が整った状態で公庫の面談に臨むと、聞かれることが減って話が一回で済みます。花屋の場合、指導員に説明する過程で「この月の売上はなぜこの数字なのか」を自分で言語化することになる。これが面談でそのまま効きます。
花屋だから必ず突っ込まれるところ
ひとつはロスです。仕入れた花は売れ残れば捨てることになり、仕入高がそのまま売上原価にならない。ここを見込まずに原価を置いた計画書は、花を知っている担当者なら一目で分かります。廃棄をどの程度見込んで値付けしているのか、売れ残りを花束の材料や予約品に回す工夫をしているのか、口頭でいいので答えられるようにしておいてください。
もうひとつは掛売です。葬儀社、式場、ホテル、イベント会社との取引は、納品してから入金までに間が空きます。売上が立っているのに現金がない状態はここから生まれる。取引先ごとの締めと入金のサイトを紙一枚にまとめておくと、「なぜ運転資金が要るのか」の説明がそれで終わります。逆にこれが出せないと、売上が伸びているのに借りたがる店、という見られ方をします。
行く前にそろえておくもの
最初の訪問で出せないと、その日は何も決まらずに持ち帰りになります。開業前と営業中で中身は変わりますが、手元にあるものは最初から全部持って行ったほうが早い。
- 確定申告書または決算書(直近の数期分)と、直近の試算表
- 事業用口座の通帳(記帳を済ませたもの)
- いま借りている分の一覧と返済予定表
- 月ごとの売上が分かるもの(レジの集計、売上帳など)
- 店舗の賃貸借契約書、設備なら見積書
- 資金繰り表(手書きで構いません)
資金繰り表は体裁より中身です。山の月に仕入れがどれだけ出て、谷の月にどこまで落ちるか。これが書けていれば、担当者は「いくら貸せるか」ではなく「いつ入れれば回るか」で考え始めます。制度の細かい条件や金利は時期で変わるので、記事末尾の公式ページで最新のものを確認したうえで窓口に向かってください。
一次ソース(公式ページ)
制度・料金は改定されます。本記事は執筆時点の情報です。最新情報は必ず上記の公式ページでご確認ください。
よくある質問
市場での仕入れは現金決済が中心ですが、それでも運転資金として借りられますか
仕入資金は運転資金の使い道として一般的なもので、現金決済だからという理由で外れることはありません。むしろ、支払いが日々の決済なのか月締めなのか、市場と仲卸でどう分かれているのかを説明できると話が早く進みます。買参権や取引口座の条件を聞かれることもあるので、取引先ごとの支払条件をメモにして持って行ってください。
母の日や彼岸の前だけ仕入れが膨らみます。その分だけ短期で借りることはできますか
季節資金として相談すること自体はできます。ただ、申込から実行までには書類のやりとりと審査の時間がかかり、保証協会を経由するならさらに日数が乗ります。繁忙期の直前に駆け込むと間に合わないので、前の年の山が終わった直後、記憶と数字が残っているうちに担当者と話しておくほうが現実的です。
自宅兼店舗の個人事業でも相談先は同じですか
同じです。公庫も信用金庫も個人事業主の相談を日常的に受けています。注意したいのは口座で、生活費と店の入出金が同じ通帳で混ざっていると、返済の原資がどこから出るのか読めず、説明に時間を取られます。相談を決めた時点で事業用の口座を分け、家賃や光熱費の按分の考え方も決めておいてください。