源泉徴収と納付 — 20人以下の会社の月次作業
給与から所得税を天引きして、国に納める。文章にすると一行ですが、実際には給与計算・納付書の作成・納付・記録の保管が毎月ぐるぐる回ります。人数が少ない会社ほどこの作業は社長か経理担当ひとりに集中し、忙しい月に飛ばして後で慌てることになります。ここでは、20人以下の会社が現実に回せる形に絞って、月次の流れと分かれ目を整理します。
毎月の作業を一本の線で見る
源泉徴収の作業は独立したタスクではなく、給与計算の後ろに必ずくっついてきます。給与計算で各人の所得税額が確定した瞬間に、その合計額が翌月に納める金額として決まる。つまり、給与明細を確定した時点で納付額はもう出ているわけです。ここを別作業だと思って月末に思い出すから、給与データを開き直して集計し直す無駄が生まれます。
流れとしては、支給額を固めて税額を出し、天引きして支給し、その合計を納付書に書き写し、期日までに納め、控えを残す。この五つが一本の線でつながります。途中で人が入れ替わったり、賞与を出したり、税理士に報酬を払ったりすると、その分が線に合流してくる。合流を見落とすのが、少人数の会社でいちばん多い事故です。
納付の期日は、給与を支払った月の翌月の決まった日です。土日祝にあたると後ろにずれます。日付は変わり得るので、記事末尾の公式ページで一度確認して、カレンダーに毎月の繰り返し予定として入れてしまってください。頭で覚えている限り、繁忙月に必ず飛びます。
うちは毎月納めるのか、まとめて納めるのか
給与を払う相手が常時ごく少人数にとどまっている会社は、申請して承認を受ければ、毎月ではなく半期ごとにまとめて納める形に切り替えられます。人数の基準は決まっていますが、パートやアルバイトの数え方に迷いやすいところなので、正確な要件は記事末尾の公式ページで確かめてください。
まとめ納付は月次の作業が減る一方で、半年分の税額を一度に払うことになります。売上の波が大きい業種だと、納付月に資金が薄くなって困ることがある。毎月払っていれば数万円ずつだったものが、半年分だとまとまった額になります。手間を取るか、資金繰りの平準化を取るか。ここは会社によって変わります。
もうひとつ、まとめ納付を選んでも全部がまとまるわけではありません。対象になる支払いの種類は限られていて、それ以外の報酬は今までどおり毎月納めます。「特例を出したから半年に一度でいい」と思い込んで、対象外の分を放置してしまう。この誤解が実際によく起きます。
給与計算の段階で決まってしまうもの
天引きする所得税の額は、その人が扶養控除等申告書を出しているかどうかで使う欄が変わります。出している人は本来の欄、出していない人は高めの欄で計算する。掛け持ちで働いているパートの人は、こちらに出していないことがあります。ここを間違えると、毎月少しずつ差額が積み上がり、年末調整のときにまとめて返す・追加で徴収するという嫌な場面になります。
だから、人を採用した月に申告書を必ず回収してください。入社手続きの書類一式に混ぜておけば漏れません。年が変わるタイミングでも、扶養が増えた減ったの申告を受け取り直します。子どもが就職した、配偶者が働き始めた。こうした変化は本人から言われないと分かりません。
賞与を出す月も注意が必要です。賞与の所得税は月々の給与とは別の計算方法を使うので、給与ソフトを使っていないと計算を間違えます。手計算でやっている会社は、賞与の月だけ税額の出し方が変わることを覚えておいてください。
給与以外にも源泉徴収が要る支払い
給与だけ気にしていて抜けるのが、外部への報酬です。個人に対して払うもののうち、次のようなものは支払うときに天引きが必要になります。
- 税理士・司法書士・社労士など、士業への報酬
- 個人のデザイナーやライター、カメラマンへの原稿料・デザイン料
- 講演や研修の講師を個人に頼んだときの謝金
- 個人の外交員や集金人に払う報酬
相手が法人なら原則として不要ですが、個人事業主なら必要です。請求書に「源泉所得税」の行がなくても、義務は支払う側にあります。相手が書いていないから引かなくていい、にはなりません。あとから税務署に指摘されて会社が負担することになれば、その分は相手に請求しづらい。だから、新しい外注先に払う前に、その支払いが天引きの対象かどうかを一度確認する癖をつけてください。
そして、これらの報酬は給与とは別の納付書を使います。給与の納付書に混ぜて書いてしまう間違いは本当に多い。書類が分かれるので、支払いが発生した月は納付作業がもう一枚増えると思っておいてください。
納付書の作り方と、納め方をどう選ぶか
納付書は正式には所得税徴収高計算書といいます。支払年月日、人数、支給総額、税額を欄に書き写すだけですが、給与ソフトを使っていれば源泉徴収簿からそのまま転記できます。手書きの給与台帳で管理している会社は、この転記のために毎月電卓を叩くことになる。ここが苦痛なら、給与計算をソフトに寄せたほうが早いです。
納め方は、金融機関や税務署の窓口に持っていくほかに、e-Taxを使った電子納税があります。事前に口座を登録しておくダイレクト納付なら、パソコンから金額を確認して送信するだけで引き落としまで終わる。窓口に並ぶ時間がなくなるので、月次作業としてはこれがいちばん軽くなります。インターネットバンキングやクレジットカード、コンビニ払いといった選択肢もありますが、手数料の有無や利用できる上限が方式ごとに違うので、そこは公式ページで確認してください。
電子納税に切り替える場合、初回だけは利用開始の手続きが要ります。数日から一定の期間かかるので、納付期限の直前に思い立つと間に合いません。始めるなら、支給のない時期か、期限まで余裕のある月に手続きを済ませておく。
遅れたとき、間違えたときにどうするか
期限までに納めなかった場合、本来の税額に加えてペナルティの税がかかります。額は納付が遅れた期間や、指摘される前に自分から納めたかどうかで変わります。ここで大事なのは、忘れていたと気づいたら、その日のうちに納めてしまうこと。税務署から連絡が来てから納めるのと、自分で気づいて納めるのとでは扱いが違います。
金額を間違えて多く納めてしまったときは、翌月以降の納付額から調整する方法と、還付を受ける方法があります。少なく納めていた場合は、不足分を追加で納めます。どちらも納付書の書き方に決まりがあるので、迷ったら税務署に電話してください。窓口は納付の相談に慣れていて、電話で手順を教えてくれます。放置して次の月も同じ誤りを重ねるほうが、後始末は面倒になります。
担当が一人でも回る月次の型
この作業を続けられる形にするには、給与の締め日・支給日・納付日の三点をカレンダーに固定して、毎月同じ順番でやることです。順番が毎月変わると、どこまでやったか分からなくなる。給与を振り込んだ日に納付書まで作ってしまい、電子納税の送信予約を入れておく。ここまでを一日で終わらせれば、翌月に持ち越すものがなくなります。
年末が近づくと、毎月の作業に年末調整が乗ります。扶養の申告書や保険料の控除証明書を集める作業が始まり、年明けには法定調書や給与支払報告書の提出が続く。この時期に毎月の納付を忘れやすいので、年末調整の準備を始める前に、月次の納付だけは別枠でカレンダーに残しておいてください。
担当が社長ひとりなら、体調を崩した月に止まります。せめて納付書の控えと、給与ソフトのログイン情報、電子納税の登録口座がどれかを紙に書いて金庫に入れておく。事故が起きてから探すと、期限に間に合いません。
一次ソース(公式ページ)
制度・料金は改定されます。本記事は執筆時点の情報です。最新情報は必ず上記の公式ページでご確認ください。
よくある質問
役員が一人だけの会社でも、毎月の納付作業は必要ですか
役員報酬も給与にあたるので、源泉徴収と納付の義務は同じように発生します。報酬額が小さくて天引きする所得税が出ない月もありますが、その場合でも納付書そのものは提出が必要です。金額ゼロの納付書はe-Taxから送れるので、窓口に行く手間はかかりません。
給与を支給しなかった月は、何もしなくていいですか
納める税額がなくても、所得税徴収高計算書は提出しておくのが原則です。出していないと、税務署側からは「納付を忘れている会社」と区別がつかず、問い合わせの電話が来ます。ゼロで送っておけば記録が残り、あとから経緯を説明する手間が省けます。
まとめ納付の承認を受けたあとに人が増えたら、どうなりますか
要件を満たさなくなった時点で、その旨を届け出る必要があります。届け出ずにまとめ納付を続けると、本来毎月納めるべきだった分が遅れた扱いになります。採用を決めた段階で顧問税理士か税務署に確認し、切り替える月を先に決めておくと安全です。