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フリーランス法 — 発注側の義務はどこまで及ぶか

公開 2026-10-01 · 経営の実務

外注先が個人のライターやエンジニア、配送を請け負う個人事業主だという会社は、フリーランス法では発注側として名指しされます。自社の規模は関係ありません。何を書面にし、いつ払い、何をしてはいけないのか。社内の発注のしかたを、どこまで直せば足りるかを順に見ていきます。

自分の会社は対象に入るのか

自社にどこまでの義務がかかるか従業員を雇っていない個人、または代表一人だけの法人に仕事を頼んでいるか → はい: 取引条件の明示が必要になる。自社に従業員がいる、または役員が複数いるか → はい: 支払期日の設定、禁止される扱い、ハラスメント対応まで加わる。同じ相手に政令で定める期間を超えて続けて委託しているか → はい: 中途解除・不更新の事前予告と、育児・介護への配慮が加わる。いずれにも当てはまらない場合: 一人でやっている会社どうしの取引でも、取引条件を記録に残して渡す義務は残ります自社にどこまでの義務がかかるか従業員を雇っていない個人、または代表一人だけの法人に仕事を頼んでいるかはい取引条件の明示が必要になるいいえ自社に従業員がいる、または役員が複数いるかはい支払期日の設定、禁止される扱い、ハラスメント対応まで加わるいいえ同じ相手に政令で定める期間を超えて続けて委託しているかはい中途解除・不更新の事前予告と、育児・介護への配慮が加わるいいえ一人でやっている会社どうしの取引でも、取引条件を記録に残して渡す義務は残ります

この法律が守ろうとしているのは、従業員を使わずに一人で事業をしている個人と、代表以外に役員も従業員もいない法人です。相手がこれに当たるなら、仕事を頼んだ時点で自社は発注側になります。業種も、自社が法人か個人かも問われません。ホームページの更新を知り合いのデザイナーに月いくらで頼んでいる、繁忙期だけ個人の運転手に配送を回している。その程度の付き合いでも対象です。

ただし、自社に従業員がいるかどうかで義務の範囲がはっきり分かれます。従業員を雇っていない会社なら、求められるのは取引条件の明示だけです。従業員を雇っている会社、あるいは役員が複数いる法人は「特定業務委託事業者」として扱われ、支払期日の設定、禁止される扱い、ハラスメントへの対応まで一式がかかってきます。ここを確かめないと、社内で作るべき仕組みの大きさが決まりません。

相手がフリーランスかどうかは、名刺や屋号では分かりません。法人格があっても代表一人なら対象です。逆に、個人事業主でもアルバイトを常時雇っていれば対象から外れます。新しく取引を始めるとき、従業員を雇っているかを一言聞いて記録しておくのが、後から迷わない唯一の方法です。

委託するときに何を伝えて、どう残すか

仕事を頼むときは、業務の内容、報酬の額、支払期日、成果物を受け取る日と場所などを、相手に示さなければなりません。口頭だけでは足りません。ただし紙の契約書である必要はなく、メールでもチャットでも、記録が残る形で渡してあれば構いません。現実的には、発注書のひな形を一つ作って毎回そこに埋めるのがいちばん手間が少ない。

発注の時点で決まらない項目が出ることはあります。報酬額が作業量次第で動く、納品場所が先方の都合待ち、といった場合です。そのときは未定であることとその理由を書いておき、決まり次第すぐに伝えれば足ります。困るのは、決まっていないことに触れないまま作業が進み、納品の直前に金額の話になる進め方です。

書き漏らして揉めやすいのは、修正を何回まで報酬の範囲に含めるか、成果物の権利を最終的にどちらが持つか、この二つです。法律が明示を求める項目そのものではありませんが、書いていないと「その作業は元の金額に入っている」「入っていない」の言い合いになります。ひな形に欄を足しておけば、毎回考えずに済みます。

支払日をいつに設定すればいいか

支払期日の起点は、成果物を受け取った日です。検収が終わった日でも、請求書が届いた日でもありません。ここを取り違えている会社が多く、「請求書が来た月の翌月末」という社内ルールのままだと、納品から支払までが法律の定める期間をはみ出すことがあります。受領日を基準に、自社の締め日と支払日が収まっているかを一度あてはめてみてください。具体的な期間は記事末尾の公式ページで確認できます。

他社から受けた仕事をそのまま個人に流す再委託の場合には、元の発注者からの入金予定を基準に期日を定められる扱いがあります。ただし、再委託であることや元の発注者名などを相手に明示しておくことが条件です。黙って自社の資金繰りに合わせて後ろ倒しにすると、この扱いは使えません。

運用でいちばん事故が起きるのは、請求書が届かないので支払わずに放置するパターンです。相手が請求書を出し忘れても、期日までに払う義務は消えません。受領日を記録した時点で支払予定表に載せてしまい、請求書はあくまで確認用という順番に変えておくと、月末に慌てなくて済みます。

継続して頼む相手には何が増えるか

同じ相手に政令で定める期間を超えて続けて委託している場合、義務が上乗せされます。ひとつは中途解除や契約を更新しないときの事前予告です。決められた期間より前に伝える必要があり、理由の開示を求められたら応じなければなりません。相手はその仕事を前提に翌月の予定を組んでいるので、突然切られると収入が途切れます。予告はそのための時間を渡すものです。

もうひとつは、妊娠や出産、育児、介護と両立できるよう申し出があったときの配慮です。継続的な委託では義務、そうでない委託では努力義務という違いがあります。納期をずらす、オンラインでの打ち合わせに切り替えるといった調整が現実的な対応で、必ず要望どおりにしなければならないという話ではありません。応じられないときも、検討したうえでその旨を伝える必要があります。

期間の長短に関係なくかかるものもあります。募集情報を出すときに実際と違う条件を載せない、古い募集を貼りっぱなしにしないこと。それから、ハラスメントの相談を受け付ける窓口を決めて周知し、相談されたら対応することです。外注先は社員ではないので相談先がなく、担当者との一対一の関係の中で問題が表に出ないまま終わりがちです。窓口を担当者以外に置く意味はそこにあります。

やってはいけない扱いは何か

継続的に委託している相手に対して、フリーランス側に責任がないのに次のような扱いをすることは禁止されています。取引上の力関係で押し切りやすい行為が並んでいます。

実際に相談が持ち込まれやすいのは、減額と買いたたき、そして無償のやり直しです。発注担当者に悪意がないことも多く、「先方の予算が削られたので」「イメージと違ったので」といった理由で、悪いことをしている意識のないまま起きます。社内の誰が発注しても同じ判断になるよう、報酬を決めたあとに下げる相談はしない、直しを頼むなら追加分として出す、という線を先に引いておくほうが確実です。

社内の運用をどこから直すか

発注から支払までに残すもの1. 発注書のひな形を一つ作る(業務内容・報酬・支払期日・受領日と場所、修正の範囲と権利の扱いの欄を置く)。2. 記録が残る手段で渡す(メールやチャットで送れば、送信履歴がそのまま明示した証拠になる)。3. 受け取った日を記録する(支払期日の起点は検収日でも請求書到着日でもなく、この日)。4. 発注の写しを経理に回す(請求書待ちで支払が遅れる事故は、ここで大半が消える)発注から支払までに残すもの1発注書のひな形を一つ作る業務内容・報酬・支払期日・受領日と場所、修正の範囲と権利の扱いの欄を置く2記録が残る手段で渡すメールやチャットで送れば、送信履歴がそのまま明示した証拠になる3受け取った日を記録する支払期日の起点は検収日でも請求書到着日でもなく、この日4発注の写しを経理に回す請求書待ちで支払が遅れる事故は、ここで大半が消える

やることは大きく三つです。発注書のひな形を一つ作ること、受領した日を記録する場所を決めること、支払期日を経理が把握できる形にすること。契約書を一件ずつ弁護士に作ってもらう必要はありません。多くの会社では、既に使っている発注書に不足項目を足すだけで足ります。

抜けやすいのは、現場の担当者が自分のメールで直接頼んでいる取引です。経理は請求書が来るまで発注の存在を知らず、受領日も分からない。こうなると期日の管理ができません。発注のときに必ず経理へ写しが回る流れにしておけば、それだけで支払遅れの大半は消えます。

揉めたとき、相手はどこに持ち込めるか

フリーランス側には、国の相談窓口に申し出る道が用意されています。申出があれば行政が調査に入り、必要に応じて指導や助言、勧告が行われ、勧告に従わなければ命令と公表に進みます。命令に反した場合の罰則もあります。金額の多寡より、社名が公表されたときに取引先や金融機関からどう見られるかのほうが実害として大きい。

あわせて覚えておきたいのが、申出をしたことを理由に契約を切ったり、発注量を減らしたりするのが禁じられている点です。相手が窓口に相談した事実が分かった時点で、取引を続けるかどうかの判断を普段どおりにできる状態にしておく必要があります。担当者の感情で動かないよう、外注先との契約更新の可否は担当者以外が確認する形にしておくと安全です。制度の詳細と相談先は、記事末尾の公式ページで確認してください。

一次ソース(公式ページ)

制度・料金は改定されます。本記事は執筆時点の情報です。最新情報は必ず上記の公式ページでご確認ください。

よくある質問

相手がインボイスの登録をしていないことを理由に、報酬から消費税相当分を差し引いてもいいですか

すでに明示した報酬額から一方的に引けば、報酬の減額として問題になります。条件を変えるなら、次回の委託分から双方で合意したうえで取引条件として明示し直すのが筋です。消費税の取り扱いには経過的な措置があり、自社の仕入税額控除にどう効くかは顧問税理士に確認してください。

何年も口約束で頼んできた外注先にも、今から書面を出す必要がありますか

必要です。過去分をさかのぼって作り直す義務はありませんが、次の発注から明示してください。長い付き合いの相手ほど条件があいまいなまま増築されていることが多く、書き出す過程で報酬の根拠や修正の範囲が食い違っていたと分かる場合があります。そこは書面を出す前に話しておいたほうが早いです。

納品物の作り直しを頼むのは、すべて禁止行為になりますか

なりません。最初に明示した内容を満たしていない納品なら、無償でのやり直しを求められます。問題になるのは、明示していなかった要望を後から足して無償で直させる場合です。追加の作業を頼むなら、その都度あらためて内容と報酬を伝えるようにしてください。