支払期日はいつに設定するか|外注先への報酬
個人に仕事を頼んだとき、報酬をいつ払うかは発注した側が決めます。ただし好きに決めていいわけではなく、上限が法律で定められています。月末締め・翌月払いという社内の慣習をそのまま個人への外注に当てはめると、気づかないうちに越えていることがある。ここでは、何を起点に数えて、どこまでに期日を置けばいいのかを整理します。
支払期日を決める義務は誰に生じるか
フリーランス法では、個人に業務を委託したとき、発注した側が支払期日を定めることになっています。定めなかった場合、成果物や役務を受け取った日が支払期日として扱われます。つまり「決めていないから後回しでいい」ではなく「決めていないなら受け取った日」に近い扱いになる。請求書が届いてから社内稟議を回し始める会社だと、回し終わる前に期日を過ぎています。
ただし、支払期日のルールがすべての発注者にかかるわけではありません。従業員を使用している事業者が対象で、社長ひとりや家族だけで回している会社、個人事業主が外注する場合は、取引条件を明示する義務は及んでも支払期日の規定は直接かかりません。従業員にあたるかどうかは短期雇用の扱いなどに線引きがあるので、自社がどちら側かはっきりしないなら記事末尾の公式ページで条文と解説を確認してください。規定がかからない側でも、払う日を決めずに外注を続ければ、腕のいい相手から順に離れます。
いつから数えるのか
期日の計算は、成果物や役務の提供を受けた日から始まります。請求書が届いた日ではないし、検収が終わった日でもない。ここを請求書基準で運用している会社が一番多く、そして一番ずれます。月初に原稿を受け取り、相手が請求書を出すのを忘れていて月末近くに届いた——その時点で受領からかなり日数が経っている、という形です。
だから受領日をどこかに残します。メール添付で納品されるならそのメール、現場作業なら日報や完了連絡、発注書の控えに受領日を書き込むだけでもかまいません。残っていないと、あとで「いつ受け取ったか」を双方の記憶で争うことになる。記録が無いまま揉めると、こちらに不利に見えるのが普通です。
検収待ちを理由に支払を遅らせられるか
検収は自社の都合で行う確認作業であって、起点を後ろにずらす仕組みではありません。修正のやり取りをしている間も日数は進みます。社内の確認者が出張で一週間つかまらなかった、というのは完全にこちら側の事情で、相手の報酬を遅らせる理由にはならない。
確認に時間がかかると分かっている仕事なら、分割納品にして確定した部分から払う。あるいは着手時に一部を払う。工程を分ければ、こちらも資金の出る時期が読めます。「全部終わってから一括」は相手にとって一番つらく、こちらにとっても期日を越えやすい組み方です。
締め日と振込日の組み合わせで越える場面
月に一度締めて、翌月の決まった日に振り込む。この形自体は悪くないのですが、締めた直後に受け取ったものが危ない。締めの翌日に納品を受けると、次の締めまで待ち、そこからさらに振込日まで待つ。受領からの実日数が一気に伸びます。
対処は限られています。締めを月に二回にするか、振込日を月内に複数持つか、個人への外注だけ別枠で随時振込にするか。ネットバンクの振込予約を使えば、受領を確認した日に予約を入れてしまえるので、月末にまとめて作業する必要もなくなります。もうひとつ、振込日が土日祝に当たったときに翌営業日へ後ろ倒しする運用も見直してください。前倒しなら問題は起きませんが、後ろ倒しは期日を越える方向に働きます。
他社から受けた仕事を外注に回すとき
元請けから受けた案件の一部を個人に出す、いわゆる再委託では、元の発注者からの支払期日を基準に設定できる余地があります。ただし条件があって、発注する時点で、元の委託者の名称、元の業務委託を受けた日、元の支払期日を相手に明示しておく必要があります。何も伝えずに、あとから「元請けの入金がまだなので」と言っても通りません。
明示していなければ、通常どおり受け取った日から数えることになります。元請けの入金が遅れた月は、自社の資金で立て替えて払う。これが読めていないと、受注が増えた月ほど資金が苦しくなります。再委託を常用するなら、外注費が一巡するあいだの運転資金を手元に置いておくこと。
期日を過ぎたらどうなるか
支払が期日より遅れた場合、遅れた日数に応じた遅延利息を払う義務が生じます。利率は公的に定められているので、記事末尾の公式ページで確認してください。相手が請求してこなくても義務は残ります。
相手は行政の窓口に申し出ることができ、調査や指導につながります。申し出たことを理由に取引を打ち切るのも禁じられている。ただ、実務で本当に効くのは行政処分より評判のほうです。個人で仕事を受けている人たちは横のつながりがあり、支払の遅い発注先の情報は早く回ります。手が空いている時期に声をかけても返事が来なくなる、という形で跳ね返ってきます。
発注書と社内の運用にどう落とすか
支払期日は、発注時に書面か電磁的方法で相手に明示する取引条件のひとつです。紙でなくてもよく、メールやチャットで残れば足ります。案件ごとに考えると必ず抜けるので、発注書のテンプレートに固定文言として入れてしまう。口頭で頼んで後から条件を送る形でも、送るまでの間隔が空くほど揉めます。
- 委託する業務の内容と、完了したとみなす時点
- 報酬の算定方法と、支払期日
- 受領の方法(メール、納品場所など)と受領日の扱い
- 検収を行うかどうか、行うなら期間
- 交通費や材料費など実費の扱い
あとは、未払いの一覧を月に一度見る時間を作ること。会計ソフトの未払金の明細でも、発注書の控えの束でもかまいません。誰も見ないと、金額の小さい外注ほど抜けます。相手が遠慮して催促してこない取引ほど危ない、と考えておいてください。
一次ソース(公式ページ)
- 内閣官房 — フリーランス・事業者間取引適正化等法
- e-Gov法令検索 — 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス法)
- 国税庁 — 青色申告制度(帳簿の記帳と保存)
- 日本年金機構 — 国民年金
- 中小機構 — 小規模企業共済
- 国税庁 — 確定申告に関する手続き
制度・料金は改定されます。本記事は執筆時点の情報です。最新情報は必ず上記の公式ページでご確認ください。
よくある質問
請求書が締め日に間に合わなかったら、支払期日は翌月にずれますか
ずれません。期日の起点は請求書の到着ではなく、成果物や作業の提供を受けた日です。請求書が遅れるとこちらが期日を越えるので、納品を受けた時点でこちらから請求書の送付を促す運用にしておくと事故が減ります。相手が請求書を出し慣れていない個人の場合は、こちらの様式を渡してしまったほうが早いです。
毎月の顧問料のように継続的な委託では、どこが起点になりますか
その月の役務の提供が終わった時点が基準になります。契約で業務の区切りを月単位と決めているなら、月の終わりが受領にあたると考えて組むのが無難です。契約書に「どの時点で役務の提供が完了したとみなすか」を一行入れておくと、年度途中で担当者が替わっても解釈が揺れません。
決めた支払期日より早く払うのは問題ありませんか
早く払うこと自体に問題はなく、着手金や前払いも可能です。ただし、こちらの都合で前倒しする代わりに報酬から手数料名目を差し引くと、一方的な減額とみなされる余地があります。早払いと値引きをセットにしないでください。