電子帳簿保存法で請求書ソフトに要る機能はどれか
請求書ソフトを探すと、どの製品にも「電子帳簿保存法対応」と書いてあります。それだけでは選べません。対応と書いてあっても、何がソフト側で自動的に残り、何が自社の手作業として残るかは製品ごとに違うからです。先に自社の条件を決めて、その条件で機能を当てはめる順に見ていきます。
まず「出す側」か「受け取る側」かを分ける
請求書ソフトを探し始めるきっかけは、たいてい請求書を出す作業がしんどいことです。ところが電子帳簿保存法で手間が増えるのは、受け取ったほうの請求書です。自社が発行した請求書は控えが同じソフトの中に残るので、放っておいても保存の形は整います。困るのは、外注先からメールで届くPDF、取引先のサイトにログインして自分で落とす明細、チャットで送られてくる画像です。
だから最初にやるのは機能比較ではなく、先月の受信メールを開いて、請求書が何通どういう形で届いたかを数えることです。ほとんど紙で、電子は通信費と広告費の数通だけという会社もあります。その場合は受領側に凝った機能は要らず、発行の使い勝手で選んで構いません。逆に外注が多くメール添付が主流なら、発行機能がどれだけ良くても、受け取ったデータを放り込んで後から探せる場所がないソフトは候補から外れます。
電子で受け取ったデータを、どこに置くと決めるか
電子でやり取りした請求書は、印刷した紙だけを残す扱いにはできません。データのまま残す必要があります。ここでよくあるのが、置き場所を決めないまま「とりあえず全部残そう」と始めて、担当者のメールボックス、共有フォルダ、経理のデスクトップに散らばるパターンです。散らばると、調査で特定の取引の請求書を求められたときに探すだけで半日が消えます。
ソフトを見るときは、届いたPDFをドラッグして入れられるか、専用アドレスへのメール転送で自動的に取り込めるかを確認します。取込口が一つあると、届いたその日に処理して終わらせる運用が回り始めます。取込がない製品を選ぶと、結局クラウドストレージを別に用意することになり、月末にソフトとフォルダの二か所を突き合わせる仕事が増えます。ここは実際に自社へ届く請求書で試さないと分かりません。
「検索できる」とは、実際に何ができる状態か
電帳法の話で必ず出てくるのが検索要件です。中身は難しくありません。取引の日付、取引先の名前、金額の三つで後から引き当てられればいい。分かれ目は、その状態をソフトが作るのか、人がファイル名を付けて作るのかです。
ファイル名を日付と取引先と金額をつないだ形にして共有フォルダに置く方法でも要件は満たせます。費用もかかりません。ただし人が毎回間違えずに付ける前提です。忙しい月末に一件抜ければ、その一件だけ永久に探せなくなる。ソフトが取込時に日付と取引先を読み取って項目に入れてくれるなら、命名ルールを社内に徹底させる仕事がまるごと消えます。読み取りの精度は請求書の書式で変わるので、無料期間に自社へ実際に届いた請求書を数枚通してみてください。手書きの請求書や横長の明細で崩れる製品もあります。
改ざん防止はソフトに任せるか、社内の決めごとで済ませるか
データを後から書き換えていないことをどう示すか、という論点です。やり方はいくつかあり、タイムスタンプを付ける、訂正や削除の履歴が残るシステムに保存する、自社で事務処理の規程を作って運用する。このどれか一つで足ります。全部そろえる必要はありません。
従業員が数人の会社なら、規程で済ませる方法がいちばん軽い。国税庁がひな形を出しているので、記事末尾の公式ページから取って自社名と保存場所を入れれば形になります。ただし規程を作ると、それを守る運用がついてきます。誰がいつ消したか分からない共有フォルダを使いながら、規程だけキャビネットに入っている状態は、実質的に何もしていないのと同じです。履歴が自動で残るソフトを使えば、この運用を人が背負わずに済みます。費用を取るか、社内で決めごとを守らせる手間を取るかの選択で、担当が一人しかいない会社ほどソフトに寄せたほうが崩れません。
会計ソフトと一体で持つか、請求書だけ別にするか
会計ソフトに請求書の発行と受領の機能が付いているものを使えば、保存した請求書からそのまま仕訳が起こせます。二重入力がなくなるので、月末に同じ数字を二回打つ作業が消える。ただし、発行側の機能は請求書専用のソフトのほうが細かいことが多く、部分請求や工事ごとの積み上げ、繰り返し請求の管理などをやっている会社だと物足りなくなります。
別々に持つ場合は、連携で仕訳が自動で作られるか、CSVを書き出して取り込む手作業になるかで、毎月の負担がまるごと変わります。連携すると謳っていても、消費税の区分や補助科目まで運べるかは製品の組み合わせ次第です。ここは販売元に「うちの会計ソフトと、どこまで自動で渡るか」を具体的に聞いてください。料金は機能の幅と登録できる人数で変わるので、最新の料金は各社の公式ページで確認してください。
紙とメールが混ざっている会社はどう組むか
紙で届いた請求書をスキャンしてデータで保存する、いわゆるスキャナ保存は義務ではありません。紙は紙のまま綴じて保存して構わない。ここを誤解して全部スキャンしようとし、複合機の前で何時間も潰す会社があります。スキャナ保存にはスキャナ保存なりの決まりがあるので、やらなくていいなら手を出さないほうが楽です。
現実的なのは、電子で来たものはソフトに入れる、紙で来たものはこれまでどおりファイルに綴じる、という二本立てです。そのうえで、毎月同じ先から紙で届いているものは「メールでいただけますか」と頼んでみる。頼めば電子に寄る先は思ったより多く、寄せるほど月末に紙を並べる時間が減ります。一気に統一しようとせず、届き方の多い取引先から順に片付けるほうが続きます。
契約する前の一週間で確かめること
無料期間は、発行画面の見た目ではなく受け取りと検索を試す時間に使ってください。先月届いた請求書を実物で取り込み、取引先の名前で引いてみる。ここで引っかかるようなら、本番でも同じところで詰まります。担当者以外の人にも一度触らせておくと、自分だけが分かる運用になるのを防げます。
見積りを取る前に、販売元へ次の点を聞いておくと比較が早く終わります。
- 受け取ったPDFの取込方法(メール転送に対応するか)
- 検索できる項目と、日付・取引先・金額が自動で入るか
- 訂正削除の履歴が残るか、残る場合どこで見られるか
- 解約したとき、保存済みのデータをどの形式で書き出せるか
最後の一つは見落とされがちですが、書き出せない製品を選ぶと、乗り換えたくなったときに動けなくなります。保存が必要な期間は長い。今の使い勝手より、数年後に抜けられるかどうかで最後の一押しを決めても損はしません。
一次ソース(公式ページ)
制度・料金は改定されます。本記事は執筆時点の情報です。最新情報は必ず上記の公式ページでご確認ください。
よくある質問
取引先からFAXで届く請求書は、データで保存しないといけませんか。
複合機で紙に出力して受け取っているなら紙の請求書として扱えます。パソコンでFAXを受信してPDFのまま保存している場合は電子取引のデータになります。同じ「FAX」でも受信の仕方で扱いが変わるので、自社の複合機がどちらの設定になっているかを一度確認してください。設定を紙出力に寄せて運用を単純にする会社もあります。
請求書ソフトを乗り換えたら、前のソフトに入っている過去の請求書はどうなりますか。
多くの製品は解約すると閲覧できなくなります。保存が必要な期間は探せる状態にしておく必要があるので、解約前にPDFと明細データを書き出し、日付・取引先・金額で引けるようにまとめておきます。書き出しの形式と、一括で落とせるかどうかは契約前に販売元へ確認しておくと安全です。
事務処理規程だけで運用している場合、調査では何を見られますか。
規程そのものよりも、規程どおりに保存されているかと、求められた請求書をその場で出せるかを見られます。日付や取引先を指定されて探すのに時間がかかると、他の期間も広く確認される流れになりがちです。データのダウンロードを求められる場合もあるので、まとめて取り出せる状態にしておいてください。