楽楽明細とboard、請求書をどこで作るかで決まる
楽楽明細からboardに移そうかと考えている会社から相談を受けると、最初の話題はたいてい「データはどこまで持っていけるのか」です。ただ、この二つは請求のどの部分を担っているかが違うので、移行の可否だけを先に調べても答えが出ません。順番としては、自社の請求書が今どこで作られているかを確かめるほうが先です。
先に決めるのは「請求書を誰が作っているか」
楽楽明細は、すでにどこかで出来上がっている請求データを受け取って、Web閲覧・メール・郵送といった形で取引先に届けるところを引き受ける仕組みです。多くの会社では、販売管理システムや会計ソフト、あるいはExcelの一覧から出したCSVを流し込んで使っています。つまり請求金額を決める作業は別のところにあり、楽楽明細は配信の出口を担っている。
boardは出口だけでなく、見積から納品、請求、入金までを案件単位でつなぐところに軸があります。見積を作り、それを元に請求に変える。だからboardに移すという話は、単なる配信ツールの入れ替えではなく、請求書を作る場所そのものを引っ越す話になりやすい。ここを意識せずに乗り換えると、請求データは今まで通り販売管理システムから出てくるのに、board側でも案件を登録しないと形にならず、入力が二重になります。
逆に、請求書の中身をExcelで手作りして楽楽明細に流していた会社なら、作る場所ごとboardに寄せることで作業が一本になります。同じ検索から来ても、この一点で結論が分かれます。
どちらを選ぶかは三つの軸で決まる
一つ目は、請求金額を決めている場所が動かせるかどうか。基幹の販売管理や業界専用システムで請求を組んでいて、そこを動かせないなら、出口だけを担うツールを続けたほうが素直です。二つ目は、毎月出す通数と中身の定型性。同じ顧客に同じ明細を大量に出す商売では、配信のしやすさと取引先の閲覧環境の安定が効いてきます。
三つ目は、見積と案件の管理を今どこでやっているか。見積をExcelで作り、受注したかどうかを社長の頭の中で管理しているなら、案件と請求がつながる仕組みに寄せる価値があります。月末に「あの案件、請求出したか」と探す時間が消えるからです。この三つのどれも当てはまらないなら、乗り換えの動機は料金だけということになり、それは移行の手間と天秤にかけて判断する話になります。
移せるデータ、移せない記録
移しやすいのは、取引先の名前・住所・宛名・支払条件といった台帳の情報です。文字として持ち出せる種類のデータなので、CSVに出して並べ替えれば新しい側に入ります。ただし列の並びや必須項目は受け入れ側の決まりに合わせる必要があるので、取り込み形式は記事末尾の公式ページで確認してください。
移せないのは、システムの中でしか意味を持たない記録です。取引先ごとの閲覧ページのアカウント、いつ誰が明細を開いたかの履歴、メール送信の成否ログ、配信をどの条件で分けていたかの設定。これらは仕組みに紐づいているので、乗り換えると前の側に残ります。閲覧履歴を「相手が確かに受け取った証拠」として使っていた会社は、代わりに何を証跡にするかを決めておかないと、支払遅れのときに押しが弱くなります。
もうひとつ抜けやすいのが、請求書の見た目です。ロゴの位置、明細の並び、備考の定型文、振込先の書き方。長く使っていると取引先の経理がその書式に慣れていて、変わると「これは何の請求か」と問い合わせが来ます。切り替え前に一枚出力して、社内の誰かに前の書式と並べて見てもらうといい。
発行済みの請求書はどう引き継ぐか
過去に発行した請求書を新しい側に取り込んで、そこから再発行できるようにする——これは期待しないほうがいい。実務では、解約の前に発行済みPDFをまとめてダウンロードし、年月と取引先で分かるようにフォルダに置いておく方法を取ります。ここを飛ばして解約すると、後から「前期分の控えが要る」と言われたときに何も出せません。
電子帳簿保存法の要件で保存している場合は、保存場所を移すこと自体が要件の話につながります。検索できる状態をどう保つか、保存要件を満たす置き場をどこにするかは、顧問税理士に一度確認してください。ファイル名の付け方だけで済むこともあるし、会計ソフト側の保存機能に入れ直すほうが安全な場合もあります。ここは会社によって変わります。
取引先への案内でつまずくところ
取引先が自分でWeb画面にログインして明細を取りに来ている運用だと、切り替えは相手側の作業を伴います。URLが変わり、ログインの手順が変わり、場合によっては相手の社内マニュアルの書き換えまで必要になる。大手の取引先だと、経理の窓口に申請を出して承認を待つ流れになることもあり、こちらの都合で月内に終わらせられません。
だから案内は、切り替え月の請求を出す直前ではなく、その前の請求書を送るときに同封・同送するのが実務的です。「次回から送り方が変わります」と一度先に伝えておけば、当月になって問い合わせが集中しません。郵送で受け取っている先については、送り方が変わらないなら特に案内はいらない代わりに、体裁が変わる場合は先に見本を見せておく。相手の経理が請求書を見て判断できないと、支払がひと月ずれます。
切り替える月と二重運用の期間
切り替えは、期の途中でもできます。ただ、同じ取引先に対して月をまたいで発行元が変わると、番号の連続や締めの突き合わせが面倒になります。請求書番号の付け方を新しい側の採番に合わせるのか、今の連番を引き継ぐのかは、切り替える前に決めてください。決めずに始めると、入金消込のときに同じ番号が二つ出てきて手が止まります。
現実的なのは、ひと月だけ二重で持つことです。前の側はデータの参照と過去分のダウンロードのために残し、新しい側で当月分を作って出す。翌月、問題が出ていないことを確認してから解約に動く。解約すると閲覧ページは閉じるので、解約日と取引先への最終案内のタイミングは必ず揃えてください。
コストの見え方が違う
この二つは料金の組み立て方が違います。発行通数で増えていく考え方と、使える機能や利用者の範囲で決まる考え方では、同じ規模の会社でも月々の見え方が変わります。今払っている額とだけ比べると、通数が伸びたときにどうなるかが抜けます。
比べるときは、来期に請求件数がどのくらいになりそうかを一つ置いてから見てください。郵送代行や保管容量のように、使う分だけ乗る項目もあります。具体的な料金は改定されるので、記事末尾の公式ページで最新の条件を確認したうえで、自社の通数を当てはめて計算するのが確実です。
一次ソース(公式ページ)
制度・料金は改定されます。本記事は執筆時点の情報です。最新情報は必ず上記の公式ページでご確認ください。
よくある質問
楽楽明細で発行した過去の請求書を、boardの画面から取引先に見せることはできますか
過去に発行した分をそのまま新しい環境の閲覧ページに並べる運用は期待しないでください。解約するとWeb閲覧の窓口も閉じるため、取引先が後から前期分を取りに来ても対応できなくなります。解約前にPDFを一括で落として自社の保管場所に置き、取引先には「前期分までは従来の方法で再送する」と伝えておくのが現実的です。
販売管理システムからCSVを出して楽楽明細に流しています。boardでも同じ流れにできますか
取り込みの可否や受け付ける列の形は提供側の仕様次第なので、記事末尾の公式ページで自社のCSVと突き合わせて確認してください。ここで見落としやすいのは、明細行の数や単価の桁、備考欄の改行です。テスト用に一社分だけ入れてみて、出てきた請求書の見た目が今と同じかを先に確かめると、移行後の手戻りが減ります。
郵送で受け取りたい取引先が残っている場合、どう扱えばいいですか
郵送を代行してもらえるか、締切が何営業日前か、封入されるときの体裁がどうなるかは会社ごとに条件が違うので公式ページで確認してください。取引先が指定の送付状を求めている場合は、代行の体裁で通るかを事前に相手の経理に見せておくと安全です。数が少なければ自社で印刷して出すほうが早いこともあります。