freeeから弥生へ、移行できるデータとできないもの
freeeから弥生に替えたいという相談で、最初に必ず出るのが「データは全部移りますか」という質問です。結論を先に言うと、仕訳と取引先は形を整えれば運べます。それ以外――自動仕訳のルール、証憑の紐付き、申請の履歴、固定資産の償却経過――はおおむね作り直しになります。だから移行の話は「移せるか」ではなく「何を捨てて、いつ切るか」を決める話です。
移すかどうかは、三つの質問で決まる
一つ目は、決算を誰がまとめているか。顧問税理士が弥生で処理していて、毎年freeeの書き出しを渡しては直してもらっている、という状態なら、乗り換えの効果は決算月にまとめて出ます。逆に社内で申告まで完結しているなら、ソフトを替える理由は「使いにくい」以外にほとんど残りません。
二つ目は、freeeをどこまで使っているか。銀行明細を取り込んで仕訳を作るだけなら、置き換えはそれほど重くない。ただし経費精算の申請と承認、請求書の発行、社員のスマホからのレシート提出まで載せているなら、会計だけを弥生に移すと業務の入口が二つに割れます。月末に「どっちに出せばいいんですか」と聞かれ続けることになる。
三つ目は、切り替え時期を期首に合わせられるかどうか。ここは後で詳しく書きますが、期中で切ると作業量が倍近くになります。月々の負担で決めたい人もいますが、プランごとに使える機能が変わるので、最新の料金は記事末尾の公式ページで確認してください。比べ方としては、移行の手間は一回きり、料金差は毎月効く、という時間軸の違いを頭に置くと迷いにくくなります。
freeeから何を書き出せるか
会計ソフト間の引っ越しは、どちらもCSVでの書き出しと取り込みが土台です。freeeからは仕訳のデータ、取引先の一覧、勘定科目の一覧、固定資産の一覧を書き出せます。加えて、総勘定元帳や仕訳帳、試算表、決算書といった帳簿はPDFでも出しておいてください。取り込みに失敗したときの正解表になりますし、税務調査で聞かれるのは加工前の帳簿だからです。
注意したいのは、レシートやPDFの証憑ファイルです。ファイル自体は取り出せても、「この仕訳にこの画像が付いている」という紐付きまで含めて別のソフトへ運ぶことは期待しないほうがいい。移行後は、証憑は証憑としてフォルダに保管し、会計側からは日付と取引先で探す運用に切り替わると考えておきます。ここを想定していないと、切り替えた翌月に「去年の領収書が出てこない」と慌てます。
弥生に取り込めるもの、打ち直しになるもの
弥生には仕訳データを取り込む機能があります。ただしfreeeが出したファイルをそのまま流し込める保証はなく、列の並べ替えと、勘定科目名の読み替えが要ります。freeeで使っていた科目名が弥生側に存在しないと、その行は入らないか、別の科目に落ちる。だから作業の順番は、まず弥生側で科目と補助科目を作り、対応表を紙かエクセルで一枚作ってから、少量でテスト取り込みをする、になります。いきなり全期間を流すと、どこで狂ったか追えなくなります。
ソフトの考え方の違いも効いてきます。freeeは入金や支払といった「取引」を中心に組み立てていて、部門や品目、メモのタグで切り分けます。弥生は仕訳と補助科目・部門が中心です。タグで管理していた集計は、一対一では引き継げません。何をタグで見ていたのかを先に洗い出して、補助科目に落とすか、いっそ諦めるかを決めてください。
手で作り直すことになるのは、だいたい次のものです。
- 銀行・カード連携の設定と、自動で仕訳を割り当てていたルール
- 固定資産台帳(取得の内容と償却の経過を入れ直す)
- 請求書や見積書のひな形、発行履歴
- 経費精算の申請ルートと承認の履歴、社員のアカウントと権限
このうち体感で一番重いのは連携ルールです。何年か使っていれば、あの引き落としはこの科目、という判断がソフト側にたまっている。それが全部ゼロに戻るので、切り替え直後の一、二か月は仕訳の手直しが増えます。ここを見込まずに繁忙期に重ねると、経理が止まります。
期首で切るか、期中で切るか
期首から弥生を使い始めるなら、必要なのは前期末の残高と、その日以降の仕訳だけです。過去の仕訳を無理に運ぶ必要はありません。前期の帳簿はfreeeから書き出したPDFで足ります。これが一番軽い。
期中で切ると、期首残高に加えて、切り替え日までの仕訳も弥生へ入れることになります。消費税の集計が二つのソフトにまたがるのが厄介で、申告のときにどちらの数字を採るかで手が止まる。どうしても期中で替えるなら、月次の締めが終わった翌日を境にして、その月の途中では切らないこと。日をまたいで二重に入力した仕訳が残ると、あとで残高が合わない原因になります。
逆に、決算作業の真っ最中に替えるのは避けてください。決算整理仕訳を入れる場所と、日々の仕訳を入れる場所が別々になり、税理士とのやり取りが二重になります。
解約したあと、過去の帳簿は誰が見るのか
乗り換えでいちばん抜けやすいのがここです。freeeを解約したり、プランを下げたりしたときに、過去データをどこまで見られるかは契約の条件で変わります。詳しい扱いは記事末尾の公式ページで確認したうえで、実務としては「解約前に、必要な帳簿と証憑を全部手元に落とす」を前提に動いてください。あとから見たいと言っても、契約が切れていれば取り出せません。
落とすのは、仕訳帳と総勘定元帳、試算表、決算書、固定資産台帳、消費税の集計、それに電子で受け取った請求書や領収書の元データです。電子取引のデータには保存の義務があり、その義務はソフトを替えても会社に残ります。取引の日付、取引先、金額で探せる状態にしておく必要があるので、フォルダを年月で切り、ファイル名に日付と取引先を入れる程度の整理は、落とすときに一緒にやってしまうほうが早い。後回しにすると誰もやりません。
切り替えの順番と、並行運用をどこで止めるか
順番を間違えると戻れなくなるので、作業は決めた順に進めます。切替日を決め、freeeから帳簿と各種データを書き出し、弥生側で科目体系を整え、開始残高を入れ、少量でテスト取り込みをして、銀行連携を設定し直す。最後に、前期末の残高と試算表が一致するかを突き合わせます。ここが合わないまま先に進むと、決算のときに原因を探して丸一日つぶれます。
両方を並行して動かす期間は、長くても一か月に収めてください。二重に入力している間は、どちらが正しいのかが分からなくなり、結局どちらも信用できなくなります。freeeは「読むだけ」に切り替え、新しい仕訳は弥生にしか入れない、という線を決めた日から引くこと。社員がいる会社なら、レシートや請求書の提出先が変わることを、切替日の前に一度伝えておきます。
乗り換えを止めたほうがいいのはどんな会社か
経費精算の申請と承認をfreee上で回している会社は、慎重に考えてください。会計だけ移すと、申請はfreee、記帳は弥生という形になり、月末の突き合わせが増えます。会計の使い勝手の不満より、その手間のほうが大きくなることがある。
もう一つは、経理が社長ひとり、あるいは兼任のパート一人という会社が、決算期の直前に替えようとしている場合。移行そのものは数日でも、連携ルールが育つまでの数か月は仕訳の手直しが増えます。その負担を決算と重ねるのは避けたほうがいい。次の期首まで待って、それまでに科目の対応表だけ作っておく、という進め方で十分間に合います。
逆に、税理士が弥生で処理していて毎年データの受け渡しに手間がかかっている、freeeは記帳にしか使っていない、期首が近い――この三つが揃っているなら、迷う理由はほとんどありません。
一次ソース(公式ページ)
- freee会計(法人向け) — 料金ページ(2026-07-27 確認)
- freee会計(個人事業主向け) — 料金ページ(2026-07-27 確認)
- freee 公式サイト
- やよいの青色申告 オンライン(個人事業主向け) — 料金ページ(2026-07-27 確認)
- 弥生会計 Next(法人向け) — 料金ページ(2026-07-27 確認)
- 弥生 公式サイト
制度・料金は改定されます。本記事は執筆時点の情報です。最新情報は必ず上記の公式ページでご確認ください。
よくある質問
税理士から「弥生にしてほしい」と言われました。従ったほうがいいですか。
顧問料や決算のやり取りに影響するので、まず理由を聞いてください。データの受け渡しが面倒だからという理由なら、書き出したファイルを渡す形で解決することもあります。逆に、決算整理や償却資産の管理を税理士側のソフトで組んでいる場合は、揃えたほうが年間の往復回数が減ります。判断は会計の機能よりも、決算期に誰がどれだけ手を動かすかで決めたほうが外しません。
freeeで発行した請求書の履歴は弥生側に持っていけますか。
会計の仕訳としては残せますが、請求書そのものの発行履歴や書式は別物として考えてください。取引先に再発行を求められる可能性があるので、発行済みのPDFはまとめて手元に落としておくのが安全です。請求書の発行を今後どちらで行うかは、会計の乗り換えとは別に決めて構いません。
移行作業は自分でやるべきか、外注すべきか。
仕訳の件数が少なく、期首から切り替えるなら自分で足ります。判断が要るのは科目の読み替えと開始残高で、ここを間違えると決算まで気づかないことがあるため、顧問税理士がいるなら残高の突き合わせだけは見てもらってください。作業を丸ごと外注する場合も、科目体系だけは自社で決めてから渡さないと、後で運用が合わなくなります。