請求書ソフトを5人以下で入れるか、手書きで足りるか
請求書が月末に何枚か。前月のエクセルを複製して日付と数量を直し、印刷して封をする。これで回っているなら、慌ててソフトを入れる理由はありません。問題は、その「回っている」が社長の記憶と手元のファイルだけで支えられていないかどうかです。人数ではなく、請求の出し方で線が引かれます。
手書きとエクセルで回っているとき、何が見えていないか
月末の請求作業は、たいてい日中の業務が終わったあとに押し込まれます。前月のファイルを開いて、数量と日付を直し、PDFにしてメールに貼る。一枚あたりは数分でも、取引先ごとに単価や締め日が違うと、確認しながら進めるので手は止まります。この時間は請求書を作っている時間ではなく、間違えていないかを確かめている時間です。だから枚数が増えなくても、取引の種類が増えるだけで膨らみます。
見えなくなるのは、作った控えがどこにあるか、送ったかどうか、入金が済んだかの三つです。取引先から「まだ届いていない」と連絡が来たときに、送信済みメールを遡るところから始まる会社は、すでに記録が業務から外れています。入金の照合も同じで、通帳の振込名と請求先の名前が一致しないと、毎月同じ相手で毎月迷う。ここで月に半日が消えているなら、それはソフト代と比べる対象になります。
5人以下で線が引かれるのは人数ではなく請求の形
判断の軸は三つです。毎月ほぼ同じ相手に同じ内容で請求しているか。掛売りがあって、入金を後から照合しているか。請求書を社長以外も作るか。繰り返しの請求が多い会社は、テンプレートを呼び出して金額だけ直す形にすると作業がまるごと消えるので、枚数が少なくても効きます。逆に、毎回内容がばらばらのスポット受注ばかりなら、ソフトに入れても結局ゼロから打つことになり、エクセルとの差はほとんど出ません。
現金商売で、その場で領収書を出して終わる取引が中心なら、請求書ソフトの出番はほぼありません。掛売りが一部だけ混ざっている飲食店や小売なら、その数件のために月額を払う価値があるかを見てください。判断を鈍らせるのは「いずれ増えるかもしれないから」という理由付けです。増えてから入れても遅くありません。移行で苦しくなるのは取引先が多い会社で、5人以下の段階なら後から移しても数日の作業です。
社長以外が請求書を触るかどうか
事務を一人採用した、あるいは配偶者が手伝い始めた。この瞬間に、エクセル運用は急に危なくなります。同じ番号の請求書が二枚できる、金額を直した版と直す前の版が両方フォルダに残る、控えが本人のパソコンの中にしかない。社長が全部自分で作っていたときは記憶で補えていた部分が、人が増えると補えません。番号の重複は、取引先の経理から問い合わせが来て初めて分かります。
人に任せるなら、誰が作って誰が送ったかが後から分かる形にしておく必要があります。ソフトを入れる一番の理由がここになる会社は多い。作業時間の短縮より、担当者が辞めたときに請求履歴が会社に残るかどうかのほうが実害が大きいからです。パソコンの中のフォルダは、本人がいなくなると構造が分かりません。
インボイスと電子帳簿保存法で、どこまで手作業が残るか
登録番号を取っているなら、請求書に番号と税率ごとの区分を載せる必要があります。これは手書きでもエクセルでも満たせます。ソフトを使う利点は、様式を毎回思い出さなくていいことと、取引先ごとに設定を間違えないことで、法律上できないことが減るわけではありません。要件そのものは記事末尾の公式ページで確認してください。
影響が大きいのは、メールやPDFで送った請求書の控えの扱いです。紙に印刷して保管する前提が崩れるので、電子のまま残す場合の保存ルールを自分で決めることになります。エクセル運用を続けるなら、最低限これだけは紙に書いて壁に貼っておく内容があります。
- 控えを置くフォルダの場所と、ファイル名の付け方
- 日付・取引先・金額で探せるようにする方法
- 訂正したときに、前の版をどう残すか
- 送付したメールやシステムの記録をどこに残すか
ソフトはこれを初めから形にしてくれるというだけの話です。自分でルールを決めて守れるなら、ソフトがなくても成立します。守れないまま走ると、税務調査のときではなく、取引先と金額の認識がずれたときに困ります。
入れないほうがいい会社はどこか
すでに会計ソフトを使っていて、そこに請求書の発行機能が付いている場合は、まずそれを触ってください。別のソフトを入れると、売上の数字が二か所にできます。片方で直してもう片方を直し忘れる事故は、必ず起きます。会計側の請求機能が物足りないと感じるのは、定期請求の自動作成や送付履歴が要るようになってからで、その段階が来るまでは一本化が優先です。
取引先の指定フォーマットに手書きで記入する仕事が中心の会社も、入れても手作業が残ります。先方のポータルに入力する形なら、ソフトで作った請求書は社内控えにしかなりません。こういう取引が大半なら、ソフト代は時間の削減につながらない。先に、指定様式の取引先と自社様式の取引先を数えて、どちらが多いかを見てください。
コストは何と比べるか
比べる相手は、月額と、月末に消えている自分の時間です。加えて、封筒と切手と印刷の実費、郵送をやめられる取引先の数も勘定に入ります。紙で送り続ける先が残るなら、その分の作業は減りません。料金体系はソフトによって考え方が違い、利用人数で決まるものと、発行枚数や機能で段階が変わるものがあります。最新の料金は各社の公式ページで確認してください。
5人以下の会社は、たいてい一番下のプランで足ります。注意するのは、下のプランでは入金消込や会計連携が使えない設計になっている場合があることです。消込の手間を減らすために入れたのに、その機能が上のプランだった、という順序違いが起きます。何を減らしたくて入れるのかを先に一文で書いてから、プランを見てください。
入れると決めた月に、先に決めること
切り替えで揉めるのは、過去分と番号です。過去の請求書をソフトに入れ直す必要はありませんが、番号を続きにするか、切り替え時点から振り直すかは最初に決めてください。走りながら決めると、同じ番号が二つできます。取引先への送付方法も、紙からメールに変える先には一度断りを入れてから切り替えます。黙って変えると、先方の経理で処理が止まることがあります。
切り替える月は、決算期末や繁忙期を避けてください。請求の様式が変わった月は、必ず問い合わせが増えます。問い合わせに答える余裕がある月を選ぶ。それだけで、定着するかどうかが変わります。最初の一か月は旧方式の控えも残しておき、двух重になっても構わないと割り切ったほうが安全です。
一次ソース(公式ページ)
制度・料金は改定されます。本記事は執筆時点の情報です。最新情報は必ず上記の公式ページでご確認ください。
よくある質問
会計ソフトに請求書の発行機能が付いています。別に請求書ソフトを入れる意味はありますか。
二重に作る状態がいちばん事故を生むので、どちらか一方に寄せるのが前提です。会計側で足りるかは、定期請求の自動作成と送付記録が必要かどうかで分かれます。会計ソフト側の機能は改定で増えることがあるため、乗り換えを検討する前に今契約しているソフトの請求機能を一度触って確かめてください。
取引先が自社指定の請求書フォーマットを送ってきます。ソフトを入れても対応できますか。
先方指定の様式やWeb入力はソフトの外に残ることが多く、その分の手作業は消えません。入れる前に、指定様式の取引先が全体のどのくらいを占めるかを数えてください。少数なら、その取引先だけ従来どおりにして、残りをソフトに寄せる運用で問題ありません。
請求書番号は途中から付け方を変えてもいいですか。
重複さえ出なければ、途中で体系を変えること自体は妨げられません。ただし古い番号と新しい番号が混ざる期間ができるので、どの時点から切り替えたかをメモに残してください。年の変わり目や決算の締めに合わせて切り替えると、後から探すときに境目が分かりやすくなります。